いま、命の最前線で懸命に働く医療関係者を応援すべく、医療がテーマの名作映画を数回にわたってピックアップしていきます。

第3回目はロビン・ウィリアムズ主演映画『パッチ・アダムス』(1998年)です。『レナードの朝』に続いてまたもやロビン・ウィリアムズ作品! 本作は実話をベースで、パッチ・アダムスは実在する医者。今回、久しぶりにこの映画を再見して「いまこそこういう医者が必要なのではないか!」と思いました。では物語から。

【物語】

ハンター・アダムス(ロビン・ウィリアムズ)は、自殺未遂の果てに入院することになりましたが、心を病んだ患者仲間を笑わせながら生活するうちに、笑顔が増えることでみんなの幸福感が増していくことに気づきます。彼は入院患者たちに「パッチ(傷を治す)」というあだ名をつけられ、医者になることを決意。のちに医大生になります。たびたび病院に潜入しては「笑いの療法」といって、患者たちを笑わせて人気者になっていくパッチ。しかし、医者のライセンスのない彼が、病院で患者に接することに大学側は怒り、パッチは放校処分になってしまうのです。

【パッチの「笑いの療法」が患者を救う】

落ち込んだり、モヤモヤしているときでも、笑うとちょっと気持ちが和らぎますよね。それと同じように、パッチは自分が入院したとき、笑いがもたらす効果に気づくのです。なぜなら、パッチと同室の患者は、突然奇声を発して衝動的な暴力行為を起こすような乱暴な患者でしたが、パッチがジョークで彼を笑わせると良い笑顔を見せるようになり、暴力行為を起こさなくなっていったから。

そのことをきっかけに「笑いは人を救う」ことに気づいたパッチ。強い薬を摂取しなくても、病室に閉じ込めておかなくても、笑うことで心が穏やかになり、楽しい気持ちを継続させることができるのです。

心の病の良薬は「笑い」とそこから生まれる「幸福感」であることをパッチは教えてくれるのです。

【映画全体に散りばめられた名言の数々】

とはいえ、パッチ流の笑い療法はとんとん拍子に進みません。学長はパッチのやり方に理解を示すものの、ルールを無視して自己流を貫くパッチを心よく思わない人物もいました。そんな人達に向けてパッチはこう語ります。

「人はみんないずれ死ぬ。医者の務めは患者の健康を高めることだ。死を遅らせるのではなく、質の高い生を与えることなんだ」

このシーンは胸がジーンとしました。こういうことが言えるお医者さんが実在するなんて、なんて素晴らしいのでしょう。また権威主義の医者に対しては「人を助けるのが医者ではないか。いつから医者はそんな偉い職業になったんだ」とも言っています。患者から「先生、先生」と言われるお医者さんは、人の命を救う素晴らしい職業ですが、パッチにしてみれば、患者の命を救うのは医者として当たり前のことであり、偉い行為ではない。患者がずっと笑顔でいられることが何よりの喜びなのです。

【ロビン・ウィリアムズの名演が胸を打つ】

『レナードの朝』でも名演を見せたロビン・ウィリアムズですが、『パッチ・アダムズ』も素晴らしいです。どちらかと言えば、本作の方がロビン・ウィリアムズらしさがより突出していると思います。ロビン・ウィリアムズといえばマシンガントークが魅力のひとつ。

本作でもジョークを連発して病院は笑いに包まれますが、彼にはどこか陰があるんですよね。根っから太陽みたいに明るい人ではない。そこが心を病んで入院していた繊細なパッチの本質と重なり「この役を演じきれるのはロビン・ウィリアムズしかいない!」と思うのです。

「居場所のない人を助けたい」「心が苦しい人を救いたい」パッチの医師としての信念は、思いやりの心が基本です。「こういうお医者さんに出会いたい!」。この映画を観たあとは必ずそう思いますよ。まさに名医です!

執筆:斎藤 香(c)Pouch

『パッチ・アダムス』
(発売中/Blu-ray: 1,886 円+税/NBCユニバーサル・エンターテイメント)
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