【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、『キャメラを止めるな!』(2022年7月15日公開)。なんだか聞いたことある名前と思ったら、2018年に一世を風靡した傑作コメディ『カメラを止めるな!』が海を超えてフランスでリメイクされたものでした。

監督もキャストも全員無名ながら、その面白さがクチコミで日本全国を駆け巡り、興収31億円を突破した傑作コメディ映画『カメラを止めるな!』のフランス版リメイク、いったいどんな映画になったのでしょうか? では物語から。

※『カメラを止めるな!』のネタバレを少々含みます。

【物語】

日本で大ヒットした映画のリメイクを、カメラ1台で30分間ワンカット撮影をする仕事の依頼を受けた映画監督のレミー(ロマン・デュリスさん)。企業の宣伝ビデオの仕事ばかりでクサクサしていた彼とはいえ、あまりの無茶振りに断ろうとしていました。

しかし、へアーメイクの妻(ベレニス・ベジョさん)に「チャンスよ」と勧められた彼は「映画監督志望の娘にいいところを見せられるかも」と、引き受けることに。ところが撮影前からトラブル連発で……?

【『カメ止め』のあの女優も登場!】

ひと足お先に試写で見せていただきましたが、面白かった〜!

監督は、『アーティスト』で米国アカデミー賞5冠に輝いたミシェル・アザナヴィシウス監督。そして、完全なるフランス映画なので、日本版からかなり変わるだろうと思っていました。しかし、“映画『カメラを止めるな!』をフランスでリメイクする” という違いはあるものの、想像以上にオリジナルに忠実です。

劇中で話を持ち込んだ日本側のプロデューサー、マダム・マツダ役は、日本版にも登場したおかっぱ頭で豪快に笑う小柄な女優・竹原芳子さん。フランス版でも「やってくれますかぁ〜」と強引で豪快で憎めないキャラとして登場し、現場をかき回していて、最高でした!

【フランスのドタバタコメディとの相性の良さ】

映画監督のレミーが、主演俳優のワガママに振り回され、プロデューサーの無理難題に頭を抱えながらも、撮影現場で奔走する姿は「そうそう、これこれ!」と『カメ止め』が懐かしくなりました。

と同時に、けっこう忠実なリメイクなのに、違和感がないことに驚き! フランスは濃厚なラブストーリーや映像や美術、ファッションが美しくおしゃれな作品が多いイメージがありますが、実はコメディ大国でドタバタコメディも多く、だからこそ『カメ止め』の笑いへの理解が深かったのかなと思いました。

【みんな、めちゃくちゃよく喋る】

フランス版の『キャメ止め』のキャラクターたちは表現がド派手。監督・レミーのキャラもオリジナルの監督よりも、感情の振り幅が激しくなっています。

その違いについて、アザナヴィシウス監督は、

「日本文化の驚く点は、多くのことをあえて言葉にせずに場面を素早く展開していくこと。フランスは変化した状況を説明せずに放置することにフラストレーションを感じてしまうので、とにかくよく喋るんだ」

と公式インタビューで語っており、納得! たしかに何か起こるたびに、みんな喋り倒していたし、特にレミー監督はよくキレていましたね〜。

【海を超えて、ひとつの作品で繋がる映画愛】

『カメラを止めるな!』は劇中劇を前半に、その裏側を後半で見せる演出で「こんな偶然があったんだ」とか、あのときカメラが地面を写していたのはそういう理由だったんだとか、同じ出来事でも視点を変えて裏側を見せたら、めちゃくちゃ面白い!という作品でした。それと同時に、映画の撮影スタッフが、どんなに大変な目にあっても決して諦めず、トラブルを乗り越えて撮影を完走する姿が感動的な作品でもあったのです。

その『カメ止め』の映画愛がフランス版にもしっかり溢れているのが、うれしかった!

海を超えて日仏で繋がる映画愛を見た気がしました。アナザヴィシウス監督は、隅々まできっちり『カメ止め』の魅力を詰め込んでいて、さすがです! ぜひ『カメラを止めるな!』と見比べてみてください。

文:斎藤 香 (C)Pouch
Photo:(C)2021 – GETAWAY FILMS – LA CLASSE AMERICAINE -SK GLOBAL ENTERTAINMENT – FRANCE 2 CINÉMA – GAGA CORPORATION

キャメラを止めるな!
(2022年7月15日より、全国ロードショー)
監督:ミシェル・アザナヴィシウス『アーティスト』
出演:ロマン・デュリス『タイピスト!』 ベレニス・ベジョ『アーティスト』 竹原芳子『カメラを止めるな!』