年末の話題作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年12月8日公開)の完全吹替版で、主人公のウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメさん)の声をDa-iCEの花村想太さんが、ウィリーの相棒・ヌードル(ケイラ・レーンさん)の声をセントチヒロ・チッチさんが担当しました。なんとこのふたり、日本語吹替版の声優初挑戦なんだそう!

Pouchはそんな花村さんとチッチさんにお話を聞くチャンスをいただきました! 吹替キャストがセリフに加えて劇中曲の歌唱も担当する完全吹替版の裏話をインタビューしてきましたよ!

【映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』とは?】

ティム・バートン監督作『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップが演じたことで有名なチョコレート職人のウィリー・ウォンカ。彼の若き頃を描いたのが本作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』です。

WONKA

母と「世界一のチョコレート店を作る」と約束したウィリー(ティモシー・シャラメさん)。彼がライバルのチョコレート店オーナーや意地悪な宿屋の女主人の妨害に会いながらも、相棒になった少女ヌードル(ケイラ・レーンさん)と一緒に夢を叶えるために頑張る物語です。

ミュージカル要素もあるので、花村さんもチッチさんもセリフだけではなく、歌も披露。これが素晴らしいんですよ!

とはいえ、初めての完全吹替版の挑戦、大変なこともあったと思います。

さっそく吹替版の裏話などについて聞いてみました。

【花村さん&チッチさん、ボイステストに大はりきり!】

ーー『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のお仕事は、オファーの際にボイステストがあったそうですね。ボイステストに臨む気持ちは?

・花村想太さん(以下、花村)
「話題作の完全吹替版ですから、ボイステストを受けさせてもらえるだけでも光栄。とにかく精一杯やろうと思いました」

・セントチヒロ・チッチさん(以下、チッチ)
「憧れていた声優のお仕事で、こんな話題作に関われるなんて、とても幸せなこと。“この仕事、絶対に勝ち取るぞ!” という気持ちで、やる気をみなぎらせてテストを受けました」

ーーどんな準備をしていったのですか?

・花村
「まずティム・バートン監督版の『チャーリーとチョコレート工場』を観て、その世界観を感じ、ティモシー・シャラメさんの出演作をいくつか観て、彼の声を自分の中に取り込んでいきました」

・チッチ
「私の場合、ヌードルはまだティーンの少女。私自身とは年齢が離れているので、どれだけ自分が少女でいられるかを中心に考えていました。いただいたテスト用の映像やヌードルを演じたケイラ・レーンさんの声を観たり聞いたりして、ヌードルと自分を重ね合わせていく時間を作っていました」

ーーウィリー・ウォンカとヌードルのキャラクターはどう考えて演じましたか?

・花村
「ティム・バートン監督版のウィリー・ウォンカとは違い、ティモシーさんはウィリーを純真無垢な青年として演じていたと思います。すごくピュアなんですよ。でも、ジョニー・デップさんが演じたウォンカのイメージが強いので “若い頃のウォンカは違うんだよ” というのをちゃんと見せたいと思いました」

・チッチ
「ヌードルは母親と離れ離れにされて、宿屋のミセス・スクラビットさんにこき使われながら育った女の子なんです。夢見ることも禁じられ、人生を諦めているので、ちょっと大人びているんですね。だから年下だけどしっかりしていて、ピュアなウィリーを引っ張っていくんです。そんな女の子なので、純粋さとしっかりした強さを同時に表現しないといけないなと思いました」

【アフレコ現場の裏話は驚きがいっぱい】

ーーアフレコのときは、ほかの声優さんの声を聞きながらできたのですか?

・花村
「僕のアフレコのときは、すでにチッチさんが演じるヌードルとウンパルンパを演じる松平健さんの声も聞きながらできたので、本当にラッキーでした。でもチッチさんは、ほぼ原音(オリジナルの俳優の声)でアフレコしていたから大変だったんじゃないですか?」

 

・チッチ
「私はアフレコのスケジュールが早い方だったので、ウィリーと一緒のシーンはティモシー・シャラメさんの声を聞きながら声をあてていました。やはり日本語と英語では言葉の尺が違うので、合わせるのは大変でした〜。

唯一、ミセス・スクラビットを演じた松本梨香さんのアフレコは私より前に録っていたらしく、スクラビットさんを怖がるシーンは松本さんの声に導いていただきながら、本気で “怖い!” と思いながらできました」

ーー1番難しかったのは?

・花村
「演技だけでなく、歌うシーンも多かったので、ウィリーの動作に合わせて声を出すのが難しかったです。例えば、歌いながら何かに飛び乗った瞬間に出る声とか、歌いながら帽子を叩くときに出る声とか、動作をしながら “ウッ!” とか “ハッ!” とか声を出さないといけないんですよ。けど、映画と同じ動きをすると動作の音が入ってしまうので、動かずに歌いながら声を出すのが難しかったです」

・チッチ
「私は自分にないものを声として引き出さないといけないのが大変でした。ヌードルは “ヤッホー!” とか “キャー!” とか叫ぶシーンもあるんです。私は普段、ローテンションなタイプなので(笑)、抑揚のある声を出すために必死でやりました」

【大満足の花村さんと不安の塊のチッチさん】

ーー完成した完全吹替版をご覧になった感想は?

・花村

「実際に観るまでめちゃくちゃ不安で “どうなっているんだろう” と考えていたのですが、実際に観たら、もう自分の手から離れた作品になっていました。ウィリーの声は自分なんですけど、自分のことを忘れて客観的に観ることができました。

これまでやってきた自分の仕事では味わえなかった感動がありました。自分が出演した舞台の本番をみんなで観ることはできないけれど、この映画で初めて自分が声を担当した作品をお客さんと同じ環境で観ることができてうれしかったです。スタッフさんにも感謝です。胸を張って “めちゃくちゃ宣伝したい!” という気持ちになれました」

・チッチ
「字幕版を観たとき、オリジナルのキャストの皆さんが役にハマっていて感動したんですが、花村さんは“自分は大丈夫かな。心配だな” とおっしゃっていたんです。でも完成した完全吹替版を観たら “花村さん、何か心配なの?” って言うほど素晴らしくて。花村さんの声はティモシーさんにピッタリハマっていました!

でも自分のことは大丈夫かな…と不安な気持ちで観ていました。

私は全然、自分が声をあてたヌードルを客観的に観られなくて。収録前にヌードルの声をいっぱい聴いて臨んだけど、映画を観たらやっぱり自分の声だと。“これでいいのだろうか…” とずっと思っちゃって」


・花村
「でもチッチさん、ヌードルそのものでしたよ」

・チッチ
「本当ですか?」

・花村
「ウィリーが宿屋の契約書にサインをしようとするシーンで、ヌードルが『小さい字も読んで』と言うじゃないですか。チッチさんが演じる声を聞いたとき “あ、ヌードルだ!” とすぐ思いましたから。チッチさんは、すごくお芝居がナチュラル。作った感じがしなくて、自然体で素敵だなと思いました」

 

・チッチ
「ありがとうございます! ナチュラルを目指していたけど、結果、自分の声のままでやり過ぎたかなと思ってしまって。正解って自分ではわからないものですね。だから早く皆さんの感想を聞きたいです!」

【声優の仕事に貪欲になった!】

ーー完全吹替版を経験して、もっといろんな役の声を演じたいという欲は出ましたか?どんな役をやりたいですか?

・花村
「欲が出ました! すごくやりたいです。ポール・キング監督が続編もできたら〜という話をされていたので、そしたらまたウィリー・ウォンカの声をやらせていただきたいです。あとティモシー・シャラメさんの別作品の日本語吹替版の声ができたらうれしいですね」

・チッチ
「私は小さい頃から声優に憧れていたので、いろんな人の声になってみたいです。今回は自然体で演じさせていただいたので、まったく自然体じゃないホラー映画とか、怖い役とかやってみたい。自分とは正反対のキャラクターで声のお芝居をしてみたいです」

ーー日本語吹替版のお仕事で得たもの、学びになったことはありますか?

・花村
「表現力が磨かれた感じがします。他人が演じた役をトレースしながら自分なりの表現をエッセンスとして加えていくことが初めてだったので、自分のお芝居の幅が広がったと思います」

・チッチ
「私はBiSHというグループで活動をしていたので、メンバー以外の人とひとつの作品を作り上げる経験があまりなかったんです。でも今回、先輩方と一緒にお仕事させていただき、自分の知らない自分の良さを教えていただいたり、まだ見ぬ自分に出会えたことは大きな経験でした。

私は自分に自信が持てないタイプなんですが、この作品に関わって「胸を張っていきたいな」と思える瞬間がたくさんあったので、この作品は私の財産です!」

■プロフィール

・花村想太
1990年8月10日生まれ。兵庫県出身。
Da-iCEのメンバー。ボーカル&パフォーマー。4オクターブの高音ボイスの持ち主で、楽曲制作も行うアーティスト。ミュージカル経験も多数あり、2022年の主演舞台「JERSEY BOYS」のパフォーマンスで第77回文化庁芸術祭賞・演劇部門新人賞を受賞した。

・セントチヒロ・チッチ
5月8日生まれ。“楽器を持たないパンクバンド”BiSHの元メンバー。BiSHとして2015年にデビュー。ライブを中心に活動し、2023年6月に解散した。現在、ソロプロジェクト「CENT」や「加藤千尋」名義で俳優デビューし、マルチに活動をしている。

■『ウォンカとチョコレート工場のはじまり

2023年12月8日より全国ロードショー
監督・脚本:ポール・キング
出演:ティモシー・シャラメ、ヒュー・グラント、オリヴィア・コールマン、サリー・ホーキンス、ローワン・アトキンソン
配給:ワーナー・ブラザース映画

取材・執筆:斎藤香 (c) Pouch
Photo:© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved