[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、4月28日公開の『テルマエ・ロマエ』です。ヤマザキマリの人気漫画を実写映画化した本作。映画化が決定したとき「主人公は古代ローマ人なのにキャスティングはどうするのだろう」と誰もが思いましたが、「主人公は阿部寛!」と発表されると、ローマ人を日本人が演じるにもかかわらず「ああ、阿部さんね」と、納得! ほか、北村一輝、市村正親、宍戸開と、古代ローマ人には日本の濃い顔俳優たちがズラリと揃いました。
舞台は古代ローマ。阿部寛扮する浴場設計技師ルシウスが浴場からタイムスリップし、日本の銭湯へ飛んでしまい、銭湯の工夫を凝らした作りやアイテムに衝撃を受けます。その後、何度も古代ローマと日本を行き来して、日本のお風呂文化をローマに持ち込むという物語。
ルシウスが生真面目で風呂桶ひとつにいちいち大げさに驚くのがおかしく、阿部氏は原作のルシウスそのままの印象です。平たい顔族(日本人)のヒロインが上戸彩嬢で、彼女だけ映画版のオリジナルキャラになっています。
日本の温泉の撮影はなんとなく想像できますが、さて「古代ローマをどうやって再現するの?」と思っていたら、なんとイタリアロケを敢行したのです。こちらには世界最大級の映画撮影所チネチッタがあり、ラッキーなことに、米HBOと英BBCが共同制作したドラマ『ROME』で使用した大迫力のローマセットが残っていたのです。それも総製作費200億円のドラマに使われた超豪華なセット。これを使わない手はないでしょう!
試写を見た原作者のヤマザキマリさんはご自身のブログで
「チネチッタのセットの凄さはわかっていたけれど、何より驚いたのは美術スタッフが日本で再現したローマ世界の完成度の高さ!」
「やっぱり日本人は徹底的な職人気質の一筋縄じゃいかない器用民族なのだな~」
と綴っています。
その器用民族によって作られた銭湯や温泉が、古代ローマ人にカルチャーショックを与えたのが本作なのですから、この物語はやっぱり日本人気質の核心をばっちりついているのでしょう。
イタリアでのワールドプレミアも大盛況。ローマの浴場と日本のお風呂を行き来するルシウスにローマっ子も大爆笑だったそうです。
また原作の漫画が話題になっているのは日本だけではありません。イタリア版、フランス版もリリースされているのです。この漫画の影響で、イタリアやフランスから温泉宿や銭湯に観光客が大勢来るようになったらおもしろいですね。ルシウスみたいな生真面目なイタリア人観光客が、銭湯でフルーツ牛乳を飲み「むむっ、これはっ!」と驚いている姿を見られる日が来るかも?
まずは実写『テルマエ・ロマエ』で、ほとんど半裸で出ずっぱり! という阿部氏の古代ローマ人っぷりをとくとご覧くださいませ。
(映画ライター=斎藤 香)
『テルマエ・ロマエ』
4月28日公開
原作:ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」
(エンターブレイン刊/「月刊コミックビーム」連載)
監督: 武内英樹
出演: 阿部 寛、上戸 彩、北村一輝、竹内 力、宍戸 開、笹野高史、市村正親、キムラ緑子、勝矢、外波山文明、飯沼 慧、岩手太郎、木下貴夫、神戸 浩、内田春菊、松尾 諭、森下能幸、蛭子能収
(C)2012「テルマエ・ロマエ」製作委員会
参照元: ヤマザキマリ・シカゴで漫画描きhttp://moretsu.exblog.jp/
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