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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回は久々、時代劇をピックアップ。阿部サダヲ主演の時代劇『殿、利息でござる!』(2016年5月14日公開)です。

この映画は大ヒット映画『武士の家計簿』と同じ、磯田道史の評伝を映画化。江戸時代の金銭問題にスポットをあてているのは一緒ですが、前作の映画は家族問題だったのに対し、今回は藩の問題。あまりの重税に苦しんだ庶民が一致団結して立ち上がり、奇抜なアイデアで藩主に立ち向かっていく姿を人情と笑いで描いていきます。

阿部サダヲ主演映画なので、てっきり大爆笑系かと思ったら、ほっこり感動できるいい映画なんですよ~。では、いってみましょう!

【物語】

舞台は江戸時代。仙台藩は百姓や町人へ重税を課しており、夜逃げが絶えませんでした。小さな宿場町・吉岡宿の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は町の将来が心配でたまりません。

ある日、篤平治(瑛太)から宿場復興の秘策の話が。藩に大金を貸し付けて、利息を払ってもらうという作戦です。金銭を巻き上げられてきた町人たちが、逆に藩から巻き上げてしまおうという逆転の発想でした。
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もちろん作戦は重要機密! 商人たちは知恵を駆使して、3億円を集めようと動き出すのですが……。
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【250年の時を超えた本当のお話】

この物語は250年前に実際にあったお話。仙台藩主の伊達重村は、薩摩藩主に官位で差をつけられないために、江戸の老中に多額の贈り物をしたり、幕府の建設工事費用を買って出たりしたことで、仙台藩はかなり金銭的に厳しい状況に追い込まれていたのです。

ゆえに重税を庶民に課していたのですが、吉岡宿はとにかくしんどかった! お上のための数々のミッションも自腹で行わなければならなかったり、吉岡宿が仙台藩の直轄領ではなかったので助成金も出なかったり。そこで財政難に苦しむ殿にお金を貸してあげて、そのかわり利息をちゃーんと払ってもらおうと企んだわけですね。すごい!

それにしても「これ以上、国民からお金を搾り取らないで~」という今の時代の叫びと似たような感じの吉岡宿。だから、江戸時代と現代という時代の隔たりも超えて、この物語にはミョーに共感しちゃうわけですよ。

【ユーモアのさじ加減が素敵なスパイス!】

阿部さん主演ってだけで、笑いを期待しますよね。ポスターもお笑いオシのような印象もありますし。でも阿部さん、今回はいつもよりも半分くらいの控えめなコメディ度です。様々な背景を背負った生真面目な役だから、いつもの爆笑演技を期待すると、ちょっと「アレ?」と思うかもしれません。

でも、いいんです! この映画は人情ものであり、チームプレーが核! お上に貸し付けるお金をどこまで集められるのか、それも隠密に~というスリルもあるし、藩の財政担当として厳しく取り締まる役人(松田龍平)のヒールっぷりがまたいいんですよ。陰険で手強くて、この牙城を崩すのは大変と思わせますからね!

【フィギュア界のプリンスの演技力は?】

庶民が殿と顔を合わせることなどめったにないそうですが、この映画では、後半に伊達重村が十三郎たちの前に登場します。

製作陣は、本番まで、誰が重村を演じるのかをキャストにも秘密にし、キャストはそれぞれ「あの人かな」と予想していたようですが、まさかの羽生結弦選手の登場! 役者ではない羽生選手が重村を演じると予想した人はいなかったでしょう。羽生選手は宮城県仙台市出身。地元の歴史を描いた作品ということで出演依頼にOKをしたそうです。

氷上では常に演技をしていても、映画出演は初の羽生選手。記者も「大丈夫かな」とヒヤヒヤしながら見ていましたが、大丈夫でしたね。羽生選手はもともと公家顔なので、ヴィジュアル的にも時代劇にすんなりはまり違和感なし。若干動きが軽やかすぎるきらいはあったものの(アスリートだから?)想像以上にハマっていましたよ。

やっぱり、役になること、演じることが感覚として身についているんでしょうね。さすが金メダリストです!

殿様への貸付利息大作戦が進むにつれ、十三郎たちの家族関係や過去の出来事の真相なども明らかになっていき、ジワジワと感動が押し寄せてくる映画『殿、利息でござる!』。お金の為に一致団結する人々だけど、決して金儲けをしようとしているのではなく、町のため、人のためという情の厚さ、慎み深さを貫いているところも素敵です!

執筆=斎藤 香(C)Pouch
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『殿、利息でござる!』
(2016年5月14日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー)
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、重岡大毅、羽生結弦、松田龍平、草笛光子、山崎努ほか
(C)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

▼「殿、利息でござる!」予告編