【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回は世界中で大ヒットした映画『マトリックス』シリーズの最新作マトリックス レザレクションズ』(2021年12月17日公開)

第1作目の『マトリックス』(1999)は今まで見たことのない高度なCG映像が話題になりました。

さて、2003年の第3作『マトリックス レボリューションズ』から18年後の第4作目はどんな世界が展開するのか。公開初日にさっそく劇場で鑑賞してきました。

【物語】

自分が生きている現実に違和感を覚えているゲームデザイナーのトーマス(キアヌ・リーブス)。ある日、彼は行きつけのカフェでティファニー(キャリー=アン・モス)と出会います。かつてネオとトリニティとして人類を救うために闘った同志ですが、ふたりともその記憶はゼロ。でもお互い「どこかで会った」と気になります。

その後、彼の前に若いモーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世)が現れます。それをきっかけに、トーマスは再びネオになり、マトリックスという仮想現実から現実の世界へと引き戻されていくのです。

【ネオとトリニティの再会にワクワクしたけれど】

『マトリックス レザレクションズ』のストーリー冒頭は、第1作目の『マトリックス』と似ています。

第1作目のトーマスも現実社会に違和感を覚えています。なぜなら、彼の生きる現実は非現実で、彼も含めた人間は仮想世界に生きているという設定だからです。

第1作目ではトリニティの導きで、トーマスは現実の世界に戻され、モーフィアスに戦闘能力を叩き込まれ、コンピューターに支配された世界で人類を救う救世主ネオとなります。

しかし本作のトリニティは、夫と息子たちと幸せに暮らす主婦ティファニーとして仮想現実の世界で生きています。しかし、実は現実世界においてトリニティは囚われの身なのです!

そんなネオとトリニティの再会は、かなりワクワクしました。

再び黒のレザースーツを身にまとったクールな2人の活躍が、革新的な映像とともに観られると思ったからです。

【第1作目へのオマージュ?】

が、しかし、これまでの『マトリックス』をより進化させた、すごい映像世界は観られませんでした……。

たしかにアクションシーンは壮絶ですが、第1作目で目を見張った「こんなすごい映像観たことない!」というほどの新しい映像には出会えなかったからです。

期待していただけに、ちょっと残念。もっと新しい世界に踏み込んでほしかったなあ。

過去作の映像が挿入されたりしているシーンも多く、『マトリックス』という作品をとても大切にしていることは伝わってきましたから、本作はオマージュ的な作品なのかなと思ったりしました。

【意外と強いラブストーリー感】

本作を観て何より驚いたのは、ネオとトリニティのラブストーリーかもしれません。

これまでのシリーズでは、2人の愛情物語をそんなに強烈に感じたことはないのですが、本作は、ネオのトリニティ愛が強かった。

トリニティの気持ちを優先し「もしかしたら、非現実の世界で主婦している方が、彼女は幸せなのではないか」と、無理やり仮想現実から引き離そうとせず、彼女の選択に委ねるというネオのやさしさ!

お互いに思いあっているのは伝わってくるものの、くっつきそうでくっつかないじれったさ! もはやラブストーリーじゃないですか。

ちなみに、これまでの『マトリックス』はラナとリリーのウォシャウスキー姉妹(当時は兄弟)が監督を務めていましたが、本作はラナ・ウォシャウスキーがひとりで演出を担当しています。

仲たがいしたわけではなく、リリーの個人的な事情のようです。

まだ続きそうな気配を感じる展開だったので、次回作があるのなら、再び2人で監督してほしい。時間がかかってもいいから、世界が驚いた映像世界を進化させて、また驚かせてほしいものです。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

マトリックス レザレクションズ
(2021年12月17日公開)
監督:ラナー・ウォシャウスキー
出演:キアヌ・リーブス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット・スミス、ニール・パトリック・ハリス、ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世、クリスティーナ・リッチほか
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