それはある金曜日の朝のこと。新宿に向かう満員列車に揺られながら、ふと思った。
ゴチャゴチャした東京から出たい! リフレッシュしたい! 誰にも邪魔されずに、半ば強制的にでもどこか遠くに行く方法はないのかな。
……そうだ、寝台列車に乗ろう。
毎月1のつく日(1日、11日、21日だけ)は「ステキなぼっちの日」です。Pouchでは担当ライターが体を張ってぼっちの限界に挑み、ぼっちの可能性を広げるべく、世の中のさまざまな場所でぼっちでも楽しく過ごせるかどうかを誠心誠意、検証しています!
今回は、女ひとり寝台列車の旅です。
ということで、会社の昼休みにスマホで調べ上げ、JRみどりの窓口へGO! いま定期的に運行している寝台列車は「サンライズ瀬戸・出雲」のみ、とのことでこれにする。
東京駅発・出雲市駅着「サンライズ出雲」のいちばん安いB寝台個室「ソロ」を購入。気になる値段ですが、運賃+特急料金 +寝台料金でしめて21,710円でした。泊まりながら島根県に移動できてこの値段って意外とお得な気がする……!
【男性客ばかりでござる】
夜の22時に東京を出発し、到着時間は朝9時58分。つまり12時間乗車するのですが、車内販売は無し。なので乗車前に水や食べ物を買い込んで、乗り場に向かいます。
ホームへ向かうとほとんど男性客ばかり。女性もチラホラ見かけましたが、ひとりで来ている方は見かけませんでした。
少し心細く感じたものの……寝台列車に乗車した瞬間、全て吹っ飛びました。
動き出していないのに、すでに興奮マックスです! うっひょー! 旅じゃ旅じゃ〜!
【お部屋にパジャマまでついている!】
「ソロ」というお部屋型の寝台には、上段バージョンと下段バージョンの2種類があります。私のお部屋は下段、駅のホームから丸見えでした。
部屋ですが、天井が低いものの、窓が大きいので圧迫感がありません。パジャマ、枕、掛け布団、コンセント、ラジオ(イヤホン必要)、エアコン、鏡、ゴミ袋、スリッパが設置されていました。部屋の明るさも3段階で選べます。
狭いながらも最低限の機能がついているし、身長157センチの私的にはなかなか快適! 部屋に鍵もついているので、安心してトイレやシャワーに移動できます。
ただ、荷物を置くところがほとんどありません。仕方ないので大きめのカバンはドアの入口付近に置き、細々したカバンや着替えなどは足元に置きました。
【都会から離れるためのシェルターみたい】
ベッドに寝っ転がっていると、電車が出発。窓から駅が消え、人混みが消え、大きなビルが見えなくなり、徐々に都会から離れて行きます。
変わりゆく景色を見ていると、だんだん「都会から無事に逃げてきた! 社会からも逃げてきた! 私は自由なのだ!」という謎の興奮でニヤニヤが止まりません。
新幹線でも飛行機でもバスでも感じたことのない、不思議な気持ち。なんだかシェルターで脱出しているようなワクワク感と安心感が寝台列車にはある気がしました。フフフ……寝て起きたら島根県じゃ〜い!
【真っ先にシャワーカードをゲットすべし】
部屋でゆっくり晩酌でもしたいところですが、忘れちゃいけないのがシャワー室と、それを利用するためのシャワーカード(320円)の存在。
サンライズ出雲のシャワー室を利用するには、現金ではダメで、シャワーカードの購入が必要。しかし数に限りがあって売り切れてしまう可能性もあるのです。私は無事にゲットしましたが、出発して1時間後には売り切れになっていました。
【初体験!ゆれる電車内のシャワー】
シャワールームは思いのほか広く、リンスインシャンプーとボディーソープがついています。シャワーのお湯もずっと温かいし水圧も強いです。
しかし、シャワーの水が出るのは6分限定なので、「スタート」と「ストップ」を使いこなし、揺れる電車に耐えながら全身を洗い流します。ちなみに、タオルはないので自分で用意する必要あり!
シャワーが終わったら、脱衣所にある「洗浄ボタン」を押さないといけません。何が起きるかわからず、ポチッと押して見ると……
自動的にシャワー室の掃除が始まり、脱衣所の床から大量の風がブワワァアアッ!と吹きだし、濡れた床を乾かしてくれます。正直、ちょっと怖かったです。
ちなみにドライヤー(無料)もついていますが、死ぬほど風量が弱かったヨ。
【朝起きたら知らないおじさんが見ている】
電気を消すと、室内は月明かりのみが照らす幻想的な世界に。電車に揺られながら月をながめつつ寝る。こんな初体験にうっとりした私はカーテンも閉めずにそのまま爆睡。きっと朝起きたら、大自然が広がっているのであろう……
しかし、朝起きたら、知らないオジサンが窓からじーっとこっち見ているではありませんか。なんでも岡山駅では10分の停車時間があり、ホームで買い物などができるそうです。でもそれはホームから10分のあいだ私の部屋と私の寝顔がフルオープンでさらされるということ(カーテンを開けている場合)。速攻でカーテンを閉じました。
【ラウンジで色んな旅人と出会う】
サンライズ出雲には「ラウンジ」という、テーブル、机、自販機のある自由空間があります。テーブルとイスは全て窓側に向いて設置されているので、全席から景色を楽しむことができます。
個室にいると周りの声があまり聞こえてこないけど、ラウンジに行くといろんな人に出会えるのも新鮮で楽しい。
娘の結婚式に出ると言っていた老夫婦、電車撮影を語り合う男性グループ、たこ焼きをハフハフして食べる外国人、駅弁を交換しながら食べる夫婦、などなど。
流れ行く景色とともに、こんな人が乗っていたのか〜と乗客の様子も楽しんでいると、あっという間に12時間が過ぎて行きました。
【12時間乗っても飽きない!むしろ足りない!】
島根につくと「やっとついた〜!」ではなく、「もう終わりなの?」と寂しい気持ちでいっぱいに。あんなに長時間移動していたのに、ちっとも飽きないのが不思議でした。
この後、出雲大社で神主さんからパワースポットを教えてもらったり、ワイン飲み放題に参加したりと旅行を楽しんだのですが、それはまた別の機会にお伝えします。
【総括:寝台列車=タイムスリップ】
寝台列車は年々減っています。飛行機や新幹線と比べると時間が大幅にかかる、長距離バスと比べると料金が大幅に高い、というのが要因になっているそう。
しかし、こんなに移動時間を充実して楽しく過ごせる乗り物が他にあるのかなと。そして寝て起きると全く違う世界にいる感覚は、タイムスリップのようでもありました。
疲れきって「どこか遠くへ行きたいな…」なんて思ったときには、寝台列車がいいかもしれない。12時間、全てを寝台列車にまかせて休憩すれば、あっという間に別世界についちゃうのだから。心と体の休憩に寝台列車、おすすめです。
孤独度:★
快適度:★★★★★★
オススメ度:★★★★★★
*おまけ*
ふたたびサンライズ出雲で東京に戻りましたが、東京に帰る時のほうが窓越しに人と目があう率が高くて、常にカーテン閉めっぱなしでした。
参考リンク:JRおでかけネット
撮影・執筆=百村モモ (c)Pouch
▼ちなみに寝床の広さはこんな感じでした。女性はギリ平気って感じです
▼トイレや洗面台は新幹線と変わらない環境でした。洗面台にはコンセントを繋ぐ部分もあったよ
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