【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、嵐の二宮和也主演映画『TANG タング』(2022年8月11日公開)。妻に愛想を尽かされた男が、ポンコツロボットの「タング」と共に冒険の旅に出るというファンタジー映画です。試写で見せていただきましたが、ニノファンが大喜びできる感動作でした! では物語から。
【物語】
ゲームばかりして仕事をしない健(二宮和也さん)は、妻の絵美(満島ひかりさん)に愛想を尽かされ「出て行って!」と家を追い出されてしまいます。そんな彼が自宅の庭で見つけたのが、いまいち冴えない古びたロボットのタング。
最初はタングを捨てる気でいましたが、新しいロボットに交換して絵美を喜ばせることに。でもタングは規格外のロボットだったため、その目標は叶いません……。学習能力があるものの、エネルギーになる液体が足りないみたいです。
しかし、タングに懐かれてしまい、修理できる人を探す旅に出ることになるのです。
【ニノとタングの可愛いバディっぷりに癒される!】
とにかくニノとタングのバディぶりが最高、そして可愛い!
健が家を追い出されたとき、目の前にいたのはタング。ずっと「健!」と言ってトコトコついてくるタングに、最初は「なんだコイツ」と冷たい健。でも、タングは友達だと思っているから「健〜」と、ずっと離れないんですよ。
あるとき、タングは落ちていた100円を拾って健のためにコーヒーを買います。ただ歩き方がぎこちなくって、健に渡すころにはコーヒーがほとんどこぼれちゃっていました……。そのとき健は、タングの自分に対する思いやりと信頼に心動かされるのです。
それまで何をやってもうまくいかないから、誰も自分に期待などしていないと思い込んでいたのに、タングは違った。健に全幅の信頼があり、自分も役に立ちたいと思っているのです。
それに気づいた健は「タングのために頑張ってみようかな」と、ちゃんと向き合おうとします。
【タングを修理できる人を探す旅】
そして、この映画のもうひとつのポイントは「人との出会い」。
健とタングは、修理できる人を求めてさまざまな場所に向かいます。行く先々で出会う人はいい人もいれば、タングを狙う悪人も。でも、健はトラブルに見舞われても諦めずに前へと進んでいく……。それまで引きこもりでやる気ゼロだったのに、タングと出会って変わっていく健。
これまた旅先で出会う人々が個性的でいいんですよ〜。
序盤に健たちが訪ねるのは、ロボットやAIに詳しいけど、究極のナルシスト青年(京本大我さん/SixSTONES)、中国在住のロボット歴史学者の大槻(奈緒さん)。
しかし、タングは悪人二人組(山内健司さん・濱家隆一さん/かまいたち)に誘拐されてしまいます!
とはいえ、悪人を演じるかまいたちの2人の芝居が、いつもの彼らのノリを活かしたコミカルなものだったので、いい意味で全然怖くなく、楽しくハラハラドキドキできる! また旅の道中の映像が、キラキラ鮮やかな近未来というのも夢があって良かったです。
【ニノのさりげない演技力】
ニノが本作に出演すると聞いたとき、ファンタジー映画に出演するのはすごく珍しいと私は思いました。だって、『TANG タング』は “ザ・ファンタジー” な作品ですが、出演映画の近作は2018年『検察側の罪人』や2020年『浅田家!』と、それぞれミステリーと実話の映画化作品なんですもん。
ニノの演技力が発揮できる場面があるのかな……なんて思っていたのですが、超ありましたね〜。
相棒のタングはロボットなので撮影時はもちろん、タングは現場で話したり動いたりできません。そんな特殊撮影の現場で、動かないタングを相手にニノは芝居をしていたのです。
言葉のキャッチボールができない分、対・人間で演じるよりずいぶん難しいと思うのですが、変に肩に力も入っておらずサラリと演じるニノ、さすがです!
そして何より、タング目線で描かれる健の姿がニノファンにはたまらない映像なんですよ。タングの目に映るニノは、微笑んだり、泣いたり……と、いろんな表情を見せてくれます。その表情の全てが大スクリーンで、どアップ。そして目線アリで見られるという、これ以上の眼福はないでしょう。ファンは狂喜乱舞ですよ!
もちろん、健がダメダメな夫になった理由、妻の健への思いもしっかり描かれたストーリーにはしみじみできる場面もあり!
ポンコツのロボットとの出会いで、引きこもりのダメ夫が成長していく姿を描く映画『TANG タング』。ほっこり幸せな気持ちにさせてくれる超可愛い映画ですよ。ぜひぜひ劇場でご覧くださいませ!
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
Photo:©2015 DI ©2022映画「TANG」製作委員会
『TANG タング』(2022年8月11日公開)
監督:三木孝浩
出演:二宮和也
満島ひかり/市川実日子
小手伸也 奈緒 京本大我(SixTONES)
山内健司・濱家隆一(かまいたち) 野間口徹 利重剛 景井ひな/武田鉄矢
原作:「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(デボラ・インストール 作 松原葉子 訳 小学館文庫)
配給:ワーナー・ブラザース映画
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