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ドキュメンタリー映画『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』は、世界でもトップクラスのバレエコンクールの舞台裏を描いた作品です。映画ファン&バレエファンの間で話題になったこの映画が、このたびDVDリリースされました。

登場する7人のバレエダンサーの少年少女の中には、コロンビアから単身アメリカに来て修行している少年、両親を亡くしたアフリカの少女もいて、様々な環境、個性の豊かさに驚かされます。

そのなかでも公開時、日本でいちばん話題になったのは日英ハーフの美少女ミコ・フォーガティさん。彼女が注目されたのは、まだ12歳なのに学校に行かずに自宅学習をしながら、バレエにすべてを懸けている姿。そして、いつも彼女に寄り添い厳しく見つめるステージママの存在が印象的だったからです。

映画撮影時12歳だった彼女は現在16歳。映画のあと数々のコンクールで受賞し、今夏、東京でローザンヌ・ガラ公演にも出演しました。そこで、来日していたミコさんに緊急インタビュー! お母様のサトコさんも一緒です。


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16歳になったミコさんは素晴らしいバレリーナに成長中ですが、そもそもバレエに惹かれたのは、お母さんからすすめられたわけではなく、子どもの「まねっこ遊び」から始まったそうです。

「うちはテレビを見る習慣がなく、見るのはいつもDVDで映画、アニメ、ドキュメンタリー。その中にバレエのDVDもあって、見ているうちに自分でもマネして踊るようになり、じゃあバレエをやってみようかということになったのです。そのとき私は、水泳、ピアノ、ヴァイオリン、体操、テニスとたくさんお稽古していたのですが、バレエを始めたら楽しくて……。バレエのレッスンが増えていくと同時にほかのお稽古を次々やめて、バレエ1本に絞るようになりました」

しかし、最初から有名バレエスクールに通っていたわけではないようです。「アメリカって、良いバレエスクールが少ないんですよ」とお母様のサトコさん。

「娘が4歳から通い始めたバレエ教室はお遊戯みたいでした。年齢が上がるにつれて通うバレエスクールの質も上がっていったのですが、それでもロシアやヨーロッパに比べれば全然です。アメリカ人ってあまりバレエに興味ないのですよ」

これは意外です。特にカルフォルニアには良いバレエスクールは少なく、アメリカでバレエを続けるのにいい環境を得るのは難しいそうです。

「でも娘は恵まれています。映画に登場するコーチは、向こうからうちのスタジオでと声かけてくれましたから。娘はそうやっていい環境に導かれてここまで来たのです」

それにしても、12歳で学校をやめてバレエ一筋って相当な決心だと思うのだけれど、これまた意外なことにミコさんは「普通にあることですよ」と。

「バレエだけでなく、スポーツ、音楽、演劇をやっている十代の子は、その道で頑張ると決めたら学校へ行っている時間が惜しいから、自宅学習に切り替える人は多いのです。だから私もそれほど悩むことなく、学校をやめて自宅学習にしました」

12歳で学校をやめるって、日本だとありえないようなパターンですが、アメリカではよくある話だとか……。まさに一芸を磨くためにすべてを懸けることに躊躇がないのですね、アメリカ人って。

そして、映画を見た人がみんなビックリしたミコさんのママ、サトコさんの娘への情熱。「やはり娘を世界的プリマにしたいのだろう」と思っていたけど、実際に話を聞くと少々違い、ステージママ的な厳しさは娘の成長のためのようです。

「もし彼女がバレエをやめて、大学進学のために勉強するといったら、反対はしません。私はバレエから進学へとサポート体制をチェンジするだけ。私も主人もそれほど高望みしていないので、娘がバレリーナになりたいのなら、それを全面的にバックアップして、いい環境を整えてあげることを大切にしているだけなのです」

サトコさんはミコさんのバレエにのめり込んでいるというより、よりよい環境作りにのめり込んでいるのですね。登場するほかのバレリーナのママたちよりも関わり方が深いので、映画では熱血に見えますが、実は母親としては当然のことをしているだけかもしれません。

映画ではバレエダンサーたちが、孤独、怪我、失敗など困難を克服して、みんな頂点を目指しますが、唯一別方向を見ているのは、ミコさんの弟ジュールズくん。ママに命令され、渋々バレエを練習し、コーチにしょっちゅうからかわれ、結局バレエをやめてしまいます。いつもテンパっているバレリーナたちのなかで、唯一の脱力系キャラ。ちなみにミコさんに「ジュールズくんは、いまどうしているの?」と聞いたら「勉強しなくちゃいけないのに、ゲームばかりしていますよ(笑)」と。まあ、普通の14歳はそんな感じだと思いますけどね。

この映画で描かれるバレエ界の裏側と家族関係は、バレエをやっていてもやっていなくても、好きでも好きじゃなくても、共感できる要素がたっぷりつまっています。家族ドラマとバレエの奥深さと厳しさがギュット濃縮された傑作ドキュメンタリー。12歳時代のミコさんの踊りも注目ですよ。

『ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!』
発売元:日本コロムビア/ DVD 5,040 円(税込)
監督: ベス・カーグマン
出演: アラン・ベル、ジュールズ・ジャーヴィス・フォーガテ
ィ、ミケーラ・デ・プリンス、レベッカ・ハウスネット、ジョアン・セバスチャン・ザモーラ、ガヤ・ボマー・イェミニ、ミコ・フォーガティ
(c)First Position Films 2011

(取材、文=斎藤 香)

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