エドワード・ホッパー(Edward Hopper, 1882 – 1967)は、現代アメリカの具象絵画を代表する作家。自然の情景を描くことの多かった具象絵画の中で人工的な風物を取り上げ、現代社会の孤独や奇妙な隙間を見つめた彼の作風は、今なお高い評価を受けています。
そんな彼の影響は、今日の写真や広告デザイン界にも見て取ることができるほど。そんな彼の世界のトリコになってしまったのか、ついには、実写化で絵画を再現する者まで現れました!
試みたのは、リチャード・タシュマン(Richard Tuschman)という、数々のブック・カバーや広告に作品を提供するアメリカの写真家。彼の新作「ホッパー瞑想(Hopper Meditations)」は、ホッパーの作品世界を、生身の人間で再現したものです。
ホッパーの作品のなかで特に印象深いのが、“都会のホテル” や “部屋の中の女性” をモチーフにした作品郡。起き抜けや窓の外を眺めている女性たちの、ふと見せる孤独な表情にハッとさせられる作品です。
主にそれらをテーマにしたタシュマン氏の写真は、構図や細部、女性のポーズをかなり忠実に再現。それだけではなく、タイトルが示すように撮ることで「思いを巡らせている」かのような独特の雰囲気を漂わせているところも、とても魅力的です。
「私はいつも、”人間の神秘と複雑さ” を、簡素で抑制されたやり方で表現している彼の作品を愛してきた」
と、タシュマン氏は巨匠への愛着を語ります。そぎ落とし、抑制することで際立たせるという美学。どこか日本人の中にある美意識にも通じるところがあるかもしれません。
(文=黒澤くの)
参照元:Flavorwire.com、richardtuschman.com
▼まずは、ホッパーの原画 ”Morning in A City, 1944”
▼それを実写化した、タシュマン氏の ”Morning in A City, 2012”
▼ 原画 ”Morning Sun, 1944”
▼実写化 ”Morning Sun, 2012”
▼タバコを持ってたたずんでいるのはタシュマン氏本人
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