
【公開直前☆最新シネマ批評インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介しています。今回はオススメ作品の監督インタビューです。
今回ピックアップするのは、2014年7月11日公開の韓国映画『怪しい彼女』です。この映画のファン・ドンヒョク監督が来日し、インタビューすることができましたので、監督の言葉とともに、映画の魅力をご紹介しましょう!
【物語】
口が悪い意地悪ばあさんみたいなマルスン(ナ・ムニ)は、家族の中でもトラブルメーカー。彼女に振り回された息子の嫁は入院し、マルスンを介護施設に入れる話が持ち上がります。自分の理解者がいないと孤独を感じるマルスン。彼女は青春写真館のウインドウのオードリー・ヘプバーンの写真に吸い寄せられて、中に入ってみることに。
そこで遺影のつもりで写真を撮ってもらおうと考えます。そして店主が「50歳若く撮影してあげますよ」とシャッターを切ると……なんとマルスンは50歳若返り、20歳のマルスンに。彼女はオ・ドゥリ(シム・ウンギョン)と名乗り20歳の娘として生きることになるのです。
【7年の時を経てやっと日の目を見た『怪しい彼女』】
ファン・ドンヒョク監督は、以前ポーチでも紹介をした韓国の問題作『トガニ 幼き瞳の告発』の監督です。子供を虐待していた聴覚障害者学校の実際の事件を映画化した『トガニ~』はヘビイな作品でありましたが、『怪しい彼女』はまったく正反対の弾けるように楽しいヒューマンコメディです。ドンヒョク監督の振り幅の大きさに驚かされますが、監督自身、『トガニ~』と正反対の魅力を持った『怪しい彼女』を演出するのは、楽しい仕事だったそうです。
「『トガニ~』は重い内容でしたし、プレッシャーがあったり、子供たちに気を使ったりして、大変な現場でした。1日にタバコを3箱吸ってチェーンスモーカーになってしまい、食欲もなく体重が5キロ減りました。そこへいくと『怪しい彼女』の現場は楽しかった!コメディなので毎日、どうやったら笑えるか、楽しんでもらえるかと楽しいことばかり考えていたので、タバコもやめましたし、食事もちゃんと取れました。実に健康的な毎日でしたよ(笑)」
『怪しい彼女』は韓国でも爆発的にヒットしましたが、実はこの映画の脚本は韓国映画界で7年間も眠っていたそうです。
「7年前に2人の脚本家が仕上げたのですが、製作に名乗り出るところがなく断念。そして3年前にほかのプロデューサーが見つけて映画化を試みましたが、監督もキャストも決まらずまた断念したのです。その脚本を見つけたのが本作の製作陣。彼らが私に依頼をしてきたのですね。私は脚本を一読して、面白い、監督したい!と返事をし、映画化が決定したのです」
【おばあちゃんみたいな20歳のヒロインが魅力的!】
この映画の魅力はなんといってもヒロインのオ・ドゥリ。演じるシム・ウンギョンのパワフルかつキュートな演技は見る者すべてをトリコにします。今までの韓国映画界にはちょっといないタイプの主演女優かもしれません。韓国はセクシーな美人女優が多いけれど、彼女はかわいくて健康的で身近な魅力!そこがいいのです。そして彼女を主演に押したのはドンヒョク監督。でも最初は反対されたそうです。
「この脚本の初稿でオ・ドゥリは、セクシーで若い男性が思わず鼻血を出すような美女だったのです。だから候補にあがった女優はセクシー系でした。でも私はそういうヒロインは見飽きたと言ったのです。私はこのヒロインは親しみやすくてキャピキャピと弾けている女性がいいと思った。ウンギョンさんにはそういう魅力があり、またコメディもシリアスも両方できる演技力がある。だからウンギョンさんを抜擢したのです」
さすができる監督は見る目がある! ウンギョンさんは素晴らしい演技で70歳から若返った20歳の娘を魅力的に見せています。でも心の中は70歳。ゆえにドンヒョク監督はウンギョンさんに、70歳のマルスンを演じたナ・ムニさんの喋りや動きを徹底的に練習させたそうです。
「彼女には普段からおばあちゃんみたいな動作と喋り方をしてくれと言いました。普段から身に着けておかないとリアルな芝居はできないからです。ウンギョンさんは僕と話すときはずっとおばあちゃんみたいな喋りを通していましたね。今でも連絡を取り合いますが、ときどき喋り方がおばあちゃんになっています(笑)」
【今を生きることが大切だと思わせてくれる映画】
『怪しい彼女』は韓国で大ヒットしましたが、映画を見た人たちは「年老いて行く事は悪いことじゃないと思った」「今の瞬間が一番幸せと思わせてくれる」「今を生きるのが大切だと思った」という感想が多かったそうです。ドンヒョク監督もこれらの感想はとてもうれしかったと語っています。
「お母さんに会いたくなったとか、田舎に住む両親に映画のチケットをプレゼントしたとか、一度見たけど、またお父さんとお母さんを連れて見に行ったという声も聞きました。私はこの映画に強いメッセージを込めたつもりはないのですが、家族や幸福について考えたり、感じたりしてもらえたのはうれしい。韓国と日本は文化の違いはあるけど、ぜひ日本の皆さんにも、この映画の持つメッセージを受け止めてもらえたら……。そして家族と見てもらえたらうれしいです」
大いに笑って、キュンと感動して、家族に会いたくなる映画『怪しい彼女』。1度目は友だちや彼氏と、2度目はお母さんと見に行くことをオススメします!
監督撮影・執筆=斎藤 香(c)Pouch
『怪しい彼女』
2014年7月11日より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショー
監督:ファン・ドンヒョク
出演:シム・ウンギョン、ナ・ムニ、ジニョン、イ・ジヌク、ソン・ドンイル、パク・イナンほか
(C)2014 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved






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