【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、二宮和也主演映画『アナログ』(2023年10月6日公開)です。

ビートたけしさんの同名原作の映画化作品で、携帯電話を持たないヒロイン(波瑠さん)と彼女に想いを寄せる主人公(二宮和也さん)のとっても清らかなラブストーリーです。試写で見せていただきましたが、本当に心が洗われましたよ。もう最高!

まずは、物語から。

【物語】

デザイナーの水島悟(二宮和也さん)は、自分が内装をデザインしたカフェ “ピアノ” で美春みゆきという女性と出会います。話が弾み「また会いたい」と思った悟は彼女と携帯アドレスの交換をしようとしますが、みゆきは携帯を持っていませんでした。

「木曜日にまたここに来ます。会いたいと思えば会えますよ」とみゆき。

ふたりは毎週木曜に “ピアノ” で会話を重ね、距離を縮めていきますが、ある日からみゆきが “ピアノ” に現れなくなってしまうのです。

【控えめな主人公を演じるニノが良い!】

悟は仕事はできるけど人が良すぎて損な役回りを引き受けてしまうような男。それでいて、怒ってストレス吐き出すタイプでもないから「仕方がないか」と思って終わりにするんです。

そんなとき、みゆきに出会ったわけですよ。「木曜日はみゆきさんに会える日」になった途端、悟の毎日は色づいていく。恋心が日常の小さな我慢を吹き飛ばしてくれるようになったんです。

悟が嬉しそうで、イキイキしていく感じをニノが演じるのですが、それがまた上手! 悪友のふたり(桐谷健太さん、浜野謙太さん)にからかわれて、ちょっと照れくさそうな様子とか「ニノ、可愛い〜!」とスクリーンに向かって叫びたくなりました。

本当に「恋っていいなあ」とつくづく思う映画でしたよ。

【上品で美しいヒロイン・波瑠】

相手役の波瑠さんも良かった〜。今どき携帯を持っていなくても、波瑠さんが映画の中でちゃんとみゆきとして生きていたから、「この人ならわかる」と思えるんです。

また、悟との出会いを受け止めながらも、最初は一定の距離を置いてお付き合いする感じなど、“ちゃんとした女性” というのが伝わってくる。

すごく丁寧にみゆきを演じていて、その丁寧さがみゆきという女性の個性と相まって魅力を放っていました。

【みゆきが姿を消した理由】

ある日を境に、みゆきは“ピアノ”に現れなくなり、彼女にプロポーズしようとしていた悟は落胆してしまう……。

みゆきが消えた理由がこの映画の後半のハイライト。詳しくは映画館で観ていただきたいのですが、彼女のこれまでの人生を紐解いていくエピソードと、みゆきが悟と出会ってからの幸福。そして、その後に起こる出来事が描かれています。

みゆきが歩んできた人生と現在のみゆきは衝撃的過ぎて胸が震えました。

でも悟は一途で筋が通った男、だからこそ彼が下した決断にも泣けて泣けて……。後半、悟のみゆきへの思いは、確実に恋から愛へと変わったんだなあと思いました。

本当に素敵なラブストーリーなので、ぜひぜひ観ていただきたい。ニノのこんな直球なラブストーリーなんて珍しいから貴重!

大きなスクリーンで悟とみゆきの清らかな愛に泣いてください!

執筆:斎藤 香(c)Pouch

アナログ
(2023年10月6日全国公開)
監督:タカハタ秀太
原作:ビートたけし『アナログ』(集英社文庫)
脚本:港岳彦
出演:二宮和也 波瑠
桐谷健太 浜野謙太 / 藤原丈一郎(なにわ男子)
坂井真紀 筒井真理子 宮川大輔 佐津川愛美
鈴木浩介 板谷由夏 高橋惠子 / リリー・フランキー
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