【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、少々ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、2021年カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した衝撃的なスリラー映画『TITANEチタン』(2022年4月1日公開)です。頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたヒロインが辿る数奇な運命を描いているのですが、最近観た中でいちばん驚き、衝撃を受けた作品です。

では、物語からいってみましょう。

【物語】

少女時代、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートを埋め込むという治療を受けたアレクシア(アガト・ルセルさん)は、
モーターショーで踊るセクシーなダンサー。そんな彼女には衝動的に人を殺してしまうシリアルキラーの一面がありました。

罪から逃れられなくなったとき、中年の消防士ヴァンサン(ヴァンサン・ランドンさん)と出会います。アレクシアは男のふりをして、10年前に行方不明になったヴァンサンの息子の身代わりになるのですが……。

【少女時代から問題児?】

とにかくエキセントリックで何を考えているのかわからない、ぶっ飛んだヒロインのアレクシアがスゴイです。 彼女の過激な行動の数々は、少女時代に頭蓋骨に埋め込まれたチタンの影響なのでしょうか。いやいや、そうとも言えない感じなんですよ。というのは、冒頭に描かれるチタンを埋め込まれる前の少女時代から、彼女は強烈だからです。

少女時代のアレクシアは父の車で出かけた際、後部座席で、音楽を聴きながら運転する父の邪魔をするように口から不快な音を発します。音楽のボリュームを上げられて、音がかき消されると、今度は父の運転席を後ろからガンガン激しく蹴り始めるのです。

子どもらしいイタズラという無邪気な様子はなく、かなりの問題児で難しい子ども、という印象。最初から不穏な空気を漂わせる少女だったのです。

【彼女が愛するのは車だけ!】

大人の女性になったアレクシアは、モーターショーでセクシーなダンスを踊り、多くのファンを持つ人気者に。しかしそんな裏では、性的な興味で迫ってくる人たちを傷つけ、殺していくシリアルキラーになっていきます。

「愛したり愛されたりできない女性なのか」と思ったら、なんと自動車に性的興奮を覚えるという驚きの展開。それも車と愛し合い、妊娠してしまうのです! 性的指向は、脳のチタンの影響を大いに受けているのかもしれません。

【恩人の息子として第2の人生…妊婦なのに?】

人間より車に惹かれるアレクシアは罪を重ねて指名手配されますが、逃亡中に出会ったのが消防士のヴァンサン。ここから物語は急展開していきます。

息子を失った喪失感をアレクシアで補おうとするヴァンサンと、息子の身代わりになるアレクシア。

でも、もちろん妊婦であることがバレたら大変。アレクシアのお腹はどんどん大きくなり、ときどき破水してガソリンのような黒いオイルが体から流れてくるんですよ……もうめちゃくちゃ怖い。もはや妊婦さんの幸福感など皆無。

チタンにボディをどんどん侵食されていく彼女がどうなっちゃうの!? 心はザワザワしっぱなしです。

【ヴァンサンの偽りの息子になったアレクシアに変化が】

そんなこんなでアレクシアの毎日は命がけなのですが、彼女に変化も見られます。ヴァンサンと生活を始めて、穏やかな表情や弱みを見せたりするんです。

誰にも理解されず孤独に生きてきた彼女が、偽りの関係とはいえ親の愛情を感じたのかな、と。嘘で繋がる関係は危なっかしいけれど、彼女はこの関係を維持したかったかもしれません。

妊婦のアレクシアがどうなるのか? 出産するのかしないのか。するとしたら産まれている子どもは? 彼女の運命はぜひ映画館で確かめていただきたい。とにかく、刺激的な映画を観たい、想像を絶する世界をスクリーンで観たいと言う人にオススメ

映画ライターという仕事柄、たくさんの映画を観てきましたが、鋭利な刃物のような作品なので、1度見たら忘れられない映画になる可能性大です。

執筆:斎藤香(c)Pouch

『TITANEチタン』
(2022年4月1日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:ジュリア・デュクルノー
出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ガランス・マリリエールほか
© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020