人生は十人十色。だけど、全人類に共通していることがたったひとつだけあります。それは「人はいつか必ず死ぬ」ということ……。

Pouchでは毎月1のつく、1日、11日、21日を「ぼっちの日」と名付け、Pouch編集部員が体を張ってぼっちの可能性を広げるべく、様々なことにチャレンジしています。

どんなにウェイウェイ生きていたとしても、死ぬときはぼっち。……というわけで、今回はひとりで「入棺体験」をしてきました。ソロウェディングのあとにひとり葬式って、もはや人生2周目に突入感ありますけど……。

【棺に入り「死」を体験する】

「入棺体験」とは自分の人生の幕引きを“棺に入る”という体験を通じて考えるイベントです。私が今回参加したものは、実際のお葬式さながらに棺に入り弔事を読んでもらい、お経をあげてもらえるという本格的なもの。

数年前に親類が立て続けに亡くなったり、私自身も35歳になって迷ったり、なんだか生きる意味を考えることが多いので、イベントに参加することに。

今回訪れたのは、東京・江東区にあるブルーオーシャンカフェというお店。ここは「終活カフェ」と銘打って、海洋散骨や、遺言作成など、さまざまな“人生の終わり”にまつわるイベントを行っています。

意外なことに(?)内装はハワイアンで明るい雰囲気。なんとなくホッとしました。

【お坊さんもいる本格的なもの】

「入棺体験」の参加者は10名ほどで、老若男女さまざま。スタッフとして、いろいろな宗派のお坊さんが3名、そして進行役の女性が1名いらっしゃいました。

まず最初に、名札に今日呼ばれたい名前を書いて、スタッフから今日のイベントに関する説明と注意事項を受けます。参加者の話は他言無用、言いたくないことは言わなくてもいいなど、プライバシーにも配慮されていてちょっと安心しました。

そのあとは、輪になって簡単な自己紹介。お坊さんが冗談を言ったりして、これから棺に入るとは思えないほど和やかなムードです。

【アイデンティティを揺さぶられる質問】

「入棺体験」は2部構成。第1部が、自分を見つめるワークショップ。そして第2部が入棺体験となっています。第1部のワークショップは、まず2人1組になって、ある同じ質問に2分間、ひたすら答え続けるというものから始まりました。

その質問は、とてもシンプルなものでしたが「自分」ってなんだろうと深く考えさせられるようなものでした。

最初は、表面的なことばかり答えていたのですが、後半になると「私は迷っています」といった今の心情が出てくるのが不思議でした。

ただ、初対面の人が相手ということもあり、緊張していて2分間だとあっという間。これを15分くらいやり続けると深層心理っぽいことが出てくるのだとか……。

【自分への弔事で思わず涙が…】

そして次のワークは、誰が読んでくれるかまで想定して「自分の弔事を書く」というもの。弔事は故人の功績や人柄を讃えるようなものが多いので、これは書くのが少し気恥ずかしい……。

と、思っていたらスタッフの方が、例として自分が書いたものを読みあげてくれたので参考になりました。

パートナーが自分に向けて書いてくれる……という想定で弔事を書いていたら、思い出やもっとあのときこうすればよかったという感情があふれきて、なぜか泣きそうに。他の席からも、鼻をすするような音が聞こえたので、私以外にも泣いている人がいたのかもしれません……。

書き終わったあとに、スタッフの方が「弔事を書いた意味」について説明してくれました。

それ聞いて、改めて読み返してみると、私は何度も「楽しい人生」「一緒にいて楽しかった」といった「楽しい」というフレーズ、そして仕事に関することばかり書いてることに気づきました。どうやらここに、私の生きるヒントが隠れているようです。あらためて、自分の毎日を振り返ることに……。

【いよいよ入棺、胸に去来するのは?】

第1部が終わり、いよいよ入棺体験。さっきまでラフな格好だったお坊さんたちが、いつの間にか袈裟に着替えています。入棺体験ではお坊さんが約3分お経を読んでくれるほか、希望者は先ほど自分が書いた弔事も読んでもらえます。

なお宗教上の理由でお経がNGの人は、有線で賛美歌などを流してもらえるとのこと。

意外なことに(?)半分くらいの人が、弔事&お経を希望していました。私ももちろん、弔事をお願いします。

自分の順番になって、ドキドキしながら棺の中に横たわります。

棺の蓋もしっかり閉められました。

棺の中は、目を開けても真っ暗闇で怖いくらい。死後の世界ってこんな感じかな……と思いながら、スタッフの方が読んでくれる弔事と、お経に耳を傾けます。

棺の中に入ってお経を聞いたら心のさざなみは鎮まるのだろう……と思っていたのですが、雑念が頭をめぐります。死の実感はまだなく、心臓のドキドキがなかなかとまりません。

いろんなことをグルグルと考えるうちに、気づいたら3分が過ぎ、棺のふたが開けられました。光が眩しい……。

最後に再び輪になって、それぞれ今日の感想を発表して終わり。イベントは終始和やかなムードで、お坊さんが「死ぬなら次の日のこと考えなくていいので、最後の晩餐はこってりラーメン食べたいです」と冗談を言ってたのが印象的でした。

【入棺体験の感想】

入棺のあとは、泣いている人もいれば、笑顔で出てくる人もいて、反応はさまざまでした。入棺体験を通して「人生観が変わった」「死が怖くなくなった」といった人もいるようです。

僧侶の方いわく「感じ方は人それぞれ、死生観も人それぞれです。私達のほうから、入棺体験を通して、具体的に何を感じてくださいということはありません。あるがままを感じてください」とのこと。

その言葉に従うとしたら、私は入棺体験を通して「きっと死ぬまで、永遠に悩み続けるのだろうな」と思ったのでした。

今回、イベントで体験する死を通して、自分の今後の生を強く意識しました。ただ、私の場合は棺を出て、たとえば迷いが無くなるとか、生まれ変わったような気持ちになるとかではありませんでした。

迷いながらであっても、いつかやってくる死の瞬間まで、私が弔事に書いたように「楽しく」生きる努力をしたい……そんな風に思いました。

入棺体験、私のように「自分の人生を一度見つめ直したい」と思っている方にはおすすめです。

ぼっち度 ★★★★★★★
人生考え直す度 ★★★★★★★★★★★★★★
レア度 ★★★★★★★★★★★★

取材協力=ブルーオーシャンカフェ
執筆=御花畑マリコ (c)Pouch

▼棺がレインボーカラーになっているのは、ブルーオーシャンカフェがLGBTQ支援を行っているためとのこと。以前はハワイアン柄の布だったそうですよ

▼ほかにも様々な終活イベントをやっています