ここ最近SNSを中心に話題になっている、金田サトさんによる漫画『デッドミート パラドクス(Deadmeat Paradox)』(モーニング KC)。
新感覚のゾンビ漫画で、なんとゾンビのために戦う弁護士が主人公だというのです。
……いやいや、ゾンビのために戦う弁護士って、一体どういうこと……?
私の知っているゾンビは、意思も感情もなく、ただただ人間を貪り食うイメージだったので、設定の時点で驚きます。
編集部にコミックスが届いたので、さっそく読んでみることにしましたよっ。
【あらすじ】
『デッドミート パラドクス』の主人公は、弁護士のゴールド。弟である「ゾンビ」のシルバーと共に、弁護士事務所を営んでいます。
彼らが住むオーランド帝国では、死後30日以内に突如復活する原因不明の状態を「ゾンビ」と呼んでおり、「安い労働力」として扱っており差別しています。また、仕事を奪われた人間たちはゾンビを嫌悪しています。
物語の中心人物は、ゾンビとなった貴族の娘・リリー。
リリーの両親はゾンビ擁護派の貴族で、反ゾンビ派によって殺されおり、莫大な遺産と保険金をリリーが相続する予定でした。しかし、遺産を渡したくない保険会社によってリリーも殺されてしまったのです。
なんとしても両親の敵討ちをしたいリリー。
ゴールドは、リリーへの未払いの保険金を逆手にとって「ゾンビは生きた人間か死人か」を明らかにする裁判を起こすのですが……
果たしてどのような判決が下されるのでしょうか!?
【ゾンビものの新たなジャンルを切り開いてます】
この漫画に出てくるゾンビは、従来のゾンビと全く違っています。
「食べない」「寝ない」「身体が腐らないよう防腐剤が必須」といった特性はあるものの、感情を持ち、話もするんです。
ときおり、暴走状態になる「カデバ」という発作が出るものの、たとえ噛みついても感染することはないし、基本的には襲うことはありません。
「人間にとって脅威でなくなったゾンビ」というのは、ものすごく新鮮!
生きているのか死んでいるのか、まさしくその “はざま” にいるという描写は、これまでのゾンビ作品にあまり見られなかったのではないでしょうか。
【差別について考えさせられる】
ゾンビたちは、人間たちからあからさまな差別を受けています。悪口・陰口は日常茶飯事、使い捨てるがごとく、低賃金で働かされているんです。
また「ゾンビは入店拒否」のお店があったり、列車の中に「ゾンビ専用車両」が設けられていて「生活エリアを明確に分ける」という点に、強い差別を感じます。
虐げられるゾンビの描写は、私たちの日常でも見られる、あるとあらゆる差別が重なって、胸に迫るものがあります。
【逆転劇が爽快! もっと続きが読みたくなる漫画だけど…】
保険金を巡り「ゾンビは生きた人間か死人か」について開かれた裁判。
保険会社側の弁護士による根回しもあり、ゴールドもリリーも苦境に追いやられるのですが……
ラストでは、「ゾンビは生きた人間か死人か」という問いを上手く生かした逆転劇が繰り広げられており、「そう来たか!」と膝を打つ、どんでん返しがたまりません。
読み終わったあとには、爽快な気分になれました!
漫画は1巻完結で、綺麗に終わっているのですが、登場するキャラクターも世界観も魅力的なので、「もっと色んなお話が読みたい!」という思いに駆られます。
【グロくないから安心してね!】
ストーリーの面白さもさることながら、絵も美しく、ゾンビならではのおどろおどろしい描写がないところもポイント。
「ゾンビものはちょっと……」「グロいのは無理」という人でも安心なんです。
いわゆるホラー漫画ではないので、ゾンビが苦手な人にもおすすめですよ!
参照元:講談社コミックプラス
執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:講談社 used with permission.
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