【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回の本音レビューは『ピーターラビット』(2018年5月18日公開)をピックアップ。以前、Pouchでも記事化されていたのでご存じの方も多いでしょう。すでに劇場公開もされ「かわいい!」「モフモフ感がハンパない」「すっごく笑える」と評判は上々のようです。
その一方で「違和感を感じた」という声も。実は私も映画『ピーターラビット』の字幕版を試写で見たとき「こんな風に実写化しちゃってよかったの?」と思ったのです。ではまず物語からいってみましょう。
【物語】
ピーターラビットと仲間たちは、画家のビア(ローラ・バーン)と一緒に田園地帯で仲よく暮らしていました。ピーターたちはお隣に住むマグレガーさん(サム・ニール)宅の畑から野菜を勝手にいただいちゃうのが日課。そんなウサギたちに怒り心頭のマグレガーさん……。
しかし、ある日、マグレガーさんが突然亡くなってしまいます。そのあとに隣の家に住むことになったのは、マグレガーさんの甥トーマス(ドーナル・グリーソン)でした。潔癖症のトーマスとピーターたちの間でバトルが勃発しますが、常にピーターの味方だったビアとトーマスが急接近してしまうのです。
【ピーターラビットは原作でも超絶ヤンチャなウサギだった!?】
ピーターラビットの物語は知らなくても、そのほんわか癒し系っぽいルックスが好きという人は多いと思います。私もそうでした。
でも、そのイメージのまま映画を見に行くとビックリします。本作にゆるふわ可愛いピーターはいません。めっちゃイタズラ好きでヤンチャなウサギなのです。
最初に映画を見たとき、ピーターのイメージが崩れていき、けっこうショックだったのですが、後で調べてわかりました。この映画、設定は現代に変更されていますが、実は原作に忠実なのです。
原作のピーターも、畑を荒らしてマグレガーさんに捕まりそうになったり、スズメたちを蹴散らして走り去ったり、畑で大暴れしていたようです。
【ピーターのヤンチャぶりはコメディにするしかない!】
原作のイメージに合わせると、ドタバタコメディになったのは必然だったのかもしれません。このピーターのキャラを癒し系のホンワカ映画にするのは無理ですからね。ヤンチャなピーターの描写を思い切りよく振り切って描いたのでしょう。
トーマスが隣に引っ越してきてからは、ピーターのヤンチャがよりいっそう激化。彼の家の中でも様々な小道具を使って罠を仕掛けます。そのたびにトーマスは転んだり、階段から落ちたり、てんやわんや。加えて、ピーターと仲間たちは歌ったり踊ったり、ラップも披露したり、芸達者な姿を見せてくれます。
全編ピーターは走りっぱなしで、まさにノンストップコメディ! セリフではなくアクションで笑わせていく演出なので、子供から大人まで幅広い客層にウケるし、国境をも超えるドタバタコメディになっています。世界中で愛されるピーターラビット映画ならではですね。
【字幕で感じた違和感を日本語吹替え版で払拭!】
そんなこんなでピーターのキャラやコメディ演出には納得したものの、字幕版で見ていると、なんとなく違和感が……。しかし、劇場で日本語吹替え版を見たらその違和感は払拭されました。
日本語版のピーターラビットの声は千葉雄大さんが演じているのですが、彼の高めの声がピーターにピッタリで、ピーターの可愛さレベルを上げるほど素晴らしかったのです。字幕版のピーターの声は、申し訳ないけど少々オッサン声で、そこに違和感があったんですね。
加えて千葉くんはテーマソング「I Promise You」も熱唱し、ミュージカルとかやってほしいくらいの上手さ。本作の声の出演でファンが増えるんじゃないかと思います。日本語吹替え版がガッカリというパターンは多いのですが、本作に限っては逆。日本語吹替え版の方がオススメです!
思い切り笑えるコメディが見たい人に最適な映画『ピーターラビット』。黙っていれば可愛いけれど、動き出すと元気すぎるピーターのドタバタ大暴走を楽しんでください。
執筆=斎藤香 (c)Pouch
『ピーターラビット』
(2018年5月18日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ウィル・グラック
出演:ローズ・バーン、ドーナル・グリーソン、サム・ニール、エリザベス・デビッキほか
声の出演:ジェームズ・コーデン、マーゴット・ロビー、デイジー・リドリーほか
日本語吹替え版:千葉雄大(ピーターラビット)
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