ここ数年続いている、空前の猫ブーム。インターネット上はもちろん、テレビや漫画などでもよく見かけるので、猫についてなんとな~く理解したような気持ちになっているのは、きっとわたしだけではないはずです。

たとえば「猫は夜行性」というのはよく耳にすることですが、なんとそれは間違い(!)とのこと。

こんな猫に対して抱いていた勘違いに気づかせてくれるのが、『猫が幸せならばそれでいい』(小学館)なんです。

【専門知識と猫愛がふんだんに盛り込まれてるっ】

この本は、 “猫目線” で考えられている猫バイブルで、著者は動物行動学者の猫好き獣医さん・入交眞巳(いりまじり まみ)さん。また、挿絵を手がけるのが、人気猫漫画『俺、つしま』の著者・おぷうの兄弟さんということでも注目度の高い本となっています。

出版社から本が送られてきたのでさっそく読んでみたところ……猫に関する「そうだったのか!」が満載でビックリ。

【アノ行動にはそんな気持ちが隠されていたのね】

興味深かったのは、「猫あるある」な行動についての記述。

・野良猫が夜行動するのは夜行性だからではなく「人間が少ないから」
・飼い猫が夜活発になるのは「昼間遊んでもらえないから」かも?
・パソコンの上などに乗ってくるのは「気を引くのにいちばん効果的だと思ってるから」
・膝に乗るのは、飼い主さんを征服したいわけじゃなく「くっついていたい」だけ
・猫が飼い主さんを効率よく起こすことができるのは「常に飼い主さんを観察しているから」

といったことが詳しく書かれていて、心の中で、感心の「へえええええ!!!」が止まらなくなるんです。

【猫と人間って似てるのかも!?】

ほかにも「トイレが苦手」と言ってもそこにはさまざまな理由があったり、猫が大好きな「レーザーポイント遊び」がやり方によっては逆にストレスになったりと、目からウロコな情報がいっぱい。また

・猫にも人間同様に “おふくろの味” がある
・ストレスを感じたとき飲食をすると落ち着く

といった特長からは、猫と人間の親和性も感じられて、猫に対する親近感がよりいっそう高まってしまったのでした。

【しつけで大切なのは「叱る」ことではない】

もうひとつ興味をそそられたのは、猫の学習能力についての記述。

猫は犬よりもしつけをしにくいと思われがちですが、本によれば犬同様に学習能力があるとのこと。学習能力があるということはすなわち、トレーニングすることができるということです。

ただしその際「叱るだけ」では意味がないそう。提唱しているのは

負の罰(いたずらの対象を取り上げてしまうことで行動をやめさせる)と正の強化(代替物をおいて、それを使うたびに褒めてやる)」

という方法。声をあげて叱っても猫はなにがなんだかわからないので「こわい!」「やだ!」と逃げてしまうだけ。しかし目の前からいたずらの対象をなくし、代替物を与えてやれば、「これをつかえばおこられないんだ!」と理解してくれるそうなんです。

さらに使うたびに褒めてあげると「これをつかうとほめてくれるぞ!」と思うようになるので、この方法をうまく取り入れれば自然と猫の行動を誘導できるようになるのではないでしょうか。

【「猫の認知症」についても書かれています】

実は日本の獣医学部では猫についてしっかりとしたカリキュラムが設けられていないそうなのですが、入交さんはアメリカで最先端の動物行動学を学んでいるそう。

専門家としての知識がふんだんに散りばめられている一方、 “愛猫家” ならではの視点も盛り込まれているから、とっても読みやすかったです。

読めば読むほど猫に関する知識が深まるのはもちろん、猫を飼っている人にとっては悩みを解決するための “手引書” としても使える『猫が幸せならばそれでいい』。

お値段は、税抜き1000円。災害に備えて準備しておくべきことや、いつか直面するかもしれない “猫の認知症” についても触れているので、一家に一冊いかがでしょうか。

参考リンク:小学館
撮影・執筆=田端あんじ (c)Pouch