【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、演技派俳優ニコラス・ケイジさん主演映画『マッシブ・タレント』(2023年3月24日公開)。日本の映画ファンから「ニコケイ」とか「ニコちゃん」などと呼ばれ、愛されている俳優がセルフパロディに挑戦するのが本作。

これがもう最高なのです……! では、物語からいってみましょう。

【物語】

ハリウッドスター、ニック・ケイジ(ニコラス・ケイジさん)は多額の借金を抱えていました。おまけに、心から望んでいた役は得られず、妻と娘には愛想を尽かされ、居場所すら失ってどん底に。

栄華を極めた自分の人生を取り戻したいーーー。

そう強く思っていたとき、ケイジの熱狂的なファンだと言うスペインの大富豪ハビ(ペドリ・パスカルさん)から、自分のパーティーに出席して欲しいと言う依頼が来ます。しかも謝礼は大金!

最初は乗り気じゃなかったものの、彼は借金返済のために渋々引き受けてスペインへ。大富豪ハビはとってもいい奴で、好きな映画の話で意気投合し友情を深めていったと思ったら……!?

【ニコケイファンの大富豪ハビに大共感】

どんな役でも自分色に染める俳優ニコラス・ケイジが本作では自分自身を演じています。

大富豪のハビに依頼されてスペインに飛んだケイジは大歓迎を受けます。最初はドン引きしていましたが、ハビは彼の数々の出演作の素晴らしさを語るなど、映画ファンらしい熱い想いをケイジにぶつけます。そんな彼の “ケイジ愛” に感動して仲良くなっていくのです。

「その気持ちわかるよ!」と、ハビに声をかけたくなりましたよ。

個人的にはニコラス・ケイジさんとジョン・トラボルタさんが共演したジョン・ウー監督作『フェイス/オフ』(1997)が大好きなので、あの映画の名シーン、ゴールドの二丁拳銃のパロディには大感動!

またペネロペ・クルスとの共演作『コレリ大尉のマンドリン』(2001)について「あれはもっと評価されるべき映画」なんて話も良かったなあ。

出演作についてケイジ&ハビが熱く語るシーンは映画愛に溢れていました。

【物語は一転、スパイ映画に?】

さて、ケイジと熱烈ファンの楽しい時間も束の間、実はハビは国際的な犯罪組織のボス(!)で、政治家の娘を誘拐した容疑者だったということがわかります。

スターとファンのほのぼの時間が一転し、ケイジはハビを追うCIAに協力して欲しいと言われ、スパイ映画の展開に……。

しかし、ハビが極悪人には見えないし、友情も芽生えているので、ケイジは葛藤するんです。そんな事情を知らないCIAは「屋敷のどこかに娘がいるはずだから探せ!」とか指令を出してくる。

人のいいケイジは、政治家の娘を探そうとしてヤバい橋を渡ることになるのですが、基本コメディ映画なので、スパイ活動と言いつつ緊迫感はありません。ちょっとドタバタ風味もあり、そこもまたご愛嬌って感じでしたよ!

【ニコラス・ケイジが映画ファンに愛される理由】

1995年『リービング・ラスベガス』でアカデミー賞主演男優賞を受賞しハリウッドのトップに立ったニコラス・ケイジさん。

私生活では、何度も結婚離婚を繰り返したり、めちゃくちゃ浪費したり、不動産投資に失敗して借金を背負ったり、破天荒キャラですが、映画ファンからずーっと愛されている存在。なぜなら、彼は大作から低予算なB級映画まで何でも出ちゃう “サービス精神” があるからです。

それでも、どんな作品にも全力投球で挑む姿、やっぱり素敵なんですよ〜。

Pouchでもご紹介した『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021)では、“ニコラス・ケイジのふんどし姿” が観れる、はちゃめちゃなサムライウエスタン映画でしたからね。

今キャリアが再び花開いているニコラス・ケイジさん。そんな彼を微笑ましく見つめることができる作品『マッシブ・タレント』おすすめですよ♪

執筆:斎藤 香(c)pouch
Photo:®, TM & © 2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

『マッシブ・タレント』
(2023年3月24日 新宿ピカデリー、渋谷シネクイント、グランドシネマサンシャイン池袋、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー)
監督:トム・ゴーミカン
配給:フラッグ
出演:ニコラス・ケイジ、ペドロ・パスカル、シャロン・ホーガン、アイク・バリンホルツ、アレッサンドラ・マストロナルディ、 ジェイコブ・スキーピオ、ニール・パトリック・ハリス、ティファニー・ハディッシュ