写真家でパフォーマーのヘイリー・モリス-カフィエロ(Haley Morris-Cafiero)さんは、「Wait Watchers」という社会実験プロジェクトで注目を集めた方。このプロジェクトの写真は『The Watchers』というタイトルで2015年に書籍化され、Amazonなどで販売されています。
一体なぜ、ヘイリーさんの試みがここまで注目を集めたのか。それは、写真のテーマが他に類を見ないものだからというほかありません。
ヘイリーさんの作品は、“人々が「ぽっちゃり体型の人」とすれ違ったら、どういうリアクションをしているか” というテーマで撮影されたものなのです。
【男性からの視線を偶然カメラに収めたことがきっかけ】
「Kickstarter」のプロジェクトページによれば、ぽっちゃり体型のヘイリーさんは、2010年に訪れたアメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアで、見知らぬ男性からじーっと見つめられたといいます。
それはヘイリーさんの近くにいた男性が、女性に写真を撮ってもらっていたときのこと。このときヘイリーさんは、男性が女性からカメラのレンズを向けられていたにもかかわらず、自分をあざ笑うような視線を注いでいたように感じたそう。
その姿は、セルフポートレートを撮るために設置しておいたヘイリーさんのカメラにもばっちり収められていました。
ヘイリーさんは「私の体型についてコメントしている声は聞いたことがあったけれど、それを画像として取り込めるとは思わなかった」と話しており、この出来事がきっかけとなって、「Wait Watchers」を始めたんですって。
【特別なことは行わず「ただそこにいる」】
「Wait Watchers」プロジェクトを行うとき、ヘイリーさんはまず公共の場へカメラを設置します。
あとは電話で誰かと話したりアイスクリームを食べたりと、いたって普通に過ごすだけ。注目を集めるのを好まないため、特に目立つ格好もせず、ただそこにいるんです。
【いろんな種類の「視線」を感じます】
「Wait Watchers」の写真を見るかぎり、周囲の人々がヘイリーさんに向ける視線の種類はひとつではないように思われます。嘲笑するような表情もあれば、「驚き」や「ジャッジ」にもとれる表情があり、また必ずしも否定的ではないものも。
ヘイリーさんへの視線に見えても、そこに写っていないものを見ているかもしれませんし、別のことを考えている場合もあります。
しかしもちろん、無防備な視線を送る人々の胸の中にどんな感情が渦巻いていたのかは、その人にしか分かりません。
【「怒ってやっているわけではない」】
過去には摂食障害に悩まされ、現在は体重増加といった症状も伴う「甲状腺機能低下症」に苦しんでいるというヘイリーさん。
ヘイリーさんは「わたしはこのプロジェクトを、自分の怒りによって行っているわけではない」といいます。そして「この作品は、ただの社会実験であって、扇情主義(故意に聴衆や大衆の感情を煽り、掻き立てるようなやり方)のようなものではない。視線を送ってきた人に、視線を送り返そうと試みている」ともコメント。
この「Wait Watchers」シリーズをめぐって、ネット上ではいくつかの議論が起きているようです。
今回紹介した作品は、ヘイリーさんのホームページやSNSなどで見ることができます。市井の人々がヘイリーさんに投げかける視線から、あなたは何を感じるでしょうか。
参照元:Kickstarter、Haley Morris-Cafiero、Twitter @hmorriscafiero、Instagram @hmorriscafiero、Facebook、Bored Panda、Amazon.com
執筆=田端あんじ (c)Pouch
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