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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはインド映画バルフィ! 人生に唄えば(8月22日公開)です。最近すごい勢いでインド映画の波が来ています。以前ピックアップした『めぐり逢わせのお弁当』(公開中)もインド映画。

その『めぐり逢わせのお弁当』は従来のボリウッド映画らしい歌って踊る映画とは一線を画す、じっくり見せて気持ち良く感動させる映画でしたが、『バルフィ! 人生に唄えば』も突然歌ったり踊ったりすることはありません。でも『めぐり逢わせのお弁当』のようなリアリティ重視の感動ドラマでもありません。世界中のあらゆる映画へオマージュをささげるような微笑ましく美しいファンタジーなのです!

【物語】

生まれつき耳も聞こえず話すこともできないバルフィ(ランビール・カプール)は、美しいシュルティ(イリヤーナ・デクルーズ)に恋をします。愛の言葉は語れないけれど、身振り手振りで愛情を伝えるバルフィにシュルティも惹かれていきますが、資産家の青年と婚約中の彼女は、母の猛反対もあってしまうのです。

それでも彼のことが忘れられないシュルティ……。その後、バルフィの父が病に倒れ、彼は治療費を工面しなくてはならなくなります。バルフィは富豪の孫娘のジルミル(プリヤンカー・チョープラ)を誘拐する計画をしますが、数々のトラブルの末、バルフィはジルミルに好かれ、一緒に逃亡生活をすることになり………。

【インド映画のイメージを見事くつがえす!】

『めぐり逢わせのお弁当』で、ド派手なミュージカルではないインド映画があるのだ……と、多彩なインド映画の世界に感動したわけですが、『バルフィ! 人生に唄えば』は、また違った魅力に満ち溢れた映画です。美しい老女が過去の恋人を語り始めたと思ったら、時代はポーンとさかのぼってバルフィ登場。何かしでかしてしまった彼は、警察に追われており、追いかけっことなるのですがこれが普通のアクションではなく、ジャッキー・チェンばり追跡劇。家から家、路地から路地を駆け抜けて、障害物を飛び越えたり、利用したりして逃げまくるんですよ、もう楽しい! 

またバルフィが魅力的。彼は言葉を発しないけれども気持ちを表情や体の動きで表現するんですね。それだけでも何がいいたのかちゃんと伝わるんですよ。ときどき歌が挿入されて、それがバルフィの気持ちを表していたりするんだけど、そのタイミングや歌詞も場面とリンクしていて効果的。

またこの映画の鮮やかな映像も女子はきっと好きですね。ちょっと『アメリ』っぽいというか、人工的なんだけど、計算されていて、この映画ならではの独自の世界を創りだしています。

【三角関係の恋心を描いたラブストーリー】

『バルフィ! 人生に唄えば』はひとりの男性の人生を描いたものですが、その核になっているのは恋愛です。それも三角関係なのです。バルフィが最初に愛をささげるのはシュルティ。この方がまあ絶世の美女といっても過言ではない美しい人です。彼女もバルフィに恋をしますが、ロミオとジュリエットのごとく引き裂かれ、それでも忘れられない二人……。そこに現れるのは富豪の孫娘のジルミル。彼女は自閉症なのですが、楽しくて面倒見のいいバルフィに惹かれていき……。バルフィは誰を選ぶのでしょうか? 彼の人生はこの二人の女性との関係をメインに進んで行きます。正直リアリティはないけど、ロマンチックなおとぎ話を見ているような気持ちにさせてくれるのです。

言葉を持たないバルフィのチャップリンばりのパントマイムは本当に目を見張るし、めくるめくような展開は決して退屈させません。シュルティの揺れ動く恋心、ジルミルの情熱、ジルティの純情、三人三様の愛の形にずっとドキドキさせられっぱなしですよ。

【覚えておこうアヌラーグ・バス監督】

ちなみに『バルフィ! 人生に唄えば』は第85回アカデミ賞外国映画賞インド代表作品でもありました。この映画を演出したアヌラーグ・バス監督は、テレビ業界からキャリアをスタート。あらゆるジャンルのテレビ番組の演出をして2003年に映画監督デビュー。数々のヒット作がありますが、『バルフィ! 人生に唄えば』をきっかけにハリウッドに目を付けられそうな気がします。まずは『バルフィ! 人生に唄えば』で、映画を見る幸福に酔ってください。
執筆=斎藤 香(c)Pouch
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『バルフィ! 人生に唄えば』
2014年8月22日より、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
監督:アヌラーグ・バス 出演:ランビール・カプール、プリヤンカー・チョープラ、イリヤーナ・デクルーズほか
(C)UTV Software Communications Ltd 2012

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