[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今週のピックアップは、東直己原作のハードボイルドミステリーの映画化『探偵はBARにいる』です。

探偵役は大泉洋、相棒は松田龍平、謎の女に小雪、ほか西田敏行、田口トモロヲ、高嶋政伸などがはじけた演技を見せた本作。企画した須藤泰司プロデューサーが16年越しの夢を実らせた渾身の北海道映画でもあるのです。

16年前、東直己・箸「ススキノ探偵シリーズ」に出会った須藤プロデューサー。札幌出身の彼のアンテナにひっかかり「ぜひ映画化したい」と思っていたそうですが、問題は主人公。須藤プロデューサーは「絶対に北海道出身の役者にやらせたい」と考えていたそうですが、とはいえイメージにピッタリの北海道出身役者は見つからない。当時、大泉洋は、まだ芸能活動を開始したばかりで、プロデューサーは彼のことを知らず、映画化は夢のままに……。

ところが8年後、「北海道出身者にオススメの番組があるよ」とローカルバラエティ「水曜どうでしょう」をススメられた須藤プロデューサー。このバラエティで大泉洋を知り、「彼でススキノ探偵を!」と再び構想を練りましたが、ここでまた問題勃発!

大泉洋はまだ北海道限定のローカルスター。全国区の人気を得なければ、映画の主演にはできません。しかし、プロデューサーは諦めませんでした。大泉の東京進出をひたすら待ち、そして念願かなって大泉洋、東京進出してブレイク! やっとオファーできるようになった~! と思ったら、大泉が売れっ子過ぎて忙しくなり、今度はスケジュールを待つことに。またもや待って待って、やっとスケジュールがあき、大泉の快諾を得て、映画化がスタートしたというわけです。本当に長い道のりでしたね~。

もちろんロケは北海道・札幌のススキノ。撮影は2月、いちばん寒い時期で、しかもアクションシーン多数という超ハードな現場ゆえ、大泉と松田は常に満身創痍だったそう。

「雪が多い北海道は危ないから、走る人はいませんよ~」という大泉の言葉とは裏腹に、最初から走りっぱなしだわ、雪に埋まるわ、ボコボコにされるわの大泉。彼の命がけ(!?)のアクションシーンは必見です。またススキノに行ったことのある人なら、「あそこが出てる」「ここ知ってる!」というロケ地観光のお楽しみも!

須藤プロデューサーの熱い思いが乗り移ったような熱血アクション&人情&愛がからむ『探偵はBARにいる』。北海道でさく裂するハードボイルドな世界を満喫してくださいね。

(映画ライター=斎藤香

『探偵はBARにいる』
9月10日公開
監督:橋本一
出演:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、田口トモロヲ、波岡一喜、有薗芳記、竹下景子、石橋蓮司、松重豊、高嶋政伸ほか
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会