神のような筆致と神のような構成で描かれた、完璧なる絵画。ふつう、展覧会に出されるのはそんな傑作ばかりです。
でも、世の中に出ている絵画の大半はそこまでのものではない。いやむしろ、あまり上手じゃないゆえに、破壊力の強い芸術作品が生まれていないだろうか。
アメリカのボストンにある「バッドアート美術館」は、そんな思いのもと運営されています。バッドアート、つまり「できの悪い美術品」専門の美術館です。
へたくそっぽい、コンセプトが変、色使いが普通じゃない……一流作品として世間に認められることはないけれど、見方によっては称賛せずにいられない、そんな作品をずらり並べた、「バッドアート美術館」。
その始まりは、1994年のこと、ボストンの画商スコット・ウィルソンさんがゴミの中から最初の “バッドアート” を拾ったことがきっかけでした。
以降、リサイクルショップやフリーマーケット、はたまたゴミの中からバッドアートを見つけていくことで、いつしか “バッドアート” コレクションは肥大化。
ウィルソンさんはついに、映画館の地下スペースを利用してバッドアートを展示・公開。それがネット上で話題となり、国際的に注目されるようになったのだそうです。
【どこかがおかしい…でも、好き!】
パッと見た印象は、「なんだかおかしい」。でも眺めているうちにいつしか作品の虜になってしまう、摩訶不思議な魅力を持つバッドアート。
その数々が、この秋冬に日本にやってくるんです。
2018年11月22日から2019年1月14日までの期間、東京・文京区にある東京ドームシティの「Gallery Aamo(ギャラリー アーモ)」にて、「バッドアート美術館展」が開催。54日間、無休で行われます。
【スペシャルサポーターは「しりあがり寿」さん】
ギャラリーに集結するのは、「バッドアート美術館」に収蔵されている800点を超える作品のうちの100点で、すべて日本初公開となる作品。(まあそれはそうかも……)
これだけでも胸がわくわくするのに、スペシャルサポーターに就任したのは漫画家のしりあがり寿さんっ! ヘタウマ(に見える)マンガの巨匠にして、この種のものを鑑賞する達人なのだから、最高の人選すぎるのですが~~~!
今回の展覧会開催へ向けてしりあがりさんはコメントも寄せており、
「芸術は深い。そのあまりの深さにヘタクソと傑作の違いが分からなくなることがあります。でもそんな困惑こそが芸術の楽しみかもしれません」
とのこと。迷作の中から自分だけの傑作を見つけてほしいと、彼ならではのユーモアを交えて訴えています。
【バッドアートの選考基準は?】
ちなみに……下手な絵ならなんでもバッドアートになるというわけではありません。その選考基準は意外と厳しくて、それをクリアして収蔵に至るほどの作品はごく一部とのこと。
バッドアートの条件は
・芸術の名のもとに真剣に創作した本物のアートであること
・コンセプトあるいは完成の時点で何かが間違ってしまっていること
・議論や疑問が起こるものの、結果として興味深く称賛せずにいられない作品であること
の3つだそうです。
……この条件を読んだだけでも、もう魅力しか感じませんよね。1日も早く、バッドアートをこの目で観たいよ~!
参照元:プレスリリース、東京ドームシティ
画像=©2018 Museum Of Bad Art, Inc.
執筆=田端あんじ (c)Pouch
▼ボストンにある「バッドアート美術館」の様子
▼バッドアートが持つ吸引力はすごい
▼スペシャルサポーターのしりあがり寿さん
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