
【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が公開作のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、俳優の斎藤工が「齊藤工」名義でメガホンを取った長編映画『blank13』(2月3日より先行公開)です。長編監督デビュー作で、高橋一生さんを主演に迎え、監督自身も出演しています。
これまでショートムービーや、ドキュメンタリー作品を発表してきた齊藤監督。満を持しての長編監督デビュー作は、実話を基にした父と子の物語です。タイトルは父子が離れ離れだったブランク期間13年を意味しています。
上海国際映画祭で最優秀監督賞を受賞するなど、世界の映画祭で6冠! という快挙。それも納得の素晴らしい作品なのです。
【物語】
13年前に家を出て行った父の松田雅人(リリー・フランキー)が余命3ケ月で見つかり、その後、訃報が入ります。喪主は長男のヨシユキ(斎藤工)。次男のコウジ(高橋一生)とコウジの彼女、サオリ(松岡茉優)も参列しましたが、母の洋子(神野三鈴)は欠席です。
家族にとって、一緒に暮らしていた頃の雅人は困った父でした。博打に明け暮れ、借金を繰り返し、アパートにやってきた借金の取り立て屋の怒鳴り声は幼い子供たちには恐怖でしかなく、母は朝から晩までいくつもの仕事をこなして常に疲れていました。
でもお葬式の参列者の言葉から、ヨシユキとコウジは父の別の顔を知る事になるのです。
【家族に見せないもうひとつの顔】
映画の前半は借金を繰り返すいい加減な父と、振り回される妻と2人の子供たちという、困窮する家庭の状況が綴られます。長男のヨシユキも母も、当時は辛い思い出しかありません。
しかし、次男のコウジだけは違いました。余命わずかな父と対面し、子供の頃にキャッチボールした思い出が甦ります。その一方、学校でほめられた作文を雀荘にいる父に見せに行ったとき、後回しにされた苦い思い出も胸に突き刺さるのです。
ところが後半、父のお葬式にやってきた数少ない参列者から、父のもうひとつの顔が明らかになります。参列者は父に助けられて感謝している、いい人だった、やさしかったと語り、人助けのための借金があったこともわかります。
家でダラダラしていても、仕事に行ったら別人のようにシャキッとしていること、ありますよね。犯罪のニュースで近所の人が「あんな真面目でいい人が」というのも、また同じことです。人は幾通りもの顔を持っているということを、この映画を見て改めて思いました。
【男の家族映画】
この父親みたいな人は世の中に多いかもしれません。失踪こそしなくても、他人にやさしくて家族には甘えっぱなし。特に男性にそういう人が多いような気がするのは偏見でしょうか。私は現実的な女なので、すごくイジワル目線でそう思いました。きっと妻の洋子は、そういう人であったことを見ぬいていたと思います。
本作は、男の家族映画と言う印象が強いです。なぜならこの家族の女性は、耐える妻・洋子ひとり。そして弟コウジの恋人・サオリも忍耐力ありそうで、どこか洋子に似ています。洋子はひどい夫を怒鳴りつけたりしませんし、誰も父のもうひとつの顔に対して突っ込んだりしません。
私は、もしここに、洋子とは正反対の性格の娘がいたら面白いだろうなと思ったりもしました。めちゃくちゃかき回すでしょうから。
【映画監督・齊藤工の今後が楽しみ!】
この映画はそんな風に、家族について、また人間がいくつもの顔を持つことについて、いろいろ考えさせられましたし、何より面白かったです。齊藤工監督、今作が長編映画の初監督で、このクオリティは凄い。前半と後半で父親・松田雅人の印象が微妙に変化する構成も面白いし、コウジの少年時代の回想シーンの挿入も絶妙だし、映画の後半はほとんど役者のアドリブというのが面白かった。
なかでも、参列者の一人を演じた佐藤二朗さんが隠れMCみたいになって、場を回していたのがおかしかったです。高橋一生ファンは『嘘を愛する女』に続いて彼をスクリーンで見られて幸福でしょう。前作とはまったく違う表情で、本作の高橋一生さんは少年のようです。
でも実力あるキャストじゃないと、齊藤監督の映画には出演できませんね。役に入ってアドリブ力を発揮するのは、相当な演技力を要するんじゃないでしょうか。
俳優としての出演作も多く、忙しいとは思いますが、ぜひまた齊藤工監督として映画を作ってほしい。齊藤監督の映画がもっと見たくなる、そう思わせる力が本作には宿っているのです。
執筆=斎藤 香 (c)Pouch
『blank13』
(2月3日よりシネマート新宿で先行公開、2月24日より全国ロードショー)
監督:齊藤工
出演:高橋一生、松岡茉優、斎藤工、神野三鈴、大西利空、佐藤二朗、リリー・フランキーほか
(C)2017「blank13」製作委員会
▼制作現場の様子!みんなキラキラしています
▼映画『blank13』本予告
▼映画『blank13』ショート予告編




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