パニックスリラー系の作品の中でよく見かける「終末もの」。地球滅亡のときが迫る中、予想だにしないことが次々起こり人々が右往左往する、というストーリーが定番です。
今回ご紹介する作品も、「終末もの」ですが、。主人公は冴えない中年女性だし、大した事件も起こらないし、ハッキリ言って地味すぎる。なのに……興味をそそられるのはなぜなの?
毎週金曜は各配信サイトで観られるオススメ作品を紹介する日。
今週もよく頑張った……週末はおうちでゴロゴロしながら、Netflixアニメ『キャロルの終末』を観て、カウチポテトになっちゃお〜!
【あらすじ】
「あと7カ月で地球は滅亡します」
謎の惑星が地球にぶつかろうと急接近している終末世界。周囲の人々が欲望を解放し、自由奔放に生きることを選ぶ中、キャロルはどうしていいのかわからず孤立していました。
そんなある日のこと、キャロルは不思議な会社を見つけます。なにをやっているのかわからないその会社では、数十人の人々が「気晴らし」と称して働いていました。
会社の歯車になることに生きがいを見出した人たちを見て、キャロルはようやく自分の居場所を見つけるのです。そしていつしか、キャロルの存在が周囲の人々に影響を与え始めて……?
【ココが見どころ!】
<その1:終末だからって享楽的に生きられない>
この世の終わりを前にして、人々は享楽にふけるようになります。「自由に死ね」を合言葉に、朝からお酒を飲んだり、パーティーをしたり、住宅街をパラグライダーで駆け抜けたり。キャロルの両親に至っては、第3のパートナーと一緒に全裸で生活していました。
しかしキャロルは、みんなのようにはなれません。だって、キャロルの趣味は貯金だし、そういうことに一切興味がないんだもの。
いっちょ快楽に溺れてみるか……と思い立って実践してみても、後悔するだけで心は満たされない。そんなキャロルに共感を抱く人は、案外多いんじゃないかと思うんです。
<その2:「主役ではない人たち」の物語>
本作の主役はキャロルですが、世間一般で言われる「主人公像」には当てはまりません。つつましく地道に生きてきた、ごく普通の人です。
キャロルの会社で働く人たちも皆、普通の人でした。大きな成功を収めているわけでもなく、かと言って、どん底にいるわけでもない。ただひとつ共通していたのは、どこにも行くあてがなく、孤独だったこと。
会社の実態はいまいち謎ですが、そこへいけば「居場所」があり「やること」があります。淡々と日常を過ごすことを選んだ彼らは、私であり、あなたなのかもしれません。
<その3:気づいていないだけで誰かの力になっているのかも>
子どものころから頑固で、自分を曲げられなくて、孤立しがちなキャロル。けれど、そのかたくなさは決して欠点ではないのです。
おそらくキャロルには自覚がないのでしょうが、彼女のこだわりが良い結果を生み、人々の心を動かしていきます。行動力があって社交的で、キャロルとは性格が正反対の姉に対しても、知らず知らずのうちに影響を与えていました。違うからこそ尊敬できるし、勇気をもらえることもある。第4話のエピソード「姉妹」は必見ですよ。
【ぜひ2周してほしい】
1話あたり約30分×全10話で構成される本作。静かな作品で大した事件も起きませんが、優しく温かく不思議な魅力があり、瞑想にも似た癒やしがありました。
キャロルの声もしみじみよく、ずっと聴いていたいし、ずっと観ていたくなります。リミテッドシリーズといわず、20話でも、100話でも、永遠に続いてほしい……!
ちなみに、本作を完走したあとにもう1度見直すと、新たな発見があると思います。第1話から伏線だらけで、全てはつながっているということに気がつくはず。
■今回紹介した作品
Netflixリミテッドシリーズ『キャロルの終末』(原題:Carol & The End of The World)
2023年12月15日より独占配信中
※カウチポテトとは:ソファや寝椅子でくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごすようなライフスタイルのこと。
執筆:田端あんじ (c)Pouch
Photo:COURTESY OF NETFLIX © 2023 Netflix, Inc.
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