結婚したら夫婦は一緒に住むもの。ごくごく自然にそう考えている人も多いかと思いますが、じゃあもし夫は「新宿」に住みたい、妻は都会から離れた「離島」で暮らしてみたいと思っていたなら、皆さんだったらどうする……?

話し合いの結果「せっかくだからそれぞれ好きな場所で生活してみよう!」と1年間の“期間限定”別居生活を始めた夫婦。ふたりの暮らしぶりを妻であるイラストレーターのちゃずさんがインスタグラムに漫画でつづり、それが書籍化されたものが『夫とちょっと離れて島暮らし』(ワニブックス / 税込み1200円)です。

円満別居なんてありうるの? 1300キロ離れた夫婦のコミュニケーション手段は? 離島での生活ってほんとに癒しに満ちてるの? 編集部に届いた本書をもとに、今回はちゃずさん夫婦の別居婚の内情を見てみたいと思います!

【めっちゃポジティブな「別居婚」】

結婚4年目になる仲良し夫婦、ちゃずさんと夫のけんちゃん。アパートの更新のタイミングを機に、妻のちゃずさんは以前から憧れていた鹿児島県奄美諸島にある加計呂麻島(かけろまじま)に、夫であるフリー映像作家のけんちゃんは仕事に便利な新宿に引っ越すところから話はスタートします。


かなりポジティブな事情での「別居婚」ですが、ふたりにとっては別居してみてよかったことがいろいろとあったよう。

【離れてわかる、互いの愛情】

別居婚をしてみて感じたメリットに、ちゃずさんは「自分のやりたい事に集中できる」「新鮮な気持ちで会える」、けんちゃんは「帰りの連絡をしなくてよくなった」「大きな音でテレビを楽しめる」「冷房つけ放題」をあげています。


毎日ひとつ屋根の下で暮らしていると、どうしても相手に気を遣ったりお互い意見が合わなかったりで窮屈な気分になることってありますよね。いくら仲良し夫婦、仲良しカップルでも「たまにはしばらく一人きりになりたい!」と思うことはあるはず。そして、それが続くと一緒にいることのありがたみが薄れてきてしまう……

そう考えると、自分の好きなペースで暮らせる、ふだん会えないからこそ会ったときに新鮮というのは別居婚の大きなメリットといえそう。逆に「会いたいときに会えない」というデメリットがありますが、スマホのビデオ通話やSNSなどで毎日連絡を取り合うことで、うまくコミュニケーションをとっているようです。

【離島でのスローライフ】

目の前に広がる海、虫や鳥の声、満点の天の川といった自然にくわえ、親切な島の人々との交流など、加計呂麻島でのゆったりした暮らしを楽しんでいるちゃずさん。


もちろん、ナゾの虫が大量発生したり、住んでいる家のボットン便所がたいへんなことになったり、台風で停電したり……なんてときもすべてひとりで対処しなくてはなりませんが、それでもちゃずさんにとっては島での生活が肌に合っている様子。

人それぞれ、合う環境・合わない環境はあって当然。自分にフィットする環境で暮らせるというのも、これまた別居婚のメリットでしょう。

【「こうでなきゃいけない」からの解放】

本書を読んで、「ちゃずさん自身の考え方に変化があったこと」も離れて暮らしてみてよかったのではないかと私は感じました。

東京に住んでいたころ、周囲の人から「4年たっているのに子どもはまだできないの?」「早い方がよいわよ!」と言われることが増え、妻として、女性として、なんとなく毎日焦っていたというちゃずさん。でも、別居してそれぞれの生活を始めてみると「将来はこんなことがしたいね!」「子どもができたらさぁ~」と自然と話せるようになったのだとか。

本人たちの意思での別居婚をしてみて、「こうでなきゃいけない」という縛りからきっと自由になれたのかもしれません。ちゃずさんにとって加計呂麻島の生活は、文字通り心身ともに開放されるものだったんじゃないかと感じました。

【結婚の形は人それぞれ】

中には別居婚について否定的な人もいるかもしれません。でも、結婚の形は人それぞれ。ふたりの関係性であれ、子どもの有無であれ、ライフスタイルであれ、周りとちがったとしても本人同士が幸せであればそれでいいはず。

そんなことにさりげなく気づかされる『夫とちょっと離れて島暮らし』。ちゃずさんの漫画のタッチや、けんちゃんとの仲良しぶり、加計呂麻島の自然の豊かさにほっこりしつつ、「こんな結婚のカタチもあっていいよねぇ」って自然と肩の力がふっと抜ける一冊になっています。

ちなみにちゃずさんの離島ライフは2019年3月までの予定らしく、まだまだ継続中! インスタでは引き続きその様子を日々つづっていますので、本書に興味を持った方はぜひちゃずさんのインスタもチェックしてみてくださいね。

参考:イラストレーターちゃずの 夫とちょっと離れて島暮らしInstagram @chaz_comic
執筆=鷺ノ宮やよい (c)Pouch