
(はじめに)
全世界をも震撼させた、あの未曾有の事態からあと1カ月と少しで1年が経とうとしています。
あのとき、すべての日本国民がこれからの被災地が、日本が、どうなるものやと思いあぐねたはず。そして「被災」という言葉が、人ごとではないとあらためて感じたのではないでしょうか。
どんどん過ぎていく日々、さらには多忙な日々のために、あの凄惨な出来事でさえどこか遠い国のことのように感じてしまう人もいるかもしれません。
だからこそ、私たちは現実から目を逸らさず、しっかりと現実をキャッチして受け止めていく必要があります。被災地の今を。
【復興はどこまで進んでいるのか】
津波被害が大きかったエリアの状況を取材するため、師走も差し迫る12月上旬、宮城県気仙沼市、陸前高田、南三陸町の地域を訪れました。
「避難者は体育館などの避難先から仮設住宅への完全移住が完了、不便な生活ながらもなんとか生活ができている。いくつかの港では市場が再開し、街にも復興の兆しが見え始めている。問題は山積みだが、なんとか元に戻りつつある」
そんな情報をニュースなどで耳にし、津波で流されたときの大量の瓦礫などは大方片付いているのではないか、と思っている方もいるかもしれません。
ところが取材のために車で向かった、夜の気仙沼市の繁華街から津波の影響を受けた地域に差し掛かったとき、記者は我が目を疑いました。
【どこまでも広がる漆黒の闇】
夜の気仙沼市。津波の影響を受けなかったエリアは、通常とかわらぬ街の温かな光に包まれていました。内心ホッとするも記者が泊まる予定の宿は、津波の被害にあったエリアの高い丘の上にあるので、そのまま海岸方面へ移動を進めたのです。
海岸エリアへの角を曲がった瞬間、想像以上の光景に息が止まりそうになりました。
それまで闇を照らしていた温かな光など、どこにもありません。すべてが途方もない漆黒の闇に覆われ、車のライトがなければ、何ひとつわからない状態。わずかな光を頼りに、なんとか目を凝らしても、周囲には時折みえる廃屋の影しか見えまえん。
信号はまったく動作しておらず、道はアスファルトが崩れてガタガタで、土ぼこりが舞い上がっています。
少し進むと、ちらほらと真っ黒な民家が見えてくるのですが、窓ガラスが完全に抜け原型さえ留めていない窓枠や、散乱する瓦礫、強い力が加わってひしゃげた鉄の棒など、当時の津波の勢いがどれほどであったのか想像するに容易いのです。どこまでも続く無音の世界。草木が風でなびく音さえもしないのですから。
「住民の営みをすべてを、津波がいともあっさり持っていってしまったのか」
あらためて実感した瞬間、とてつもない恐怖が押し寄せ全身に鳥肌が立ちました。津波が来るわけでもないのに、真っ暗闇の向こうから大波が押し寄せてきているような、そんな錯覚を起こすほどに。
この闇は、すべてを物語るのに十分すぎる。あまりにも悲しい現実でした。
【なぜ、復興が進まないのか】
あれから10カ月近く経つというのに、夜は一筋の光さえも見えないほどに復興が進んでいないエリアがあるのか。
復興計画について気仙沼市に問い合わせたところ、「建物は今後2年間(平成25年3月まで)新築が建てられない決まりがあり、修復できる建物は修復して住むことも可能だが、2年後の復興計画の決定によっては移転を命じられるかもしれない」という。
そのため、わざわざ大金を払ってまで修復して住み続けるのは難しいというのが現状のようです。いつ、また津波がくるかもしれないのですから難しい判断になりそうです。
また、廃墟となった民家やビルなどは、持ち主から取壊しの依頼がない限り市は動くことができないそうですが、昨年12月26日までに依頼があったものについて、現在は順次取壊しているのだそう。そのほかライフラインや道路などの修復は、少しずつ整備されつつあるということでした。
【1日でもいいからボランティアして欲しい】
瓦礫の撤去などは震災当時とは比べ物にならないほど片付いていますが、人手などが足りず片付かない瓦礫が散在している箇所もあります。冬の寒さが厳しくなり、ボランティアの数も減っているそうですが、被災地はまだまだ猫の手も借りたいほどに手伝ってくださる方を必要としています。
被災地では、それぞれのエリアでボランティアの受け入れを行っているので、お時間のあるときに顔を出してみてはいかがでしょう。とあるボランティア団体のスタッフによると「1日でも良いから手伝って欲しい」とのこと。被災地は今も皆さんの助けを必要としています。(つづく)
(取材、写真、文=める)
【南三陸町】
▼何度もメディアに取り上げられた防災センター
ひしゃげた鉄骨がむき出しになったままだ
▼崩壊した低い堤防には「海を汚さないように」という旨の標語が書かれている
この文字を書いた人は元気だろうか
▼防災センターよりも内陸にある建物
アパートだったのだろうか、あまりに悲惨すぎる
▼ようやく運営を再開したガソリンスタンド
▼固い鉄をも、簡単に曲げてしまう力だ
▼建物はひとつもないが、車の通りは激しい
▼津波があったとは思えないほどに穏やかな海
▼浅瀬には土嚢が積んである
▼ホテルの光が向こうに見える。
復興にやってきた作業員やボランティア、そして観光者が宿泊し、空き部屋を探すのに苦労する
【気仙沼】
▼津波被害のあったエリアに新しく建てられた屋台村(昨年11月にオープン)
▼屋台の前に飾ってあったツリー。津波の高さと同じ8メートルの高さがある
ここを一歩出た途端、闇がどこまでも広がっているのだ
【陸前高田】
道に迷いナビを見るも、津波で道が消滅し、どこをどう走っているのかわかりにくい地域もある
元スーパーマーケットの駐車場には、何台もの廃車が置かれたままだ
空高く上がった月が、しんみりと地上を照らしている
きくちめる


















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