世界の照明に革命をもたらした青色LED。その発見と実用化で日本人3名がノーベル物理学賞を受賞しました!
20世紀中は不可能と言われていた青色LEDの実現に成功したのは1989年のこと。当時名古屋大学教授だった赤崎勇先生(現名城大学教授)と、助手の天野浩先生(現名古屋大学教授)が成し遂げました。
こちらの名古屋大学、通称「名大(めいだい)」からノーベル賞の受賞者が出るのはなんと6人目! 東大・京大に次いで第3位なんです。国民よ、ナゴヤをあなどるなかれ。そんな東海地方の雄、名古屋大学に行ってまいりましたよ!
【広大な敷地に、名大専用駅がある!】
名大の最寄り駅は、そのものズバリの「名古屋大学駅」。「名古屋大学『前』駅」じゃないんですよ。大学の構内を地下鉄が走っていて、そのど真ん中に駅があるんです。まさしく、名大生のための駅。
地上へ出ると、だだっ広い芝生がどどん。気持ちよさそうにお昼寝してたり、デートしてたり、輪になって難しそうな議論をしてたり、まるで海外のキャンパスのよう。お昼休みには学生でいっぱいになるんだって。
せっかくなので、通りがかった現役名大生2名とおしゃべりしてみました。
【さすが現役生、頭のデキが違う!】
・バイトの面接に行く途中のN君
「名大は東海地方のあこがれ。レベルは高いけど、意外とそこまでマジメじゃない。遊ぶときと勉強するときのメリハリがついてる。将来は一級建築士になって、自分が住みたい家を作りたい。電磁気学が必須科目で、後期で天野先生の授業を受ける予定なので楽しみ」(工学部環境土木・建築学科 1年)
・ジャグリングの練習中のS君
「名大は、6割くらいは地元出身。東海地方は地元志向がけっこう強いと思う。材料関係の勉強がしたくて迷わず名大を選んだ。修士まで行って、何か新しいことがやりたい。学食? 普通かな。特にナゴヤ飯が出るというわけじゃないけど、きしめんはあったかも」(工学部物理工学科 1年)
ふたりとも、まずルックスからして賢そう。話してみるとやっぱり賢かった。ひとつ質問したら、用意していた質問の5つくらい先まで全部答えてくれるんです。エスパー? 頭のデキが記者とはサッパリ違うことだけはよくわかりました。ここまですごいと嫉妬すらできません。
続いて、赤崎研究室で両先生が青色LEDの研究に没頭していたまさしくそのとき、同じキャンパスで学生生活を送り、研究にいそしんでいた名大OBの方々に、当時の印象と名大の特色をお伺いしてみました。
【名大ってこんなところ!】
・プレッシャーが少ない
設立が昭和14年と、旧帝大の中ではいちばん歴史が浅い名大。設備面や補助金額で遅れをとっている反面、それがいい結果につながるのだそう。
「補助金が圧倒的に多い東大なんかは、短期間で結果を出さないといけないので、それだけプレッシャーも大きい。名大はそんなに補助金がないから、与えられた環境の中で好きなことができる。競争せずに好きなことをしているから、ストレスもない」(理学部OB)
「論文を何本書いたか、という数の結果よりも、『結局それはどういうことなの?』と本質を要求される。アイデアがよければバックアップしてくれるので、のびのび研究できた」(工学部修士OB)
・他の人がやらないことをやる
「流行りのものをやるのではなく、やりたいことをやりなさい」というのは赤崎先生の談。そのポリシーは、赤崎先生に限ったことではないみたい。
「SMAPの『世界にひとつだけの花』がヒットするずいぶん前から、ナンバーワンよりオンリーワンであれと言われつづけてたよ。他の人と同じことをやると競争率が高いから、他の人がやらないニッチなことをやれ、と。だから、意外なところから突然結果を出してくるのが名大」(理学部OB)
・とにかく自由でさっぱりしてる
縦割りで、なにかとしがらみが多い大学組織。意外とウェットな人間関係があったりするもんです。しかし、名大はというと……
「教授の裁量権が大きくて、自由度がすごく高い。あちこちの研究室に出入りができて、興味があったら他の研究にするっと加われることもある。横のつながりが広がりやすくて、いろんなコラボが生まれる」(工学部OB)
「当時、医師国家試験の合格率は、名大医学部が圧倒的に低かった。勉強と遊びのメリハリがあるんだけど、配分をうっかり間違っちゃったような、天才と天然の間みたいな人がいっぱい。ものすごく頭のいいヤツが『試験日を間違えた』とかいうありえない理由で落ちたりね。それに対して周りがゴチャゴチャ言ったりしない。笑って許しちゃう。なんか、さっぱりしてるんだよね」(医学部OB)
「通算すると1500回は失敗した」という青色LEDの研究。誰もが見放した素材を使って、黙々と研究し続けることができたのは、名大の環境あってこそだったんですねぇ!
今回インタビューに答えていただいたのは理学部・工学部・医学部と理系の方々ばかりでしたが、生真面目でカタブツそうな国立理系のイメージとは全く違って、皆さん気さくで社交的なのにも驚きました。
【ナゴヤへお越しの際はぜひ名大へ】
名大には、過去に輩出した4人のノーベル賞博士をたたえるコーナーのある博物館や、ノーベル賞展示室もございます。赤崎先生と天野先生ももうすぐ加わるはず! ナゴヤへお越しの方、名大を目指す学生さんはのぞいてみてね。
名古屋市役所前の交差点には、世界初の青色LED信号機がございます。名古屋城のすぐ近くなので、そちらもあわせてどうぞ!
取材・撮影・執筆=綾部 綾 (c)Pouch
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