ある日の仕事帰り、わたしは50代男性上司と30代男性同僚、自分と同年代の20代女性同僚の4人でお酒を飲んでいました。

夜もふけ、そろそろ次の店へ行くか、それとも帰宅の路につくか決めなければいけなくなった頃、上司が「キャバクラ行っちゃう?」と提案してきたんです。

ホントは帰りたいけれど、ここは誘ってくれた上司の気持ちに答えるしかないっ。それに「キャバクラに客として行く」経験ができるだなんて、またとないチャンスではないか!

酔った頭をフル回転させて、「いっきま~す!」と元気よく答えたわたし。ノリのいい同僚たちもみんな賛同してくれて、喜び勇んで渋谷のキャバクラへと足を踏み入れることになったのです。

【若かりし頃、ちょっとだけキャバ嬢やってました】

このときわたしは20代半ばでしたが、実はもう少し若い頃に都内のキャバクラで1年ほどアルバイトした経験があったんです。

だから余計興味深かったんですよね、お客として体験するキャバクラ、というものが。

【ギャル率高めなキャバクラへ入店!】

ワクワクしながら、いざ入店! すると目に飛び込んできたのは、可愛らしいギャルたちがきらびやかなドレスを着用して接客する姿。

渋谷という場所柄なのか、清楚系よりもギャルっぽいビジュアルの女の子が多い印象です。かかっている曲も、当時ギャルたちに好まれていたユーロビートだったしね。

【接客を担当してくれたのはアヤちゃん&マイちゃんコンビ】

騒がしい店内を通り抜けて、奥のボックス席へと案内されたわたしたち。どんな子が席についてくれるのかな~とワクワクしながら待っていると、やがて小さなポーチを片手に持ったボブへア&黒ドレスの女の子・アヤちゃんと、茶髪ロング&黄色ドレスの女の子・マイちゃんがやってきてくれました。

「こんばんは、アヤです~」「マイです、よろしくお願いします♡」と着席した2人。

わたしたち4名を両側から挟み込むかたちで座ってくれたため、端にいたわたしは運よくマイちゃんの隣をゲットすることができて、小さくガッツポーズ。マイちゃんが渡してくれたおしぼりで手を拭きながら、手際よく水割りを作る様子に見惚れてしまいました。

【男性チームと女性チームに自然と分かれるの巻】

上司は、どうやらこの店の常連らしく、隣に座ったアヤちゃんはお気に入りの嬢だったみたい。タバコに火を点けてもらいながら、上司は終始ニコニコ。たとえるならば「キュッと締めていたネクタイをゆるめた」とでも言いましょうか、普段はあまり見ることのないリラックスした表情に、ほっこりしてしまったことを覚えています。

席順もあってか、「アヤちゃん・上司・男性同僚」「マイちゃん・女性同僚・わたし」といった具合に、自然と2つのグループに。

マイちゃんは当時わたしと同じ20代半ばで、夜のお仕事歴は5年ほど。けれど昼のお仕事も並行して行っているようで、「わたしも経験あるから……お付き合いって大変ですよね(笑)」と小声で気遣ってくれました。

【「恋愛トークに花が咲く」女性チームと「嬢から怒られゴキゲンな」男性チーム】

仕事の話はそこそこに、恋愛を中心とした女子トークで終始盛り上がる女性チーム。

一方の男性チームは、話術が巧みで包容力をも感じさせるアヤちゃんに、すっかり心を許している様子。「○○ちゃん(上司のこと)、そういうことすると部下から嫌われるよ~!」と怒られているのに、上司は心なしか嬉しそうです。

【「甘えたい」「怒られたい」からキャバクラに行ってしまう】

わたしがキャバクラ嬢として働いていた当時、キャバクラが大好きだという男性客に「ここ来ると癒されるから、つい寄っちゃうんだよね」と言われたことがあったのですが、お客として来てみてその気持ちがほんの少しわかったような気がしました。

また普段スナックに通っているという男性客からは、「なんてことない話を、ただ聞いてもらいたい。ママに怒られたくてスナックに行ってるようなもんなんだ」と言われたことも。

そのころに聞いた「 “疑似恋愛” を求めて足を運ぶ人ももちろんたくさんいるだろうけど、愚痴をこぼしたり甘えたりする場所がほかになくて行っちゃう男も少なくないと思う」という言葉を、アヤちゃんと上司のやり取りを目にしながら思い出していました。

【働くオトコにとってのオアシス、それがキャバクラ】

ほかでは得られない癒し、そして「拒否されることなく絶対に受け止めてもらえる」という安心感。そういったものを求めて、男性はキャバクラへ足を運び、嬢たちのホスピタリティーに対してお金を支払っているのかもしれません。

きっと上司にとってこのキャバクラは、猫好きのわたしにとっての猫カフェみたいなものなんだろうな~。

お酒が入ったグラスを傾けながら可愛い女の子に「うんうん」と愚痴を聞いてもらえるキャバクラという空間は、一部の男性にとってはオアシスのようなものである。そのことがよ~くわかった、貴重な体験でした。男性同僚の寒いギャグにも笑ってくれていたし……ほ~んと、キャバクラ嬢は偉大ですっ!

Photo:RocketNews24.
執筆=田端あんじ (c)Pouch