【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは連載開始から50周年を迎えたドラえもんの新作『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(2020年8月7日公開)です。今回は木村拓哉さんが声優として「ドラえもん」シリーズに初参戦しています! 評判も良い本作を劇場で鑑賞してきました。めちゃくちゃ癒されましたよ。ではいってみましょう!

【物語】

恐竜博の化石発掘体験で、のび太はひとつの化石を手に入れます。「きっと恐竜の化石だ!」とドラえもんの秘密道具“タイムふろしき”で化石を元の状態に戻すと、双子の恐竜が生まれました。さっそくミューとキューと名付けて、のび太は可愛がりますが、成長していくと家で育てられなくなり、6600万年前の白亜紀に戻すことに。

のび太、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんは、キューとミューを連れてタイムマシーンで過去へ。のび太たちは、キューとミューの仲間を見つけることができるのでしょうか~。

【のび太の中で父性が目覚める!?】

のび太がポンコツくんなのは知っていましたが、久々に観たら、あいかわらずサボり癖があったり、すぐ諦めたり、ワガママでドラえもんに頼りっぱなし。でも今回はのび太の中の父性が芽生えて、恐竜のキューとミューをとても可愛がるんです。「けっこう世話好きなんだな」とのび太の魅力を再発見しました。

キューとミューは羽のある新種の恐竜で、双子ですが、ミューはすくすく成長してすぐに飛べるようになるものの、キューはなかなか飛べないんです。何度練習しても速攻で落下し、凹みまくるキュー。そんなキューにのび太は「飛び方がダメだ」「諦めるな」と厳しく接します。のび太も鉄棒の逆上がりができず「別にできなくても困らないしー」とすぐ諦めていたのに、まさかのスパルタぶりにビックリ。

キューとのび太は似たもの同志。でものび太自身もキューと自分を重ね合わせ、キューを通して自分を俯瞰で見ているんです。ダメな自分を客観視するのはしんどい。だからこそキューに厳しいのかもしれません。

でもこの「キューが飛べない」というエピソードが後半、劇的に生きてくるんですよ。めちゃくちゃ感動的なので、ぜひ注目してください!

【木村拓哉様は謎キャラのジルとして降臨】

さて「木村さんはいつ出てくるのかしら」とワクワクしながら観ていますと、のび太たちが白亜紀でミューとキューの仲間探しをする中盤に登場します。

ジルと呼ばれるサル男。サルなんだけど、声が木村さんなのでかっこよく見えるというマジック! 木村さんは、声の出演オファーが来たとき「どっきり企画かと思ったほど驚いた」と公式サイトのインタビューで語っていますが、ジル役にはドンピシャのキャスティングだったと思います。

でも実はいちばん驚いたのはジルの上司・ナタリーの声を演じた渡辺直美さん。木村さんが声の出演をすること以外の情報を入れずに観たので、ナタリーの声が渡辺さんだったとは知らず、てっきり声優さんが演じていると思っていました。直美さん、良かったです!

【実は壮大なストーリー】

のび太たちがミューとキューを彼らが生きるべき場所へ戻すだけの物語かと思ったら、実はのび太が歴史を変えようとするという壮大な仕掛けがある本作。恐竜たちは隕石が落ちて滅亡するはずなのに、のび太は絶対にミューやキューたち恐竜を助けたいとドラえもんの反対を押し切ろうとするのです。

実はここから、のび太がドラえもんのひみつ道具を使ってキューたちを育てる前半の伏線が凄く生きてきて「おお、そうきたか!」という展開に! まさに誰もが楽しめるエンタテインメント作品に仕上がっています!

ちなみに劇場はソーシャルディスタンスを守った席配置により安心して観られます。本作は5ケ月公開が延期になったのですが、本作の公開を待っていた子供たちが多く劇場に足を運んでいました。

上映中、子供たちの笑い声や「わー」という驚きの声や、泣き声(恐竜が怖かったのかも)が聞こえて、映画を鑑賞しながらなんだかホッコリ。

映画の内容も劇場の雰囲気も良く、結果とても癒されました! 木村拓哉ファンだけでなく、みんなに観てほしい。大人にもオススメですよ!

映画ドラえもん のび太の新恐竜
(2020年8月7日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
原作:藤子・F・不二雄
監督:今井一暁
声の出演:水田わさび(ドラえもん)大原めぐみ(のび太)かかずゆみ(しずか)木村昴(ジャイアン)関智一(スネ夫)木村拓哉(ジル)渡辺直美(ナタリー)