【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

ピックアップするのはマーゴット・ロビー主演映画『バービー』(2023年8月11日公開)。監督を務めるのは、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグさんです。

ピンク一色のキュートな世界で生きるバービー人形が人間界で見たものとは……。では、物語から行ってみましょう。

【物語】

バービーランドで暮らすバービー(マーゴット・ロビーさん)は、ボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリングさん)と一緒にパーティ、ドライブ、サーフィンを楽しむ毎日。

でもある日、バービーの体に異変が! その原因を探るため、バービーはケンと人間の世界へと旅立ちます。完璧なバービーランドと違い、人間の世界は、バービーたちにとってあり得ないことばかり。

でも、その経験がバービーやケンの心に変化をもたらせるのです。

【ワクワクが止まらないバービーランドの楽しさ!】

冒頭からピンクのバービーランドが登場し、テンションは一気に爆上がりです。

バービーの毎日は、朝目覚めてから、着替え、食事、生活すべてそれらしく振る舞うだけの “ごっこ遊び“。

ゴミも出ないし、臭いもありません。それは、バービーの世界はプラスチックのお人形さんワールドだからです。

ヒロインのバービーはベーシックタイプで、それ以外に大統領、医者など、さまざまな職業のバービーが存在し、お互いに「ハ〜イ、バービー!」と呼び合っています。

バービーのボーイフレンドのケンもさまざまなタイプがいますが、家も仕事もなく、バービーのボーイフレンドとしてのみ存在しています。

【完璧なバービーの世界が崩壊の危機?】

バービーとケンは1日中遊び尽くし、ハッピーな日々を送っていました。

でもバービーの体に変化が訪れると「なぜ?」という疑問が浮かび上がり、バービーの完璧な世界が壊れ始めます。

「私、どうしちゃったの?」と不安になるバービー……。そんな気持ちは初めてでしょう。

ずっと笑顔だったバービーの心が揺れ始め、喜怒哀楽の表情を見せていく、この変化を見せるマーゴット・ロビーさんが素晴らしいです。

バービー人形の立ち位置をキープしたまま、ハイテンションなお芝居からバービーの心の奥深くまで入り込んだ深いお芝居も披露。本作は彼女の集大成ではないでしょうか。

【お人形遊びはいずれ飽きられる運命…】

人間の世界がバービーたちの目には新鮮に映りますが、バービーランドと同じように振る舞ったら「変な人」扱いされ、完全に浮きまくります。

でもバービーにとって何よりショックだったのは、幼いころは遊んでくれていた持ち主の少女に会ったとき「もうお人形さん遊びなんてしないわよ」とばかりにガン無視されたこと。

自分はおもちゃであり、いずれ飽きられる運命にあることを彼女は知ってしまうのです……切ない〜。

がしかし、驚くことに少女のお母さんのグロリア(アメリカ・フェレーラさん)が、人間社会でピンチに陥ったバービーの救世主になるのです。そして母娘はバービーと一緒にバービーランドへ。

人形界と人間界が自由に行き来できるなんて……あったらいいな〜と思っちゃいましたよ!

【バービーランドがケンランドヘ??】

いっぽう、ケンもケンで人間界で刺激を受けます。これまでバービーのお飾りのような存在だったけど「男はもっと強くてイカしている」ということを知り、バービーランドをケンの世界に染め上げるのです。

ピンク一色だったバービーランドがマッチョな男の世界へ激変するシーンはなかなかの衝撃。ケンの変わりようが極端で面白すぎました!

また演じるライアン・ゴズリングさんも最高! 頭からっぽの人形だったケンが自我に目覚め、人生を変えていく様を笑わせながらも、本音を語るシーンでは胸をキュンとさせてくれるのです。

【男らしさ、女らしさって何?】

映画を最後まで観て思うのは、“男らしさ、女らしさ” というのが、人生を窮屈にしているということ。

グロリアが人間界における女性の生きにくさを語るシーンがあるのですが、彼女がこんな思いを抱えているのは、女性らしさを押し付けられているからなんですよね。

男性も同じで「男だから、女だから、こうしなくてはいけない」ではなく、自分らしさが大切なんですね。

『バービー』は、キュートでポップなだけじゃない。心の深いところまでえぐってくる映画なんです。

ちなみにPouchではグレタ・ガーウィグ監督とデイビッド・ヘイマンプロデューサーの来日インタビューを掲載中なので、ぜひご覧ください。映画『バービー』の魅力がより深く伝わると思います!

執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

バービー』(2023年8月11日より全国ロードショー)
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー「、ライアン・ゴズリング、アメリカ・フェレーラ、シム・リウ、デュア・リパ、ヘレン・ミレン
脚本:ノア・バームバック
プロデューサー:デヴィッド・ヘイマン
配給:ワーナー・ブラザース映画