【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、ドラえもん50周年記念の話題作『STAND BY ME ドラえもん 2』(2020年11月20日公開)です。

前作『STAND BY ME ドラえもん』から6年。フル3DCGによる立体的で美しい映像と感動的なストーリーを再び~というわけで、公開初日に観てきました。

さあ、ドラ泣きで涙ボロボロになったでしょうか~。では物語から。

【物語】

のび太が部屋で見つけた古いくまのぬいぐるみ。それは大好きなおばあちゃんとの思い出のくまでした。「おばあちゃんに会いたい!」と強く思ったのび太は、ドラえもんの反対を押し切って、タイムマシンへ過去へ。

やさしい微笑みをたたえて、のび太を迎えてくれたおばあちゃん。しかし、おばあちゃんの「アンタのお嫁さんを見たいわ」という言葉を聞いたのび太は、その願いをかなえたいと未来へ。そこは大人になったのび太としずかちゃんの結婚式会場でしたが、式の直前にのび太が失踪してしまうのです!

【あいかわらずワガママなのび太】

前作で描かれた「のび太の結婚式前夜」の続きと原作漫画で人気の高い「おばあちゃんのおもいで」をミックスさせて、新たなストーリーも加えた本作。正直にいいますと、楽しく拝見しましたが、ドラ泣きしませんでした~。

3DCGの本シリーズ、『映画 ドラえもん』シリーズ、共にのび太は見栄っ張りでわがまま男子です。

でもそのダメさ克服のための冒険だったりするので、のび太のキャラが物語をおもしろくしているのは、みなさんご存じの通り。根はいい子ですから、憎めないんですよね。

本作でも「過去に戻って生前のおばあちゃんに会いたい」とか「おばあちゃんにしずかちゃんを見せたいから未来の自分の結婚式へ行く」とか、ドラえもんを全力で振り回します。そういうところは、いつもののび太です。

でも今回は、誰かを助けるためとか正義感や優しさからの行為ではなく、「自分が会いたいから」「お嫁さんを見せたいから」という、少々身勝手では?という展開なんです。だからちょっとイライラしちゃって。「僕ではしずかちゃんを幸せにできない」と、結婚式から逃げるという大胆なんだか小心者なんだかわけわからない行動にまで出るんですよ!

【脇役が主役のび太のダメさをカバーしている!】

というわけで、本作ののび太のキャラは少々苦手だったのですが、脇役は個性的で魅力的。今回はジャイアンやスネ夫がいいこと言ってくれますし、しずかちゃんも自分に自信が持てなくてウジウジしているのび太に対して、やさしい微笑みをたたえて素敵な言葉で励ましてくれます。

どんな言葉かはスクリーンで見ていただきたいのですが、「のび太はいい友達と彼女とドラえもんがいていいなあ」としみじみ……。

【映像は超綺麗!主題歌は菅田将暉!】

本作は、前作同様に監督は八木竜一氏、共同監督&脚本は山崎貴氏がつとめています。最先端の映像技術を駆使した映像は色鮮やかで、とても綺麗。のび太の結婚式は「どんだけ先の時代の結婚式?」と思ってしまうほどSF映画な世界なので驚きでしたが……。

おばあちゃんが出てくる日向ぼっこのような温かさ&懐かしさと、未来感あふれる世界がミックスしているのが「ドラえもん」シリーズの魅力ですが『STAND BY ME ドラえもん 2』は、それがよりヴィジュアルで鮮明に表現されていたと思います。

そしてみなさん、主題歌は菅田将暉さんの「虹」です。いまや俳優だけでなく歌手としてもヒット曲を連発している菅田さんが歌声で「ドラえもん」に参加しているのも話題。映画の内容にピタリとハマってるいい曲なので、菅田さんの歌声にもひたりましょう!

STAND BY ME ドラえもん 2
(2020年11月20日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
原作:藤子・F・不二雄
監督:八木竜一
脚本・共同監督:山崎 貴
出演:水田わさび、大原めぐみ、かかず ゆみ、木村 昴、関 智一、宮本信子、妻夫木聡
(C)Fujiko Pro/2020 STAND BY ME Doraemon 2 Film Partners