親友同士のイエスとブッダが東京・立川の安アパートでルームシェア、下界でのバカンスを満喫するギャグ漫画『聖☆おにいさん』

2018年秋に動画サービス「ピッコマTV」で実写ドラマ化されることが決定し、イエスを松山ケンイチさんが、ブッダを染谷将太さんが演じること。そして製作総指揮を山田孝之さんが、監督・脚本を『勇者ヨシヒコ』シリーズなどで知られる福田雄一さんが務めることでも、大きな話題となっています。

ドラマの公開にあたってもう1度読み返してみようとAmazonを検索していたら……目に飛び込んできたのは、『聖♡尼さん』(春秋社)というタイトルの本。

【リアル『聖☆おにいさん』やないか】

表紙には頭を丸めた尼さんと十字架を首から下げたクリスチャンの男性が描かれていて、副題は『「クリスチャン」と「僧職女子」が結婚したら。』

異教徒同士の同居って、これ完全にリアル『聖☆おにいさん』じゃあないですか~~~! しかも『聖☆おにいさん』著者の中村光さんも推薦しとる~~~!

【尼さん×クリスチャンカップルは2人とも「芸人さん」】

あまりに興味を惹かれたので、さっそく購入。『聖☆おにいさん』のイメージを引っ張りすぎて初めは漫画と勘違いしちゃったけれど、『聖♡尼さん』はエッセイでした。そして執筆しているのは、尼さんで落語家としても活躍している、露の団姫(つゆの まるこ)さんです。

団姫さんの夫は、クリスチャンで太神楽曲芸師(だいかぐらきょくげいし)の豊来家大治朗(ほうらいや だいじろう)さん。牧師さんではなく、27歳のときに自ら教会の門を叩いて洗礼を受けた、キリスト教徒です。

【神様・仏様は「親」のような存在だから…】

芸人として初対面を果たしたという2人の出会いは実に運命的で、信仰する宗教はお互い異なるけれど、信仰があったからこそどんどん仲が深まっていったことがわかるところにグッときます。

「対立するのではなく、共存しあう。キリスト教の “親” にあたるのがイエス様で、仏教の “親” にあたるのが仏様と考えたなら、みんな親が違って当たり前。結婚したら互いの親を大事にするように、お互いの神様と仏様を大切にしたらいい」

この発想はまさに、目からウロコでした。ちなみにこの “目からウロコ” って、キリスト教が由来とされているようですよ。

【キリスト教と仏教のことがよくわかる!】

エッセイには異教徒同士の日々の生活はもちろん、キリスト教と仏教についてわかりやすく説明したコラムも掲載されていて( “目からウロコ” の話はコラムに書かれています)、読むだけで宗教という “日本人の多くがあやふやにとらえがちなもの” に対する理解も深まっていくようです。

出産や子育てに関してもユーモアを交えて書かれていて、読み終わるのがあっという間。

なによりひとつひとつのお話の長さがちょうどいいから、普段あまり本を読まない人でも、ストレスなく読み進められるのではないでしょうか。落語家だけに、毎回ちゃんとオチをつけている点も見事!

【発達障害についてもよくわかる!】

そしてこの本にはもうひとつ、大きな “読みどころ” があるんです。

それは、夫・大治朗さんが抱える発達障害についてのくだり。結婚前は「マイペースな人だな」「変わった人だな」程度だったものの、結婚して共に暮らすようになってから「性格の問題ではないかも」と、団姫さんは気がついたのだといいます。

集中力がなく、人の話を聞いたり理解したりすることができず、その結果信頼を無くして、仕事の依頼が来なくなってしまう……。

あまりに大変で一時は離婚も考えたという団姫さんでしたが、結婚生活最大のピンチを救ってくれたのもやはり宗教「人を変えることは難しい。まずは自分が変わりましょう」という仏教の教えによって、危機を乗り越えられたといいます。

【人間関係に悩んでいる人は読んでみるといいかも】

読み終わって気がついたのは、宗教は人に「生きやすい環境」を作りだす手助けをしてくれるのだということ。実は宗教に対してちょっぴり偏見もあったのですが、自分は何も知らなかっただけなのだと実感しました。

巻末には夫の大治朗さんが書いた「終わりに」というコラムも収録されているのですが、こちらも必読。

宗教についてだけでなく、人が誰かと一緒に生きていくうえで大切なことを押しつけがましくなく教えてくれる1冊だと思うので、イエスとブッダにもおススメしたくなる本でした。人間関係に悩んでいる人も、良いヒントをもらえるかもしれませんよ~!

参考リンク:春秋社
撮影・執筆=田端あんじ (c)Pouch