その地方独特の方言のなかには、標準語には訳せないような微妙なニュアンスを持つ言葉もあります。
過去にPouchでは長野県の方言「おえ〜」についてご紹介しましたが、今回ご紹介するのはある関西弁。
Pouch編集部の百村モモ(長野県出身)は、関西人が使うその言葉を初めて聞いたとき「めっちゃ便利じゃん!」と思ったのだとか。
その言葉とは……「知らんけど」。
【関西人がよく使う「知らんけど」】
「知らんけど」を耳にしたのは、大阪出身の友人たちと食事をしたとき。友人たちの会話はボケとツッコミのようなノリでテンポがよく、笑いの絶えないものだったそう。
トークの最後に「知らんけど」が登場すると、みんなが「知らんのかい!」とツッコミを入れ、ガハハハと笑って会話がひと区切り。そしてまた別の話題へ……という印象だったそう。
【「知らんけど」のニュアンスとは】
大阪人によると「知らんけど」には2つの意味合いがあるとのこと。
1.責任回避的な意味で使う。
「人から聞いた話」や「私的な意見」など、あいまいな情報を伝えるときに使う。
2.照れ隠し的な要素
真面目な話や知的な発言をしたあと、照れ隠しでおちゃめに会話を締めるために使う。
……とはいっても、関西ならではの空気や会話の流れで使うタイミングが決まるので、定義するのは難しいみたい。
【「知らんけど」は無責任?】
ちなみに上記の友人は、関西出身者以外との会話で「知らんけど」を使ったところ「知らないなら言わないで! 無責任!」と怒られたことがあるそう。たしかに、馴染みのない人にとっては、突き放されたように感じてびっくりしてしまうのかも……。
私の夫は関西人で「知らんけど」が会話の中に出てくることが多いのですが、個人的には発言を少し冗談ぽく和らげる言葉のように感じられ、悪気のある言葉だとは感じないんですよね。
【便利な言葉「知らんけど」】
たとえば、この前も夫とこんなやり取りがありました。
「暑いねー」
「こりゃ、今日も夕立が来るらしいで……知らんけど」
この場合「知らんけど」を入れることで「でも確実な情報ではないよ、降るかもしれないし、降らないかもしれないよ」という長い言葉を省略できていると思うのです。この他にも
「ここヨーロッパの田舎みたいな風景やな~。知らんけど」
「知らんのかい!」
といった感じで「知らんけど」はオチとして使うこともできるので、関西らしい、テンポの良い会話のキャッチボールを成り立たせるためのツールなのかな、と思っています。
関西人の会話で、よく出てくる「知らんけど」。すでに関西人の体には、しみついている便利な言葉なのかもしれませんね。
執筆:信濃タオ
Photo:(c)Pouch
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