[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回のピックアップはなんとアニメーション作品『くまのプーさん』(9月3日公開)です。何度かディズニーで映画化されている「プーさん」シリーズですが、今回は新しい『くまのプーさん』。ウォルト・ディズニー生誕110周年を記念して作られた35年ぶりの新作なのです!

この映画の指揮を取ったのはディズニーピクサーの最高責任者であるジョン・ラセターですが、バックで大いに力をふるったのはウォルト・ディズニー本人と仕事をしてきた、当時から50年以上もディズニーで働いている生きる伝説アニメーターのバーニー・マティソンです。

18歳でメールボーイとしてディズニーに雇われて以来、ディズニー一筋の彼は76歳。これまで製作された映画『くまのプーさん』にかかわってきた人物でもあるのです。「クラシックなディズニーの魅力や精神をあれほど体現している人はいません」とスティーブ・アンダーソン監督も絶大な信頼を寄せていたのだそう。

もともと原作者のA.Aミルンが、息子クリストファー・ロビンを登場させて作り上げたこの物語。スタッフは映画化にあたり、実在したクリストファー・ロビンの寝室の写真を入手し、オープニングのセットを作る参考にしました。そしてこのオープニングに登場するプーさんのぬいぐるみに注目! これはかつて、映画用にマティソンの奥さんが製作したもの。結局、当時使用されなかったプーさんが、何十年もの年月を経て、本作でやっとスクリーンデビューを飾ったのです。

3D映画の公開が相次ぐなか、この手描きアニメーションの『くまのプーさん』を見た人は、みな心癒されたようで、全米でも絶賛レビューが続々!

「この映画にあるちょっとした魔法に感謝。ただただ愛しい映画である」(ローリング・ストーン)、「派手でもなく、3Dでもなく、豪華スターが声の出演をしているわけでもない。でもこの心地よい映画は若者たちを楽しませる力を持っている」(ニューヨーク・タイムズ)、「この映画は全編がレモネードのようなピュアな輝きに満ちている」(ニューヨーク・ポスト)など、いつもは辛口の媒体も手離しの褒めようです。ディズニーもミルンも、お喜びでしょう。

「100エーカーの森の仲間たちのキャラクターの良い点は、誰もがヒトコトで言いあらわせること。ピグレットは怯え、オウルは自我、ラビットは抑制、プーさんは純心、イーヨーは悲観。これは人間の核にあるものです。だから見る人は楽しみながらも自分自身を見出すことができるのです」とアンダーソン監督。なるほど。だからスーっと、プーさんの世界に入っていけるのですね。

夏休み期間に汐留で開催された「くまのプーさん」展は大盛況。初日は開場前から100人が行列し、日を追うごとに入場者は増えて3日で4500人を突破しました。関連商品も続々発売され、秋はプーさんブーム到来の予感がします。映画では相変わらず「ハチミツが欲しいな~」と、はちみつを探しに出かけて、別なことに巻き込まれていくプーさん。その姿、天然ぶりに癒されてくださいね!

(映画ライター=斎藤香

『くまのプーさん』

9月3日公開
監督:スティーブン・アンダーソン、ドン・ホール
声の出演:ジョン・グリース、ジム・カミングス、バド・ラッキー、クレイグ・ファーガソン、ジャック・ポールター、トラヴィス・オーツ、クリステン・アンダーソン=ロペス、
ワイアット・ホール、トム・ケニー、ヒューエル・ハウザー
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