広島といえば、おそらく真っ先に牡蠣を思い浮かべる人が多いと思います。でも実は、広島産のブランド牛「比婆牛(ひばぎゅう)」もめっっちゃくちゃ美味しいんですよ。

先日、広島にあるレストラン「イタリア料理 イプシロン」で比婆牛を使ったお料理をいただいてきたので、“幻の和牛”と呼ばれる理由やその美味しさの秘密、最高すぎたお料理についてご紹介します。

あの、先に書いてしまうと、「広島でおいしいものが食べたい」と言われたら “イプシロンを予約して比婆牛のメニューを食べてください” と答えたいくらい、ほんっとうに美味しいお肉&素敵なレストランでした!

【“幻の和牛”と呼ばれる理由】

ご紹介する比婆牛の産地は広島県北東部の庄原市。日本最古の和牛ルーツのひとつ「岩倉蔓(いわくらつる)」は庄原市が発祥、その血統を受け継いでいます。

ただ頭数が少ないため、あまり産地以外に出回らないのが “幻” たる所以。広島市の中心部でさえ取り扱っている飲食店はあまり多くない、希少な和牛なんです。

【旨味があるのにクドくない!】

そんな比婆牛を味わえるお店のひとつが、広島市中区十日市町のレストラン「イプシロン」。市街地からは少し離れていて、原爆ドームから徒歩1015分ほどのところにあります。

前菜としていただいたのは、比婆牛のパイ包み。比婆牛のランプ肉でほうれん草を包んだものが、さらに薄いパイで包まれています。パイのサクサクとした口当たりがお肉のホロッとしたやわらかさを引き立てていて、食感が楽しい。さらに添えられた金柑が、お肉のジューシーさをさわやかにしてくれます。

ランプ肉って歯ごたえのあるイメージがあったのですが、比婆牛は適度な噛みごたえは残しつつ口の中でほどけていくような、軽やかな美味しさでした。

メインにいただいたのは、比婆牛のイチボとリブロース。口の中でしっかり牛肉としての主張はしつつも、噛むとするすると溶けていくような絶妙な焼き加減。


添えられているのはレバー、サラミ、アンチョビをあわせたペヴェラーダという北イタリアの伝統的なソース。お肉にお肉のソース!?と驚きましたが、これがまた牛肉の風味を底上げしてくれるんです。

下処理にはローズマリーが使われているとのことで、後味にはさわやかな風味が。美味しいお肉はただ焼くだけでももちろん美味しいと思いますが、隅々まで考え抜かれた調理にただただ脱帽でした……。

お料理としての素晴らしさもさることながら、和牛の芳醇な旨味があるのにしつこくないのが比婆牛の味わい。サシの多く入った牛肉は、旨味が濃厚でとろけやすい代わりにやや脂っこさを感じることもありますが、そういった重さがないのです。

資料を見てみたところ、比婆牛の脂にはオリーブオイルなどと同じ「オレイン酸」が多く含まれているのだそう。さらに、かつては製鉄のための木材運搬を担っていたため赤身も発達しており、この赤身と脂のバランスが比婆牛のすっきりさと旨味が際立つ秘密なんですって。

【もはや郷土料理レベルのパスタ】

ちなみにこの日、イプシロンでは比婆牛2品のほかに広島産牡蠣のカルボナーラもいただいたのですが、これまた本当に美味しかった。

大ぶりの牡蠣がゴロッと2つも入っていて、「来てよかった広島!!!!」となりましたよ。東京でも広島産の牡蠣を食べる機会はありますが、ここまで大きなサイズで調理されているものはなかなかお目にかかれません。

さらに自家製のパスタ「タリアテッレ」には広島の特産である広島菜が練り込まれているそう。広島菜は白菜の一種で、漬け菜としては食べたことがありますが、こうしたお料理にアレンジされいるのははじめて見ました。ひと皿の中に広島の名産が調和していて、これはもう郷土料理と呼んでよいのでは???

チーズと牡蠣の濃厚な旨味が溶け込んだクリームソースをまとうパスタに、トッピングのカリカリベーコンが凝縮された旨味と塩気、そして食感のアクセントになって、素晴らしいお味でした。

【「イプシロン」で味わう比婆牛をぜひ】

この日はいろいろと食べたかったので、サラダ、比婆牛の前菜とメイン、パスタをそれぞれ2人でシェアしたのですが、取り分けるスタイルではなく、それぞれきちんと盛り付けてくださいました。お値段は2人で1万2000円ほど。

新幹線の時間が迫っておりデザートは泣く泣くお断りしたのですが、お会計のあいだに簡単なものですが、と「ミリアッチョドルチェ」という焼き菓子のサービスまで! お料理の美味しさはもちろんシェフの心遣いに感激しっぱなし。

最後は食事の合間に出た自家製のプチフォカッチャもおみやげにいただいて、こんな幸せな食事体験があっていいのかとクラクラするほど。

広島産の素材の良さを極限まで引き出す考え抜かれた料理、居心地の良い隠れ家のようなロケーション、おしゃべりは控えめでも最大限の気遣いが温かいシェフと、間違いなく広島屈指の名店に出会ったと感じさせてくれた「イプシロン」でした。

ですので、「広島でおいしいものが食べたい」と思ったら、ぜひともイプシロンを予約して比婆牛のメニューを食べてください! 期待を裏切らない和牛の美味しさと妥協のないイタリア料理を心ゆくまで堪能できるはずです。

なお、希少価値が高いゆえお店のメニュー表には比婆牛を使った料理の記載はないのでご注意を。予約時に比婆牛料理をご注文をいただければ提供可能とのことなので、事前に伝えるのを忘れずにご予約ください〜!

■訪れたお店

イタリア料理 イプシロン
ランチ 12:00~15:00(ラストオーダー13:00、要事前予約)
ディナー 18:00~23:00(ラストオーダー21:00)
住所:〒730-0805 広島県広島市中区十日市町2-9-25 1F
TEL:082-231-8007
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)、不定休あり
※お店の予約時に「比婆牛料理」とご注文いただければ、ご提供可能です

参考リンク:広島県公式ホームページ | 比婆牛とは?
執筆・撮影:森本マリ
Photo:(c)Pouch