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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは、ドキュメンタリー映画『Maiko ふたたびの白鳥』(2016年2月20日公開)です。

ノルウェー国立バレエ団でアジア人初のプリンシパルに抜擢された日本人バレリーナ、西野麻衣子さんを追いかけた作品。日本人バレリーナの歩む軌跡が、もう本当に感動的なんですよ! 彼女はノルウェーで結婚・出産も経験されており、働く母とバレリーナとの両立についても語っています。

監督は、本作が初の長編ドキュメンタリー作品となる女性、オセ・スベンハイム・ドリブネスさん。

女性にとって興味深い、バレリーナのバックステージ&私生活とは?

【物語】

大阪出身の西野麻衣子さんは、6才からバレエを始めて以来、その魅力に惹きつけられ、中学卒業後の15歳で英国ロイヤルバレエスクールに入学します。その後、19歳でオーディションに合格して、ノルウェー国立バレエ団に入団。現在プリンシパルとして活躍中。
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映画は彼女の過去を振り返りつつ、大阪パートでは西野さんの家族も登場。彼女が尊敬するお母様のインタビューや、家族団らんの様子も映し出されています。

一方、ノルウェーパートでは、プリンシパルとして舞台に立ちながらも妊娠が発覚した様子が映し出されます。しばらくは妊娠を秘密にして舞台に立つ西野さん。でも体はどんどん変化していき、スタッフや仲間にも気づかれるときが来る。

「もう言わなくては……。」打ち明けたあと、彼女のバレエ人生はどうなってしまうのでしょう!
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【バレエという職業を選んだ女性の生き様】

この映画を見るまで、西野麻衣子さんというバレリーナの名前は知らなかったのですが、『Maiko ふたたびの白鳥』を見て、西野麻衣子さんのバレリーナ人生にすっかり熱くなってしまいました。

まず15歳という若さで、たったひとりで英国へ留学したという驚き。彼女の決心は固く、送りだしたご家族は、不安や心配もあったと思いますが、そのときの選択がバレリーナとしての人生を決めたんだなあというのが、この映画を見ているとよくわかります。高校卒業してからじゃ遅い。「今行きたい!」のなら、そのときが行くべき時期なのですね。

映画にも登場する西野さんのお母様は、とても懐の深い、大阪のおかん!という感じで、彼女自身も似ているところがたくさんあると語っています。

「なんでも100%ガッツリしてしまうところ! 母、女性、キャリアウーマン、どの自分も100%輝いていたいんです。そこは母親を見て育ってきたからだと思います」

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西野さんがこの映画のプロモーションでインタビューされているのを何度か見たのですが、大阪出身らしいキレッキレの関西弁で、とても陽気で楽しい人。

バレリーナは遠い存在と言う印象がありますが、西野さんの素顔はとても身近で親しみやすく、彼女の明るいキャラクターもこの映画に映し出されています。

【ママバレリーナとして輝きたい!】

ノルウェー国立バレエ団は、ヨーロッパの優秀なバレリーナが集まるバレエ団。そこで舞台に立つたびに存在感を高め、ついにプリンシパルの座を射止めるのです! プリンシパルとは、バレエ団の頂点の存在。常に主役です、すごい! 

その後、バレエ団の映像・音響の総監督を務めるノルウェー人の恋人と結婚。やがて彼女は子供を授かりますが、なかなか仲間に打ち明けることができません。自分のキャリアはどうなるんだろうという不安もこの映画では描かれています。

でも、日に日に大きくなっていくお腹。限界の時期が来たときにバレエ団に打ち明けます。女性ならみんな、この告白に対して、周囲の人がどんな反応を見せるのか、興味深いでしょう。ほとんどの人が、まずは子供ができたことを祝福しているのが微笑ましかったです。ただ復帰についてはスタッフに「あなたが休むことをチャンスと思う人もいるよ」と正直に言われます。キツイ……。
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でも彼女は出産し、母子ともに健康であることが確信できたとき、いちばん難しいと言われる演目「白鳥の湖」での復帰を決めるのです。かつての輝きどころか「ママバレリーナとして、より輝きたい!」と思うのです。

出産後、体力も筋力も落ちている中での練習や、プリンシパルとしてのプレッシャーはハンパありません。このあたりから感動が止まらない。最後の舞台なんて、鳥肌モンですよ。泣けます!
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バレエに興味ある人はもちろん、自分の生き方に悩んでいる人にもオススメします。西野さんの何があっても前進していく姿、壁を乗り越えていく姿、凄く刺激をもらえますから。そして、北欧好きにも必見。西野さんのご自宅も素敵だし、オペラハウスも美しい。

栄光を手に入れた人のバックステージを見られる貴重なドキュメンタリー。西野麻衣子というバレリーナの生き様は、悩める女性の心に突き刺さるはずですよ。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

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『Maiko ふたたびの白鳥』
(2016年2月20日より、YEBIS GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー)
監督:オセ・スベンハイム・ドリブネス
出演:西野麻衣子
(C)ミモザフィルムズ

▼映画『Maiko ふたたびの白鳥』予告編