【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、エルトン・ジョンの半生を描いた映画『ロケットマン』(2019年8月23日公開)です。エルトン・ジョンといえば、大ヒット中の映画『ライオン・キング』の楽曲も担当する音楽界のスーパースター! そのエルトンの半生を綴ったのが本作『ロケットマン』です。素晴らしい楽曲の数々に鳥肌!そしてエルトンの生き様に泣いちゃいましたよ~! では物語からいってみます。
【物語】
イギリス郊外で育ったレジナルド・ドワイト少年は、愛のない家庭で孤独をつのらせていました。そんな彼の唯一の希望は音楽。音楽の才能に恵まれていた彼は、国立音楽院に入学しますが、やがてロックに傾倒。
エルトンはバーニー・トービン(ジェイミー・ベル)と出会い、意気投合し、作詞バーニー、作曲エルトンでコンビを組むようになります。彼はレジナルドという本名を捨てて、エルトン・ジョン(タロン・エガートン)として生まれ変わり「ユア・ソング」をきっかけにデビューが決まるのですが……。
【楽曲の素晴らしさが大いに活かされた音楽映画】
エルトン・ジョンといえば稀代のメロディメーカーというとはわかっていたのですが、この映画で改めて凄い人だ!と思いました。
本作には名曲の数々がバンバン登場します。「ユア・ソング」「クロコダイル・ロック」「アイム・スティル・スタンディング」「土曜の夜は僕の生きがい」などがライブ、ミュージカルなどの多彩な手法で描かれ、想像の域を超えた奇抜な衣装の数々も楽しい! 音楽映画としての魅力がスクリーンに広がり、歌唱シーンはワクワクが止まりません!
【孤独なエルトン・ジョンの私生活】
そんな素晴らしい音楽と並行して描かれるのがエルトン・ジョンの軌跡。これがけっこう悲しみに満ちているんですよ。
レジナルド少年時代、両親は不仲で、厳しい父と冷たい母に気を使いながら生活していたレジナルド。結局、両親は離婚し、母と祖母と生活するのですが、母親は自分のことしか考えていない女性。
音楽の才能が認められ「音楽学校を勧められているんだ」と相談しても母親は「ふ~ん」といった態度。この母親の息子に対する態度は本当に冷たくて、彼は可愛がられたことがないんじゃないかと思うくらいぬくもり感ゼロ。だからレジナルドはいつも寂しそうで、可哀そうで、泣けてくるんです……。
【自宅での名曲誕生シーン涙涙……】
レジナルドが青年になり、親友バーニーと出会ってから、彼の人生の扉が開かれます。自宅の居間のピアノで、バーニーが作詞を手掛けた歌の作曲をするエルトン。彼がメロディにのせて歌い始めると、時が止まるんですよ。
バーニーも母親もエルトンのおばあちゃんも曲に聞き入ってしまう。息子にも音楽にも興味ゼロだった母親まで振り向かせたその曲は「ユア・ソング」。気づいたら、私、ボロボロ泣いていました。名曲が生まれる瞬間に立ち会えたような気がして。本作はそんな風にエルトンの数々の楽曲が、彼の人生の節目を表現したり、ミュージカル演出でエンタテイメントとしての盛り上がりにひと役買ったりという役割を担っているのです。
【タロン・エガートンの歌唱力が凄すぎる!】
この映画はエルトン・ジョン自身が製作総指揮をしているので、彼のこれまでの人生における喜び、悲しみ、苦しみは本物。エルトンの歌唱を見ていると「僕には音楽しかないんだ」という心の叫びが聞こえてきて、またもや涙腺が緩くなるという……。
加えてエルトンを演じたタロン・エガートンが本当に素晴らしく、演技力+歌唱力を堪能できます。2019年度の賞レース、主演男優賞候補の台風の目になりそう!
エルトン・ジョンが好きな人はもちろんですが、エルトン・ジョンをあまり知らない人にもオススメ。彼の破滅的な人生を綴りながらもエンタメ度は高く、ミュージカルとしても楽しめるのでぜひ!
執筆:斎藤 香 (c)pouch
『ロケットマン』
(2019年8月23日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:デクスター・フレッチャー
製作総指揮:エルトン・ジョン
出演:タロン・エガ-トン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード、リチャード・マッデン、ジェマ・ジョーンズ
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
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