先日、「タクシーはその国の文化を凝縮した価値観の宝庫である」ということをお伝えしました。今回は、フィリピンのタクシー車内で繰り広げられた驚きの会話をご紹介したいと思います。

仕事の帰りが遅くなってしまった平日の夜のことでした。フィリピンのオフィスから自宅まで1kmほどの距離を歩くのが苦痛だったため、タクシーに乗って帰ることに。フィリピンのタクシーの初乗り料金は40ペソ(約80円)という、日本人にとって驚くほど安い金額です。タクシーを捕まえ車内に乗り込むと同時に、運転手が話しかけてきました。

「あんたニホンジンぽ? 結婚してるんぽ?」

別にあなたに関係ないでしょ、と思いながらも、

「日本人です。ええ、独身です」

この返答に、

「彼氏いるぽ? いるよな、なあ、ぽぽーん(ああーん)?」と、運転手さんがしつこく聞いてきます。

「はい」

と答えたのが間違い、ものすごい勢いでの質問攻めの始まりです。

「相手はフィリピン人ぽ?」

「彼氏とベッドに入ったら、何をするんだぽ? 何もおこらないなんてこと、人間としてありえないぽ」

「彼氏はビッグぽ?」 「やっぱりビッグがええぽ?」

記者、絶句……。

ここまで赤裸々に赤の他人に聞かれたことは、20数年生きてきて初めての経験だったため、非常に驚いてしまいました。記者の驚きをよそに、運転手はまだしつこく尋ねてきます。今度は、日本人女性について。

「日本人女性はおしとやかにしているが、夜の営みはすごいぽ。あぁ、セクシーぽーん。ありえないぐらい、ワイルドぽ」

日本人女性として、ドライバーの勘違いさ加減に黙っていられなくなった記者は、

「あんた、アダルトビデオの見すぎなんじゃないの!? 一般的な日本人女性が同じだと思ったら大間違いだわさ!」

と、説明している自分に呆れながらも解説。すると運転手は、

「やっぱ、セックスは愛と情熱だぽ~う」

と、悦に入ってしまいました。

人の話を聞け~っ!!  と言いたくなりましたが、運転手に黙ってもらっていた方がよかったのでもう何も話しませんでした。

タクシーを降りる間際に、「日本人女性はやっぱりいいぽ~。君、ボクの彼女になるぽ? あ、そうか。彼氏いるんだぽ。じゃ、日本人の女友達を紹介しぽ」

と言って携帯番号を渡され、ようやく帰途についたのでした。

日本では経験できない衝撃体験……。そして、ものすごいカルチャーショックを受けた夜でした。

(写真・文=横山ローズ)