【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのはディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』(2018年11月30日公開)です。童話「くるみ割り人形」の映画化作品で、ヒロインの冒険譚を美麗な映像とチャイコフスキーの名曲の数々でお贈りします!

若干ツッコミどころはありますが、クリスマスシーズンにピッタリの映画です。では物語からいってみましょう。

【物語】

クララ(マッケンジー・フォイ)は母を亡くして傷心の日々。そんな中、クララは家族と共に、名付け親でもあるドロッセルマイヤー(モーガン・フリーマン)さん宅のクリスマスパーティへ。

しかし、クララはドロッセルマイヤーさんからのプレゼントをきっかけに、「花の国」、「お菓子の国」、「雪の国」、そして謎多き「第4の国」という、4つの不思議な世界へと入り込んでいきます。クララはそこで出会ったくるみ割り人形にそっくりなフィリップ(ジェイデン・フォーラ=ナイト)から、母が作り上げた第4の世界「秘密の王国」はかつては「遊びの国」だったこと、そしてその王国が消滅の危機にあることを知るのです。

【ヴィジュアルはお見事】

本作は、おとぎ話の映画化として “魅せる” ことに徹底しており、隙のないヴィジュアルで圧倒します。

すみずみまで凝りに凝った美術と映像は素晴らしく、まるで飛び出す絵本のよう! クララが迷い込む世界の住人はみんな人形と人間のハーフのような風貌で、特に「お菓子の国」を統治するシュガー・プラムを演じるキーラ・ナイトレイは、もはや誰だかわからないくらいの変身ぶり! 声も変えて演技しており、まさに怪演です! 女性キャラのドレスも素敵で「少女時代、こんなキラキラドレスに憧れたなあ」と昔を思い出して遠い目になったりしましたよ。

【どこかで見たようなデジャブ感?】

というように、映像美は大いに堪能できるのですが、ストーリーはヴィジュアルに頼り過ぎたかなあという印象もありました。

キラキラした「秘密の王国」の中でも唯一のダークサイド「第4の国」。母が作り上げたこの国を「消滅させない!」とクララは頑張るのですが、「秘密の王国」に入り込むくだりから、冒険、闘いなど「この流れ、どこかで見たぞ」というデジャブ感が……。ちょっと『アリス・イン・ワンダーランド』に似ているんですよね。

あちらはティム・バートン監督が、彼らしい世界で作り上げていましたが、本作の監督はラッセ・ハルストレム。レオナルド・ディカプリオが名演を見せる『ギルバート・グレイプ』や、名犬ハチ公の映画『HACHI 約束の犬』の監督です。

ハルストレム監督作なら、無理してコテコテのヴィジュアル重視の世界にしなくても、傷心のクララの気持ちに寄り添った心にしみる、かわいらしいおとぎ話でもよかったのに~と、個人的には思いました。ひょっとしたら、ハルストレム監督の挑戦作! なのかもしれませんが……。

【リアルすぎて要注意なシーンあり!】

ちなみに本作には要注意シーンがあります。私が「ギャー!」と叫びそうになったのは、ネズミの大群! 最新のCG技術のおかげで、本当に毛並みまでリアルなネズミの大群がドワ~っと登場するシーンがありまして、私は背筋がゾワゾワしました。

この映画の中で、ネズミは鍵になる動物なんですけど……。「ネズミ、かわいいじゃん」という女子にとってはなんてことないかもしれませんが、私のように苦手な女子は要注意です。そんなに長いシーンではなく、一瞬ですが、その一瞬がまだ目に焼き付いて離れません……。

なんだかんだと書きましたが、本作はディズニーの実写化映画『シンデレラ』『マレフィセント』『美女と野獣』の流れをくんでおり、クリスマスシーズンを彩る映画としては最適。複雑なストーリーではないので、冬休み、甥っ子姪っ子ちゃんを連れて見に行ってもいいかも。女子同士、デートでもOK。キラキラな世界を見たい人はぜひ!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

『くるみ割り人形と秘密の王国』
(11月30日(金)全国公開)
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:キーラ・ナイトレイ、マッケンジー・フォイ、エウヘニオ・デルベス、マシュー・マクファディン、リチャード・E・グラント、ジェイデン・フォーラ=ナイト、ミスティ・コープランド、セルゲイ・ポルーニン、ヘレン・ミレン、モーガン・フリーマン
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