【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップする映画は『僕のワンダフル・ジャーニー』(2019年9月13日公開)です。本作は2016年の大ヒット作『僕のワンダフル・ライフ』の続編

前作ではイーサン少年の愛犬ベイリーが生まれ変わって、大人になったイーサンに会いに行くという物語で、犬好き大号泣の映画でした。続編の主人公は愛犬ベイリーと、イーサンの孫娘。良いですよ~!というわけで、では物語からいってみましょう。

【物語】

前作から数年後、イーサン(デニス・クエイド)のもとで幸せに暮らしていた犬のベイリー。イーサンの孫のCJ(アビー・ライダー・フォートソン/キャスリン・プレスコット)とも仲良しになります。でもCJのパパは事故で亡くなり、悲しみのあまりママのグロリア(ベティ・ギルピン)はふさぎ込み、イーサン夫婦とも諍いが絶えず、ついにCJを連れて出て行ってしまいます。同時にベイリーの犬生も終わりが訪れるのですが、そのときイーサンは愛犬にこう言うのです。「生まれ変わってCJを守ってくれ」。そしてベイリーはCJの為に生まれ変わるのですが……。

【前作の魂を受け継ぐ『僕のワンダフル・ジャーニー』】

犬好きが夢見るファンタジーの世界がしっかり受け継がれた続編にうれしくなりました! 生まれ変わった犬と出会うという不思議な展開も、この映画を観ていると「こういうことあるよね」と信じたくなるんですよ。それは前作でのイーサンとベイリーの感動的な再会のインパクトが強く、飼い主と犬はこうやって心が繋がっているんだと思えるから。本作は、前作『僕のワンダフル・ライフ』を観ていなくても十分楽しめますが、前作を観てからだと、よりいっそう感動が深まります。

【『僕のワンダフル・ライフ』との感動ポイントの違い】

前作では様々な人たちとの出会いと別れを経た上でベイリーはイーサンと再会します。離れ離れの間に、ベイリーは警察犬になったり、引っ込み思案の女の子の恋の応援をしたり、人と犬との心温まるエピソードが挿入されており、愛犬がいかに癒しの存在かよくわかる作品になっていました。

しかし本作は、CJを幸福にすることがメインで、それ以外のエピソードがちょっと薄い……。そこが弱点ではありますが、犬が物語をけん引していくというのは前作同様。CJが11歳のときに、ベイリーはモリーという犬に生まれ変わり、母親の育児放棄からCJを救います。その後、死を経験しますが、CJが18歳のときにマックスという名の犬になって彼女と再会。

CJの笑顔と幸福のために奮闘し、なんと彼女を初恋の男性トレント(SUPER JUNIOR-Mのヘンリー・ラウ)と再会させるのです! ワンコがヒロインの人生に多くの気づきを与え、好転させていくという展開は、ときどき強引だなあと思ったりしましたが、犬が可愛いからすべて許せちゃう! ワンコ様様な映画なんです。

【『HACHI約束の犬』を思い出すベイリーの忠誠心】

前作も本作も犬の在り方としては、リチャード・ギア主演作『HACHI 約束の犬』(2009年公開)と似ていると個人的には感じました。『HACHI』は、日本のハチ公物語をベースに、亡くなった飼い主を待ち続ける犬の話でしたが、本作は、犬自身が亡くなっても飼い主の元に戻ろうとする物語。その忠誠心は同じではなかと。前作は『HACHI約束の犬』のラッセ・ハルストレムが監督しているので、その影響があるのかもしれません。本作でハルストレム氏は製作総指揮ですが、ゲイル・マンキューソ監督にも、この映画の核というべき「ベイリーとイーサンの絆」はちゃんと伝わっていると感じました。

本作は犬好きはもちろん、特別犬好きというわけではない人でも感動させるパワーがあります。人と人との関係が希薄になっている現代だからこそ、飼い主に絶対的な信頼と愛を注ぐ犬の愛情に胸が熱くなる! 何度も生まれ変わって、ご主人様に託された自分の使命を果たそうとする、けなげなベイリーをスクリーンで応援してあげてください。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

僕のワンダフル・ジャーニー
(2019年9月13日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ゲイル・マンキューソ
出演:デニス・クエイド、キャスリン・プレスコット、マージ・ヘルゲンバーガー、ベティ・ギルピン、ヘンリー・ラウ、アビー・ライダー・フォートソン、イアン・チェン
声の出演:ジョシュ・ギャッド