[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画の中からおススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのはハワイ王朝のカイウラニ王女を描いた『プリンセス・カイウラニ』です。この名前聞いたことありませんか? ワイキキに同名のホテルがあります。そこは元々王室の領地で、カイウラニが幼少時代を過ごした場所。ホテルに名前がつくほど、彼女はハワイの誇りでもあったのです。

マーク・フォービー監督はハワイ観光の際、カイウラニ王女の写真を見たことがきっかけで本作の製作に着手したそうです。監督自らハワイの歴史とカイウラニの人生をくまなく調べ上げ脚本化。ハワイの人も知らないハワイがこの映画にあるとも言われました。楽園と呼ばれるハワイに、こんな悲劇があったとは驚きです。

映画は、ハワイ先住民の虐殺やクーデターなど、ハワイの血なまぐさい歴史も描いています。そんな中、一息つかせてくれるのは、カイウラニが英国にいた頃のロマンスです。英国人青年との恋愛に「よかった、よかった」と思う暇もなく、ハワイの窮地に立ち上がったカイウラニは、恋人を捨ててハワイを選びます。強い意志と愛国心は彼女を奮い立たせますが、心中は引き裂かれる思いだったでしょう。

「お姫様」なんて美しい響きですが、実際は思い通りにならない厳しい環境で生きているのです。カイウラニは本当に真面目で、まっすぐな性格ゆえに、ハワイを捨てることなどできなかったのですね。23歳という短命でもいまだに語り継がれているのは、彼女がハワイの人々に愛されているからでしょう。

また、映画では描かれていませんが、カイウラニは5歳のとき、なんと日本の山階宮定麿王(当時13歳)との縁談が持ち上がったという裏話もあります。カラカウア王と明治天皇の間で交わされたもので、アメリカの外圧を防ぐための政略結婚でした。

結局この縁談は、定麿王には婚姻が約束された令嬢がいたことで実現しなかったのですが、結婚していたら、この映画の物語もガラリと変わっていたでしょう。そんな繋がりがあったと考えると、記者はカイウラニ王女にミョーに親近感が沸いてしまいました。

ちなみに原題も『Princess Ka’iulani』。しかし、最初は『Barbarian princess』(野蛮なお姫様)だったそうです。彼女が英国や米国で、肌の色が違うからそう呼ばれていたからとのことですが、現地ハワイアンは大反発! 二転三転して、『Princess Ka’iulani』に落ち着いたそうです。米国にしてみれば、自分たちに反発してきたお姫様なのでしょうが『Barbarian princess』じゃ、B級アクション映画みたいじゃないですか。素直に姫の名前がタイトルになってよかった!

夏休み「ハワイ旅行」など計画されている方がいたら、この映画を見て、プリンセスがどんなにハワイを愛していたかを知れば、よりハワイを深く楽しめるかもしれませんよ。

(映画ライター=斎藤 香

『プリンセス・カイウラニ』
2012年7月7日公開
監督・脚本: マーク・フォービー
出演:クオリアンカ・キルヒャー 、バリー・ペッパー、ウィル・パットン、ショーン・エバンス、ジミー・ユィールほか
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