大学進学で上京した春のこと。新生活に期待と不安を膨らませていた私は「せっかく東京に来たんだから東京っぽいものが食べたい」と思い、もんじゃストリートのある月島へと向かいました。まだ誘えるような友達もおらず、たったひとりで……。

電車を乗り継ぎ、店の前に着いたはいいものの、さっきまでの勢いはどこへやら。店の中から聞こえる賑やかで楽しげな声に足がすくみ、入ろうかどうしようかしばらく迷ったあとで店を後にしたのでした。

ひとりでもんじゃ焼きを食べる勇気はない……」と。

あれからはや10年以上……「ステキなぼっちの日」企画の話がPouch編集部で出たときから、「いつかあのリベンジをしなくては」と思っていました。というわけで、今回は「ひとりでもんじゃ焼きを食べに行っても楽しめるかどうか」です。なんとも地味ですが、想像してみてください、ひとりでもんじゃ焼き、食べるところを……。

20歳の私、そして1人で東京観光にくる人よ、私の背中を見るのじゃ!

【平日でも賑わう月島にひるむ】

今回訪れたのは月島もんじゃストリート。月曜の夜だというのに、もんじゃの店はどこもかなりの賑わい。中には客引きをしているような店もあるのですが、ぼっちの私は見事に声がかかりません。ねえ、誘ってくれてもいいんだよ……?

ひとりでも違和感の無さそうな、空いてる店に入るか迷いましたが……ここは人の賑わう有名店に入らなければ意味がない。というわけで、意を決してガイドブックなどにも載っている「いろは」という店へ。

有名店だけあって満席。お店の人に「ひとりでも大丈夫ですか」と確認して、店の前で順番が来るまで待機します。

ぶっちゃけ、ひとりで飲食店に入るのなど、もう平気のへっちゃらだと思っていたはずなのに……。待っている間胸がドキドキして、20歳の春のように足がすくみそうになります。

【まさかの相席スタートに緊張感が走る】

順番が来て「お待たせしました〜」と通されたのは、なんとサラリーマン2人組との相席。店内を見回しますが、ひとり客は私のみ。ひとりでやってきた私をチラリと見やったあと、隣のサラリーマンの会話が急に止まりました。明らかに不審がられている……。

メニュー表とにらめっこし、オススメの「めんたいもちチーズもんじゃ」と「ラムネ」を注文しました。

ところで、もんじゃの焼き方って、どんなんだっけ……? 店員さん教えてくれるかなと思う間もなく、1分弱で注文したものが「はいどうぞー」とテーブルに置かれます。は、早い!

そしてそのまま店員さんは忙しそうに店の奥へと消えていくではないですか。ちょ、待てよ!!!!!!!!!

【急に社長のカラオケタイムが始まり困惑】

キャベツとだし汁、めんたいの入ったどんぶり、そしてチーズと餅が載った皿を前に、しばし呆然とする私。これは……どうすれば……。

戸惑っていると、いきなり安全地帯の『恋の予感』のイントロが大音量で流れ出し「社長のカラオケタイム」なるものが始まったではないですか。えー! なにそれ、聞いてないよ!

マイクを持ったおじいさんが店の真ん中にやってきて、お世辞にも上手いとは言えない歌を熱唱しています。この方が、店の社長だそうです。

そして社長が歌っているにも関わらず、店員さんは手拍子するでもなく忙しそうに働き、お客さんも社長の歌を聴くでもなく、完全に謎の時間が訪れました。これは一体……。

急なカラオケタイムにひとりぼっちで来たことは忘れられたけど、この雰囲気、もんじゃの作り方聞けない!

【もんじゃとの孤独な戦い】

とりあえず「もんじゃの作り方」が書かれた貼り紙を見ながら、社長のカラオケをBGMに見よう見まねで作るしかありません。

もんじゃは、まず最初に土手と呼ばれる炒めたキャベツの堤防を作り、その中にだし汁を入れて焼いていきます。鉄板の上に油をひき、もちを端っこで焼きつつ、どんぶりからだし汁をこぼさないよう、キャベツだけすくって炒めるのですが、まず、このキャベツだけすくうというのが難しい。

ドキドキしながらキャベツを炒めるけど、いつまで炒めればいいのか分かりません。ひたすらキャベツを炒めたあと店員さんを呼び止め「これ、もういいですかね……」と声をかけたところ「むしろ炒めすぎなくらいですね」と言われてしまい大ショック。

とりあえず、キャベツを広げて大きくて広い土手を作りますが……土手はどれくらいの大きさにすればいいのかも不明。ひたすら自問自答です。

この土手作り、友達と来たときには一度も成功したことがなく、だし汁を入れると完全に決壊していたので緊張します。とりあえず大きめに作った土手に、恐る恐るだし汁を流し込み、具材をトッピングすると……なんと決壊せず!

私って天才じゃないの? と喜ぶ反面、このとき、私が感じたのは、すっかり1人でなんでもできる女になってしまったことの寂しさ。そして、もんじゃがうまく作れても共有できる人がいないことの切なさでした。気づくと社長のカラオケタイムも終わっていました。

【もんじゃの正解のなさに困惑】

しかし安っぽい感傷に浸っているヒマはないので、もんじゃを混ぜていきます。またもや「もんじゃの食べごろはいつなのか」という問題が頭をよぎりましたが、とりあえず、食べることに。アチチ、アチアチ……。

恥を忍んで、お店の人にひとりで食べてるところの写真を撮ってもらいました。

しょっぱくてジャンクな味がする。溶けたおもち最高! 焦げたところをはがして食べるのも楽しい! しかしひとりだと食べても食べてもなくならないなあ。煮詰まっていくから早く食ベなきゃだけど、アチチ……アチチ……。うーん、正解はよく分からないけど、美味しいからいいってことにしよう。

……と、ほぼ食べ終わったところで隣のテーブルに仕事帰りのOLさん2人組がやってきたのですが、注文の際に衝撃発言が。
「すみません、作り方分からないんですけど、作ってもらうことってできますか?」
「はい、1枚までならいいですよ〜」

うそおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!

私の孤独なもんじゃとの戦いは、一体なんだったというの……。いや、でも土手がうまく作れたことはきっとムダにはならないはず……。いつか誰かにおいしいもんじゃを食べさせるんだ。

帰り際、店員さんに「ひとりでもんじゃ食べにくる人っていますか」と聞いてみたら「全然いますよ!」と答えてくれたので、意外とおひとり様も歓迎みたい。なので、ひとり旅でもぜひ……。そのときには、お店の人に作ってもらうことをオススメします!

孤独度  ★★★★
焦る度 ★★★★★★★★
東京度 ★★★★★★★★

参考リンク=いろは
執筆=御花畑マリコ (c)Pouch