【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、King&Princeの永瀬廉主演映画『真夜中乙女戦争』(2022年1月21日公開)です。作家Fの同名小説の映画化。無気力な大学生が東京破壊計画に巻き込まれていく青春のダークサイドを描いた作品です。試写で拝見しましたが、こういう苦い青春映画に、キラキラ輝くアイドルの永瀬廉さんが挑戦しているというのが新鮮でした! では物語からいってみましょう。
【物語】
大学生の僕(永瀬廉)は、友達も恋人もいなくて孤独な日を送っていました。そんな彼は、たまたま入ったサークルで、美しい先輩(池田エライザ)と出会います。歓迎パーティでつまならそうにしている彼にやさしく声をかけてくれる先輩。2人は距離を縮めていきます。
同時期、彼は校内で謎めいた黒服(柄本佑)の男に出会います。僕の悩みや苦しみを言い当てていく不思議な魅力に満ちた男。彼は、東京破壊計画を企て、その計画に多くの人が集まってきます。僕の退屈な日常は、その計画をきっかけに目まぐるしく変化していくのです。
【主人公の心に隙間に入ってくる悪魔的な男と美しい先輩】
前半は主人公・僕のモノローグが多く、心の声を中心に展開していくのですが、ひねくれていて理屈っぽいんです。だいぶネガティブな空気をまとった主人公だなあと。
そんな主人公の満たされない心の隙間に入ってくるのが、謎の男とサークルの先輩。謎の男はカリスマ性はありますが悪魔的。先輩は、そんな彼に引き込まれていく主人公を現実に引き戻す存在に思えました。
【空っぽ男子のいまどき感に喝!を入れる悪魔!?】
正直、流されて生きている主人公は空っぽ男子。だから悪魔的な謎の男に振り回され、東京を破壊しようぜという狂った計画に巻き込まれていくんですね。謎の男は「社会のシステム通りに生きてる奴らが許せない」と言い、そんな社会をぶち壊すのが目的です。
謎の男が、「大学を卒業したらとりあえず就職して~」という、みんながやっている “右へならえ的な生き方に疑問を提示する” のはいいなと。
謎の男は、「何も考えず、周りに流される人生を送るな!」と、主人公だけじゃなく世の中に喝を入れているように感じました。破壊的行為はどうかと思いますが、ちょっと面白いキャラクター。また演じる柄本佑さんが役柄にピッタリで、存在感が抜群。彼が演じたからこそ、説得力が出たと思います。
【アイドルと並行して役者道を突き進む永瀬廉】
主役の永瀬さんも良かったです。僕というキャラは主体性がなく、常に受け身だけど心の中は常に激しく揺れ動き葛藤している難役ですが、永瀬さんは大健闘しています。
この映画を観て、
ジャニーズアイドルといえば、20代の若いうちはアイドルらしいキラキラな青春ものに出演するのがお約束なイメージがありましたが、もうそんな考えは古いのかも。
永瀬さんは、アイドルとしてキラキラの笑顔を振りまきながらも、俳優としてはさまざまなジャンルの作品でいろんな表情を見せていく。それがたとえ超悪役であってもいい!くらいの覚悟を感じました。彼のファンは幸せでしょう。今後の俳優活動も楽しみです。
【アンニュイな池田エライザが素敵】
ちなみに先輩を演じる池田エライザさんは、謎の男とはポリシーが異なり、対立するような立ち位置。でも、正義感を振り回すようなことはなく、アンニュイな魅力で、主人公にとってはときめきと癒やしをくれる存在。池田さんは雰囲気作りが上手な女優。先輩役がバチっと決まっていました。
僕と同世代の人は共感するところがあるだろうし、永瀬廉ファンは、俳優・永瀬廉の新たな一面にドキドキ! キンプリファンはもちろんですが、ちょっと刺激的な青春映画を観たいなと思っている人にもオススメです。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
『真夜中乙女戦争』
(2022年1月21日より、TOHOシネマズほか全国ロードショー)
監督&脚本:二宮健
原作:F「真夜中⼄⼥戦争」(KADOKAWA 刊)
出演:永瀬 廉 (King & Prince)、池⽥エライザ、柄本 佑ほか
(C)2022『真夜中乙女戦争』製作委員会
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