main_large (1)
[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年12月23日公開)です。

シルベスター・スタローンをスターにした名作『ロッキー』から生まれた、この作品。ロッキーは続編が6作も作られ、もう終わりでしょうと思ったら、別なカタチで新作が登場しました! 本作は、ロッキーの最強のライバルだったアポロの息子をボクサーとして鍛える物語なのです。ボクシングの興奮を味わいつつ、泣ける物語でもあるのですよ。

監督のライアン・クーグラーと主演のマイケル・B・ジョーダンは、白人警官が黒人青年を射殺した事件の映画化『フルートベール駅で』の名コンビ。実力派の二人が『ロッキー』に参戦ということで、期待が高まる作品になっています。

【物語】

元ヘビー級王者アポロ・クリードの息子­、アドニス(マイケル・B・ジョーダン)は義母のおかげで何不自由のない暮らしをしていたけれど、ボクシングへの情熱は止められない。

彼は本格的にコーチにつこうと、ロッキー(シルベスター・スタローン)にコーチを依頼します。アドニスは「自分はあなたのライバルだったアポロの息子だ」と告げますが、ロッキーはコーチを断ります。しかし、孤独にトレーニングをする彼を見て、ロッキーはアドニスを一流のボクサーにしようと決意。

sub2_large

数々の障害を乗り越えて、アドニスは世界チャンピオンのコンラン(アンソニー・ベリュー)から対戦相手に選ばれます。実力差は歴然としていましたが、アドニスとロッキーは対戦を決意。しかし、試合を翌日に迎えた日、ロッキーの体に異変が……。

【そもそも『ロッキー』とは?】

『ロッキー』はシルベスター・スタローンの出世作であり、その年のアカデミー賞作品賞、監督賞などを受賞した名作です。

ロッキーが生卵を飲みこんで、走り、両手をつきあげるシーンは名場面として語り継がれるほど。人生に負けそうになっていた男が一発奮起して挑戦する物語は、世界中の多くの人に勇気を与えたのです。ちなみに脚本は、スタローン本人が数日で書き上げたそうです。すご~い!

映画界伝説のキャラクターであるロッキーですが、本作では闘わず、コーチとして宿敵だった男を見守る役どころ。登場シーンからして「ロッキー老けたなあ」と思わずにいられません。食堂を経営するフツーのおじさんにしか見えません。

sub3_large

しかし、ライアン・クーグラー監督は老いたロッキーに再び輝きを与えます。そもそもこの映画は、クーグラー監督自身、映画『ロッキー』の大ファンだったことから立ち上がった企画。その情熱がシルベスター・スタローンを突き動かし、ロッキーを甦らせるのです。

sub1_large

【情熱と信頼が、賞レースを席巻する傑作を生み出した】

本作『クリード チャンプを継ぐ男』は全米で高評価を受けており、特にシルベスター・スタローンは全米各映画賞で助演男優賞を数々受賞。もしかしてアカデミー賞候補もありかも?と言われています。

とはいえ、この映画のスタートは不安そのものでした。クーグラー監督は大学の映画部時代から、この物語の構想を練っていました。でもスタローンに承諾を得るために会ったとき、彼はまだ1本も長編映画をリリースしていなかったのです。

「スタローンはちょっと不安げだったよ。僕はまだ長編映画監督デビューもしていないし、この若造は何だ?と思っただろうね」

と語るクーグラー監督。

でも、スタローンは心動かされていたのです。

「ライアン・クーグラー監督が、アポロの息子アドニスの物語の構想を持ってきたときは驚いたね。この若いフィルムメイカーは凄い。僕たちが何十年も前に始めた作品にこんなに魅了されているなんて」

これまで『ロッキー』シリーズはスタローンが脚本を手掛けていましたが、本作はロッキーが出演する映画の中で唯一、スタローンが手掛けていない作品です。でもそれだけ彼がクーグラー監督を信頼していたということ。その信頼が映画を成功へと導いたのです。

【ロマンスも素敵!女子はヒロインに注目】

『ロッキー』は、恋人エイドリアンとの純愛も注目され、女性たちはラストでロッキーが「エイドリアーン」と叫ぶシーンにジーンときます。

そして本作でも、アドニスには素敵な恋人が登場します。ビアンカ(テッサ・トンプソン)は進行性の難聴を患いながらも歌手を目指す自立した女性。その魅力はアドニスだけでなく見る者も魅了します。彼女がアドニスのボクシングの試合観戦のとき「ボクサーの彼女はこうでなくてはいけない」というスタンスで臨むんですよ。

sub03a_large

彼が殴られてボコボコになり、血を吐いている姿が目の前にあっても、ビアンカはしっかり見届けます。そして「イケイケ!」とばかりにアドニスを声援するのです。ビアンカ、メンタル強いわ。「彼が殴られている、きゃ~怖い!」なんて言っていてはダメなのです。彼の闘う姿をその目に焼き付けないと! 

『クリード チャンプを継ぐ男』は男性だけでなく、女性の心も捉える情熱的な作品です。彼を誘えば乗ってくる可能性大! ハイライトのボクシングシーンは臨場感がハンパないので、彼の手をギュっと握って見るといいでしょう。

執筆=斎藤 香(c)Pouch

『クリード チャンプを継ぐ男』
(2015年12月23日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー)
監督:ライアン・クーグラー
出演:シルベスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、フィリシア・ラシャドほか
(C)2015 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

▼映画『クリード チャンプを継ぐ男』予告編