『ペイ・フォワード 可能の王国』という映画を見たことはありますか?
この映画の中で11歳のトレバーは「今日から世界を良くするための方法」として、「人から受けた親切をその相手に対して恩返し(ペイ・バック)するのではなく、 ほかの誰かに違う形で恩を先送りして親切心を広げ る“ペイ・フォワード” をする」という方法を提案。ペイ・フォワードの結果、映画のなかでは奇跡のような親切の連鎖が起こるという感動作です。
ただ、映画は感動的だけれど、実際にはペイ・フォワードで親切が循環することをはっきり感じるのは難しい!!
そんな現実の世界で、ペイ・フォワードを実際に体験できる「カルマキッチン」が開催されると聞いて、行ってみました!
■ユニークな料金の支払い方
「カルマキッチン」とはアメリカで始まった、ボランティア運営の食堂です。定休日のレストランを借り、ボランティアの人々が働いて、やってきた人に食事を提供するのですが、おもしろいのが料金の支払い方!
・あなたの飲食代はすでに清算済み
お店に入ると、「今日のお食事は、以前カルマキッチンに来た方からのギフトです」と言われるのです。つまり、飲食代はすでに前のお客さんによって清算済み。
・次のお客さんの飲食代を払ってあげても、お花を贈ってあげても何してもいい
前のお客さんからの親切を受けたお客さんは、次のお客さんの分の支払いすることでペイ・フォワードをしても良いし、まったく別の形でペイ・フォワードをしても良いのです。多くの人は次のお客さんの分を支払いますが、過去には歌手の方がカルマキッチンの他のお客様に歌を披露することでペイ・フォワードをしたり、家に帰ってから奥さんに花を贈ることでペイ・フォワードをしたりする人もいたんだとか。
・無銭飲食の人が増えてしまっても問題なし!?
こうなると、無銭飲食の人が増えてしまうのではないかと心配になりますが、運営側は持続することを目的としている訳ではなく、あくまで実験としてやっているので、それは心配していないそう。「ある日突然誰も次の人へお金を残していかなかったら、次回の開催ができないだけ。また違う形でのペイ・フォワードの実験をはじめていくだけ」という考え方なんですって。
・アメリカの1号店は今年で8年目
また、アメリカの第一号店は今年でスタートから丸8年がたち、3万6千食が優しさで提供され、今でもその連鎖は続いているそうです。優しさの連鎖が3万6千食分! 心が温かくなる数ですね。
日本でのカルマキッチンは「ギフト経済ラボ」という団体が主催し、不定期で開催。第1回の資金は、アメリカのカルマキッチンからのペイ・フォワードで行われ、今までに4回行われているそうです。
■居合わせた人と仲良くなる
記者が実際に行ってみたのは第5回カルマキッチン。お店に入ると、ボランティアの店員さんから「皆さんと仲良くなってほしいので、良かったら相席でお願いします」と言われ、見知らぬ男性と相席することに。
ちょっと緊張したのですが、そこで店員さんの優しい気遣いが。「優しい気持ちが循環する場所に来た人同士は、不思議と仲良くなれちゃうものなんです。仲良くなるきっかけ作りのゲームも用意していますよ!」と会話の糸口になるような話題カードや、会話を楽しんで続けられる「カタルタ」というゲームなどを紹介され、相席のお客さんといつしかすっかり盛り上がってお話をしてしまいました。
■いざ、ペイ・フォワード!
今回のカルマキッチンのお料理は、パスタとサラダ、ドリンクとデザートのセット。お食事の途中、この日誕生日を迎えたお客さんがいて、みんなでハッピーバースデーを歌うという出来事があったり、前のカルマキッチンの参加者からメッセージをもらったり。店員さんの気遣いがうれしいし、食事もおいしいし、会話も楽しいし、会場の雰囲気もあったかいし、どんどん優しい気持ちになったところで、終了の時間に。
記者はどんなペイ・フォワードをしようかと考えたのですが、特にみんなを喜ばせられる特技があるわけじゃないので、次の人の分をお支払いすることに決定。「こういう経験をもっと多くの人に味わってもらいたい」と思ったので、お食事代の予想よりちょっぴり多めに入れました。記者と同じようにする人が多いのか、カルマキッチンは次回への繰り越しがいつもちゃんとある状態なんですって。
■優しい気持ちに触れると、周りの人にも優しくできる!
こうして記者のカルマキッチン体験は終了したのですが、帰り道に気づいたことが。カルマキッチン帰りだと、電車の中ではもう積極的に席を譲りたくなっちゃうし、困っている人がいたら助けたくなっちゃうんです。優しくされたのに、それを忘れて電車で「私が席に座るのよー!!」というワガママむき出しな行動はとりにくいのが普通の感覚ですよね。
優しくされてうれしい気持ちって、確かに循環するのかも。ペイ・フォワードが実感できるカルマキッチン体験でした。
「カルマキッチン」
不定期で開催しているカルマキッチンの情報は以下からご覧ください。
カルマキッチンホームページ(http://karma-kitchen.jimdo.com/)
カルマキッチンFacebookページも
(取材、文、写真=FelixSayaka)
取材協力=ギフト経済ラボ
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]
▼カルマキッチンの会場前には、こんな看板が置かれていました▼
▼前の人がお支払いをしてくれた、パスタセット▼
▼以前の参加者からのメッセージ。あったかいコメントが詰まってます▼
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