【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは二宮和也主演映画『ラーゲリより愛を込めて』(2022年12月9日公開)です! 舞台は終戦後、シベリアに抑留された日本人捕虜の生き様を描いた作品です。試写で鑑賞しましたが、キャスト全員が一致団結して素晴らしいお芝居を見せていいましたよ! では物語からいってみましょう。
【物語】
第二次世界大戦後、約60万人の日本人がシベリアに抑留されました。山本幡男(二宮和也さん)もその中のひとり。彼は身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリ(収容所)に連れて行かれてしまいます。
妻のモジミ(北川景子さん)と4人の子どもたちとの再会を信じて劣悪な環境を乗り越えようとする山本。理不尽な扱いに絶望する仲間たちに、
「ダモイ(帰国)の日は必ずやってきます」
と励まし続けましたが、その彼の身に異変が起こるのです……。
【希望を捨てなかった山本を熱演したニノ】
本作は、終戦後の物語のため銃撃戦や空中戦の描写はありませんが、戦争の恐ろしさをしっかり描いた作品です。戦争が終わっているのに、身に覚えのない罪で家族と引き裂かれシベリアに強制的に抑留されてしまうわけですから。
極寒の地で強制労働させられている中、山本幡男の存在は希望です。こういう極限状態では、微笑みながら励ましてくれたり、歌を歌ったり、笑顔になれることを提供してくれたりする山本のような人は絶対に必要だと思うんです。
目を見て「ダモイ(帰国)の日は必ず来ます」と言ってくれる山本にラーゲリにいた人たちはどれだけ助けられたでしょうか。
そんな山本役にお芝居の緩急の付け方が上手い二宮さんはピッタリでした。またどんなにボロボロになっても品を失わないところも魅力。そこには山本さんに対する尊敬があったからではないかと思いました。
【北川景子の強さと中島健人の愛らしさ!】
この映画は、「ラーゲリでの過酷な日々」と「山本とモジミの夫婦愛」の2本柱を軸に構成されています。
モミジは夫の帰りを待ち続けるとても強い女性で、決してクヨクヨしません。本当は不安で心細くて辛かったと思いますが、子どもたちの前では笑顔を貫くモジミ。その芯の強さが北川さんに投影されていたように感じました。
そして中島健人さん! 山本は言葉や振る舞いでみんなを励ましていましたが、新谷は笑顔でみんなを癒す存在。
新谷になり切っているのでSexyZoneのケンティは完全封印していましたが、厳しく過酷なシーンが続く中、中島さんの笑顔に見ているこちらも癒されっぱなし。とってもスイートでしたし、役者・中島健人の魅力を存分に発揮していました。
【松坂桃李、安田顕、桐谷健太など人気俳優が出演】
本作の凄さは、助演として松坂桃李さん、安田顕さん、桐谷健太さんという主演クラスの俳優が出演していること。なんて豪華なんでしょう!
松坂桃李さん演じる松田研三は、戦場で起こったことにより心の傷を負った男。
収容所ではほかの人たちと距離を置いていますが、山本の行動に心を動かされていくという難しい役どころ。徐々に変わっていくという静かな変化を自身のポジションで的確に演じていてさすがです。桃李さん、なんでもできるんですね!
「これが実話とは!」と、驚き、悲しみ、怒りなどさまざまな感情がブワッと湧いてくる映画『ラーゲリより愛を込めて』。
私たちが家族と過ごす何気ない時間、友人と他愛ない話で笑い合える時間など、普通の日々がいかにかけがえのない大切な時間かがよくわかる映画でもあります。
今こそ見るべき映画だと思うので、感染対策をバッチリしてぜひ劇場で観てください。
執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:(C)2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (C)1989 清水香子
■紹介した作品
『ラーゲリより愛を込めて』
(2022年12月9日より、全国ロードショー)
監督:瀬々敬久
原作:辺見じゅん 『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(文春文庫刊)
出演: 二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕ほか
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