【映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します】

今回ご紹介するのは、80年代ロックが満載のブロードウェイミュージカルの映画化『ロック・オブ・エイジズ』。製作時からトム・クルーズがカリスマロックスターのステイシー・ジャックスを演じると話題だった本作。ロックなトムってどうなの?と興味深く試写を鑑賞しましたが、やはりすごかったですよ、トム・クルーズ!

舞台は、数々のスターが生まれた伝説のライブハウス「バーボンルーム」。ここで働きながら、成功を夢見る下働きの青年とウェイトレス。ふたりが憧れるのがカリスマロックスターのステイシー。でも、現在のステイシーはセックスアピールこそ抜群にあるものの、酒浸りで情緒不安定。そんな彼が「バーボンルーム」で初のソロライブを行うことになります。ファンで埋め尽くされた会場にオーナーはホクホク顔でしたが、これにはステイシーのやり手マネージャーの罠が……。

物語の主人公は、シンガーを夢見るウェイトレスとロッカーを志す青年。ふたりが、愛し合いながらも、音楽で成功する夢を追いかけるというのがメインストーリーなのですが、トム演じるステイシーを見たら、主人公のふたりはどっかふっ飛んでいってしまいました。アクセル・ローズをモデルにしたと言われるステイシー、なぜか彼のお供は猿で、セクシーなレディーズをはべらせ、酒浸りでいつも千鳥足……という絵に描いたような堕落ぶりがおかしい。そんなステイシーをトムは全身全霊で演じており、助演だからといって手を抜かないのはさすがです。ライブシーンではしっかり生歌を披露。1日5時間、週5日のボイストレーニングを受け、本番に臨んだトムのシャウト、けっこう声域あるのね、と驚きですよ。

監督のアダム・シャンクマンはミュージカル「ロック・オブ・エイジズ」を見て、映画化を決心したと語っています。
「観客みんなが歌詞を覚えていて、一緒に立ち上がって歌っているんだ。こんなに観客が楽しんでいるミュージカルは初めて見たよ。あの熱気、純粋な興奮!そのとき映画化したいと思った。あとミュージカルといえば女性向けという印象が強いけど、このミュージカルは、男性が女性をひっぱって見に行くミュージカル。映画も、気乗りしない恋人を彼氏が引っ張って見に行く……そんな映画にしたかったんだ」。

なるほど、ジャーニー、ボン・ジョヴィ、ガンズ・アンド・ローゼズ、フォリナーなど、アメリカンロック満載ですからね。ロック好きは燃えますよ。でも改めて本作で80年代カルチャーを見て、かっこいいというより、濃くて暑苦しい……。けど、ダサおもしろい時代だったのだなあと再認識。ダサさが愛嬌になっているのです。

それにしてもトムは、主演作では「かっこいい俺」を突き詰めるのに、助演に回ると、本当にハメをはずしますね。『マグノリア』のセックス教祖『トロピック・サンダー』映画プロデューサーときて、今度はイカれたカリスマロックスター。けっこうエロいシーンも多く、エロかっこいい(!?)新生トム・クルーズは必見ですよ。

(映画ライター=斎藤 香)


『ロック・オブ・エイジズ』
9月21日公開
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジュリアン・ハフ、ディエゴ・ボネータ、ラッセル・ブランド、ポール・ジアマッティ、
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、マリン・アッカーマン、メアリー・J・ブライジ、アレック・ボールドウィン、トム・クルーズ
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