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少し前から、台所用品の「激落ちくん」を使うと簡単に歯のホワイトニングが出来る! という話がネット上をにぎわわせているみたい。

「激落ちくん」とは、洗剤を使わずに水だけでいろいろなモノの汚れが落とせる、スポンジみたいな製品なのだけど、「激落ちくんで歯を磨いたら白くなった!」「歯医者に行くとお金もかかるし通院する手間にかかるけど、激落ちくんなら安価でホワイトニングができる」なんていう書き込みがネット上に登場して、それってどうなんだろ? と話題になっている、というわけ。

かくいう記者も、これが本当なら試してみたい! と思ってしまったひとりでありまして、まずは真相を確かめるべく歯科医師に聞いてみたところ……

「 “本気でヤバイ” ことになりかねません。絶対にやめましょう」と恐ろしい回答が!! 安上がりでラッキー♪なんて安易に思っていた記者はあぜん……。

――なぜ激落ちくんでホワイトニングすることが良くないのでしょうか?

歯科医師:「まずなにより、歯を削ってしまうからです。商品の注意書きには『凸凹の面や吸水性のある面には適さない』旨のことが書いてありますが、構造上その両方を持ち合わせている歯には不向きだと考えられます。

また、激落ちくんの素材にはメラミンフォームというものが使われています。この素材の注意点としては、製造工程によってはホルムアルデヒドという物質が残留する場合があり、口に入れた場合の人体への副作用の有無がきちんと解明されていないことです」

――歯が白くなるのはなぜ?

歯科医師:「激落ちくんは“汚れのある部分を削りとる”ことで汚れを落とすものです。これに対し、誤解されがちですが、歯のホワイトニングは歯を削って白くするものではありません。

専門用語で硬さの単位をモース硬度というものがあるですが、歯はモース硬度6〜7前後で、激落ちくんはモース硬度4前後らしいです。この度合いは一般の方には分かりにくい差だと思いますが、例えば大理石はモース硬度3前後なので、激落ちくんの硬さの数値がとても高い事が分かるかと思います。数字的にみれば人間の歯は激落ちくんよりも硬いのですが、人により歯質には個人差があり、歯が割れたり傷ついたりする事があります。

私たち歯科医師は数ミクロンの世界で患者さん一人ひとりの歯を診察し、健康な歯や口の組織に害がないように治療していますので、一般の方が歯を削るということは大変危険です

ふむふむ、なるほど! つまり、「激落ちくん」を人体に使用して安全かどうかはわからないし、私たち一般人が歯の組織を削る事は自分の健康な歯を傷めてしまう可能性が非常に高いので危ない、という事ですね! 

歯科医師:「メラミンフォームの製造工程でホルムアルデヒドが残存する事があるとお話しましたが、これは、シックハウス症候群の原因ともいわれる物質です。アレルギーの自覚がある方は厳禁ですし、自覚症状のない方も注意が必要です。

ただし、大学での研究に基づきメラミンフォームを応用した歯科用品も存在します。メラミンフォームそれ自体が有害な訳ではありません」

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「激落ちくん」のパッケージ裏にある使用上の注意にも、人体や食品に使用してはいけない事、細かい傷が入るおそれがある事など、今回の取材でうかがった内容に近いことがバッチリ明記されてましたよ! 

記者は取材後「激落ちくん」で食器洗いをしてみましたが、汚れがバリバリ落ちてく……うーんさすが……けど、よく考えたらそんなの歯にやっちゃダメだよね! 適当な気持ちで歯をキュッキュ磨いてたらどうなっていたことか……と、ちょっと怖くなってしまった記者でございました! 

(写真・文=小池たらの子)

取材協力:歯科医師 歯学博士 岩崎浩介(イワサキ歯科医院