【最新公開シネマ批評】

映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのはマーベル・スタジオの最新作『エターナルズ』(2021年11月5日公開)です。『アベンジャーズ/エンドゲーム』のその後を描く世界で、マーベル・シネマティック・ユニバースの第26作目。

アベンジャーズに負けない特殊能力を持ったヒーローたち10名が大活躍します。

演出は、2020年度、『ノマドランド』でアカデミー賞監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督! ドキュメンタリータッチで人生の深遠を描いたジャオ監督が、ザ・エンタテインメントな作品に挑戦!

正直ツッコミどころはあるものの、見ごたえはバッチリ! ではご紹介しましょう。

【物語】

アベンジャーズとサノスの壮絶な闘いの結果、再び地球に危機が訪れます。でもアベンジャーズはもういません。しかし、7000年にわたり、地球を見守ってきた10人の守護神が立ち上がります。その名はエターナルズ。

人間の姿で別々に暮らしていた彼らが再び結集。一度は倒したはずのディヴィアンツがより力を強めて出現してきた! 果たしてエターナルズは人類を守れるのでしょうか。

【10名の個性を特殊能力で見分けていく】

新しいヒーローの誕生にワクワクしましたが、やはり『アベンジャーズ』とはまったく違うアプローチで仕掛けてきました!

『アベンジャーズ』シリーズは、キャストみんながハリウッドで主演映画が作られるレベルの大スター揃いですが、本作のエターナルズの中で、誰もが知っている大スターはアンジェリーナ・ジョリーだけ。

それだけに、登場人物を見分けるためのエピソードは重要で、そこはスピーディに見せていきます。

冒頭からエターナルズが各自の武器を駆使して登場。観客にキャラを印象づける演出をしているので「これからこの10名が地球を守るために闘ってくれるのね!」とわかるし、彼らのボスも登場するので、エターナルズの役割も理解できます。そこから闘いはスタートするのです。

【クロエ・ジャオならではの世界】

とはいえ、冒頭のキレのいいアクションシーンから一転、本作は10名が結集されるまでのドラマとディヴィアンツとの攻防を見せながら、彼らが見守ってきた人類の歴史や犯した間違いなども描写していきます。

広島が原爆で焼け野原になったシーンなど私たちにとっては印象的です。文明や技術革新が地球に何をもたらしたかをエンタティメントを通して描いていく。

そしてエターナルズは人間の行いを善悪問わず見守るだけで手を出さなかった、それはなぜか……。そこに後悔の念を抱く者もいたりするわけです。このドラマ性は、クロエ・ジャオ作品ならではの展開なのかと思いました。

【アンジーが白目になったときは危険!】

それぞれの武器を駆使してディヴィアンツと闘う場面はワクワクしたし、面白かったのですが、個人的にはエターナルズの中心人物セルシ(ジェンマ・チャン)の存在感が薄いのが気になりました。

彼女は、エターナルズの母親的なエイジャック(サルマ・ハエック)の跡継ぎみたいな存在で、重要な人物なのですが、ヒロインとしてのカリスマ性や強さを感じなくて(すみません!)。そう、強さを感じないというのが、私の中では後半の大切なシーンに繋がってしまって、正直、彼女の活躍にカタルシスを感じられませんでした……。

私としては、アンジーが演じたセナのメンタルの弱さに興味がありましたね。

彼女は、悪に心を乗っ取られる瞬間がたびたびあり、いきなりエターナルズを攻撃するので、けっこうサスペンスフルな存在でしたよ。セナことアンジーが白目になったときは要注意です!

【お気に入りキャラを探して!】

映画を観た人は、それぞれお気に入りキャラができることと思います。少女のまま誕生し、成長できないスプライト(リア・マクヒュー)の切なさにも私はキュンとしました。

彼女はエターナルズのあるメンバーに片思いしているのですが、ずっと少女のままなので告白もできずに悩んでいるんですよ~。

劇中、エターナルズの使命に関する説明も多いのですが、キャラクターの魅力にハマれば、彼らの活躍を楽しめると思います。エンドロールの後に出てくる映像では「続編もあり?」の予感。まずはエターナルズの世界を大いに楽しんでください。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

エターナルズ
(2021年11月5日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:クロエ・ジャオ(『ノマドランド』他)
出演:ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、サルマ・ハエック、マ・ドンソク、キット・ハリントンほか
(c)Marvel Studios 2021