[公開直前☆最新シネマ批評]
毎週金曜日は、映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。本日は明日公開の『人生万歳!』です。

ここ数年、ヨーロッパを舞台に映画を創り続けていたウディ・アレン監督。だが、記念すべき40作目を飾る新作『人生万歳!』は、久々にホームグランドのニューヨークへ帰ってきました! おかえり~! ニューヨークから離れた極東の地・日本に住んでいるくせに、アレン好きとしてはなぜかお迎え気分。おかしなものです。

今回の主役は、中年の男ボリス(ラリー・デヴッド)。元ノーベル賞候補の物理学者だが、今はただのヘンクツ親父で、「世間とはかかわらずに生きていくのが希望だ」という自称「嫌な奴」。この男が純粋無垢な若い女性メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)との出会いをきっかけに、メロディの両親など、彼が嫌っていた世間と関わるようになり人間関係が広がっていく。

ヘンクツ親父が、若い娘の行動にブーブー文句を言いつつ、巻き込まれていく様は面白い。メロディを「ニューヨークでいちばんバカ」と言いながらも、最後は彼女に愛の本質をついたセリフを語るんだから、巧いな~、絶妙の脚本! 

そういえば『マンハッタン』(79)でも主人公には若い娘の恋人が。これって、アレンが自身の女性の好みを再露出した映画なのかも。若い女は好きさ、でも分相応っていうのもあるだろう……みたいな。

願望と現実をコミカルな味付けで魅せていく。そういう映画なら、やっぱりニューヨークじゃないと語れないってわけですね。自身の恋愛観をアレン監督はこの映画で再確認したのかもしれません。(映画ライター/ 斎藤香)

『人生万歳!』
12月11日恵比寿ガーデンシネマ他にて全国順次ロードショー

監督:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、ヘンリー・カヴィル、エド・ベグリー・Jr.
(c)2009 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

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【斎藤香のプロフィール】
映画誌の編集者を経て、フリーのエディター&ライターに。
好きな映画はシニカルなコメディとミステリー系。好きな監督はウディ・アレン。
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